事業者の伴走者として復興へ奔走する信金職員に密着 被災地支える能登の信用金庫
被災した地域の復興に欠かせない事業の再生。
能登町の信用金庫では被災した企業のサポートなどを専門とする部署を4月に発足させました。
働く人たちも被災する中、奮闘する姿を取材しました。
能登町宇出津に本店を置く、興能信用金庫。
興能信用金庫・沢田勇 人事部長:
「倉庫の方がかなりの被災に遭っておりますので、奥能登を中心に県内で20店舗展開していますが、地震の影響で穴水など3店舗がいまも建物が使えない状態です」
先月1日、新しい部署を発足させました。
それが「能登復興支援部」です。
被災者の生活再建や事業者の復興を専門とする部署で8人が配属されました。
能登復興支援部で地元・能登町を担当する、豊若裕治さん。
向かったのは、ブルーベリーの生産から加工・販売まで手掛ける事業者のもとです。
事業者:
「なんとなくお菓子があったらいいかなと思ったんですけどどうですか」
豊若さん:
「できたらブルーベリーをちょっと味わってはもらいたいので、これだとちょっとなかなか試食って難しいのでジャムとこれとか」
相談内容は、今月東京で行われる復興イベントに出店する際の、商品選びです。
奥能登ではこれまでの卸し先が被災し商品を売る場所に困っているという声も多くイベントへの出店を案内したり、時には商品開発に立ち会うこともあるといいます。
事業者:
「これとジャムかお酢でもいいし、あと今作ったバームクーヘンも良いと思う」
豊若さん:
「そうだよね。あのバームクーヘン美味しいよね。」
事業者:
「すぐ助けてくれます。困ってる状況になると電話かかってきます」「ほんと心強い」
ときには、複雑な補助金の申請もサポートします。
空港内に置かれた「能登事業者支援センター」。
ここは、県が開設したもので、中小企業診断士など様々な分野の専門家が常駐。
補助金の申請のサポートや事業再開の相談などを行っています。
この日は、豊若さんが相談を受けている整体院を営む夫婦と一緒に話を聞きにきました。
豊若さん:
「補助金を活用したいんですけど、それが対象になるかどうかとか相談させていただいて」
この整体院では、地震により敷地内に地割れや隆起が発生。
これまでと同じ場所で続けるのは難しい状態ですが、移転するためには土地から購入する必要があり、資金繰りに困っていました。
事業者:
「潰して整地して、その範囲内でもう一回建てるかっていったらかなり難しい」
豊若さん:
「今の理由で移転は大丈夫そうですか」
時には事業者に代わり質問するなど、この日は1時間近くにわたり、補助金の適用範囲について確認しました。
豊若さん:
「ボランティアにはなるかもしれないんですけれども」
「事業者さんの復旧とプラスアルファの復興をまず目指して、利益はそのあとかなというふうには思っています」
こうした復興専門の部署を立ち上げたのは、震災直後の聞き取り調査でみえた事業者の深刻な経営状態がきっかけでした。
興能信用金庫では、奥能登2市2町で取引のあった3778の事業者のうち、建物被害があったのは少なくとも6割に当たる2300。
さらに「営業できる状態にない」と答えたのは、1260以上に上りました。
厳しい現実の中少しでも、地元の力になりたい。
その思いを強くした背景には13年前の経験がありました。
豊若さん:
「全国の転勤をしてきたんですけど、最終的にはその会社で仙台にいて、東日本大震災をそこで経験して」
2011年、仙台の印刷会社で働いていたときに東日本大震災を経験。
仙台の街が復興へ向かう様子から今回の地震でも事業者の存在が復興のカギだと思うようになったといいます。
豊若さん:
「自分の育った町が元通りで、さらにプラスアルファで復興していくというのは目標にしていますので」
「それにはやっぱり地元の事業者さんの力というのは絶対に不可欠なので、それを支援していければなというふうには今思っています」
復興支援部が立ち上がった4月1日。
興能信用金庫には、これからの能登を背負っていく16人の新人が加わりました。
そして今月。
支店長:
「澤田さんと領家さんがきょうから研修で学んでいただくことになります」
新人たちは1か月の座学などを経て、店舗での研修に臨んでいます。
「どんなことを聞いてお話しているかという風なことを学んでもらいたいなと思っています」
店舗に開設された震災関連の特別相談窓口には毎日何人もの相談者が訪れていて、いずれは新人たちも地域の復興に向けた業務も担うことになります。
「お客様が困っていることに対して解決できるようにお手伝いできたらいいなと」
「お客様の意見になるべく答えられるような人になって対応していきたいなと思っています」
若い世代も加わった興能信用金庫。
復興まではまだ長い道のりとなりそうですがこれからも地域の事業者に寄り添い続けていきます。