「心のバリアフリー実現へ」4月施行 改正障害者差別解消法 教材で研修《長崎》
今年4月に施行される改正障害者差別解消法についてお伝えします。
改正法が施行されると、行政機関だけでなくすべての事業者に対し、障害者への「合理的配慮」が義務化されます。
下の図は内閣府が示した例ですが、目の見えない人から売り場を聞かれた際「入店を断る」といった不当に差別的な対応をすることはこれまでも禁止されてきました。
改正法の合理的な配慮では「売り場まで案内する」など、相手の求めに応じて負担が重すぎない範囲でこれまでより一歩進んだ対応が求められます。
その内容は障害の特性や場面で異なることから、柔軟な対応が必要です。
改正法の施行を前に、長与町の社会福祉法人が、身近にある“バリア”について考える教材を作成しました。
障害のある人もない人も助け合い、ともに生きる「心のバリアフリー」の実現へ。
教材を基に行われた研修から、私たちにできることを考えます。
(車いす利用者 山本順子さん)
「身の回りにある小さなバリアに気づく力を身につけよう。それがきょうの目標になります」
今月、JR長与駅で行われた研修会。
福祉の現場にかかわる職員や銀行員、高校生など、約20人が身近にあるバリアを見つけ、解消する方法を考えました。
講師は、車いすで生活する女性です。
(車いす利用者 山本順子さん)
「このイラストを見て、車いすの女性が買い物をするのにうまくできないんじゃないかと思うものを、どんどん教えていってください」
(車いす利用者 山本順子さん)
「階段があったら、少し難しいですよね」
(参加者)
「高い所の商品を手に取れないんじゃないか」
(参加者)
「車いすが通れる幅が店内にないんじゃないか」
(車いす利用者 山本順子さん)
「どこにあるか探す視点がすごく大事になる。スロープをつけたらいいのかな、誰か手伝ってくれる人がいたらいいのかもしれないねとか、いろんな解決方法が出てくる」
研修会を企画したのは「ながよ光彩会」。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「このタグは高齢者でもとりやすい。この配慮をしてあげたい」
長崎市の隣町 長与町で、福祉施設などを運営。
去年9月からJR九州の委託を受け、長与駅でカフェの運営や駅の清掃、利用者の介助などを行っています。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「私たちが作る教材を通して学んでもらったら、JRの職員でなくても、私たちの職員じゃなくても一般の人たち同士、学生同士で助け合える町になるんじゃないか」
◆無人でも誰もが利用しやすい駅に
長与駅は、1日約1600人が乗車する“町の玄関口”ですが、正午以降は無人駅に。
誰もが利用しやすい駅にしたいと、ながよ光彩会では研修会を企画しました。
障害の有無、性別、年齢に関わらず、すべての人が助け合える「心のバリアフリー」について考えてもらうのが目的です。
教材で理事長の貞松 徹さんが重視したのは・・・。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「車いすユーザー、聴覚障害、視覚障害、高齢者、それぞれの立場の人に監修に入ってもらった」
当事者の「視点」と「知見」です。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「この部分に関しては、各当事者から集めた声になる。実は病気ではなくて足の調子が悪いだけで、(車いすに)座っている人もいる。思い込みとして、ずっと車いすを使っている人の目線に立ちがちだが、実はそういうふうなことだけじゃない」
「ぶつかると進む方向がわからなくなる」「身振り手振りがあるとわかりやすい」といったさまざまな当事者の声が紹介されています。
今回、初めて開いた研修会。座学の後には・・・。
◆当事者と同じ体験をして自身で感じてみる
(参加者)
「(壁が)ここまでしかないから(車いすが)当たる」
駅の構内を回り、“バリア” を探していきます。
(福祉関係職員)
「お手洗いはわかると思う、ここに着いてすぐ。でも、エレベーターの看板を見つけるの難しい」
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「いい視点ですよね。私たちの目線から見るとまだ気づけるけど、車いすユーザーや子どもの視点の時に、視覚情報がだいぶ上にある」
さらに、駅に停車中の列車に乗り込んでの実地研修にも臨みました。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「この近くで福祉施設を営んでいる貞松といいます。何か私にお手伝いできることはありますか。というような身分を名乗ることから始めましょう」
目の見えづらい人には・・・。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「話しかける時は、必ず正面から話しかける」
車両に乗り込むときの介助。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)「ひじを持って上から。前方1メートル前に車両がある。ゆっくり前に進みましょう。ここから段差になる。のぼります」
そして、車内の座席に誘導です。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「こちらいすがあります」
手で触ってもらい、座席の位置を伝えます。
参加者たちは介助する側、される側、それぞれの立場を体験しながら学びました。
(車いす利用者)
「自分たち、車いすを使って生活している人たちの困りごとを、気づいてもらういい機会だと(思った)」
(福祉関係職員)
「どういう介助をしたら、その人の安心につながるかわかった」
(高校生)
「実際に体験してみて、知らない人だから声掛けがなかったら不安な気持ちになって怖かった。しっかり声を掛けて手伝いができるようにしたい」
“バリアを取り除く” ため、4月に施行される改正障害者差別解消法では、負担が重すぎない範囲で対応する義務が、すべての事業者に課せられます。
「対応できないと無下に断るのではなく、最適な対応を考えていくことが大切」と話す貞松さん。
教材をもとにした研修プログラムを広く実施していく方針です。
(ながよ光彩会 貞松 徹 理事長)
「一人一人ができることを考えていくことが、誰もが住みよい町づくり、会社づくりにつながると思う。日常的に行くスーパーや銀行だったり、少しの工夫、配慮で誰もが安心して使える場所になるのでは。いろいろな所でこのプログラムをしたい」