長崎くんち【五嶋町・龍踊】若き小学校教諭の挑戦 魂宿った龍踊で子どもたちに夢と憧れを《長崎》
長崎くんちで「青龍」と「白龍」の2体の龍踊を奉納する五嶋町。
新人龍衆として初めてのくんちに挑む、小学校教諭の男性を取材しました。
“子どもたちに元気と憧れを”
仲間たちと励んだ 稽古の日々に密着しました。
9月16日、本番まで残り3週間となったこの日。
本番で使う龍を清める魂入れが行われました。
(諏訪神社 宮田 文嗣 禰宜)
「ただいま この青龍、白龍には、魂が入りました」
2体の龍が彩る 五嶋町の『龍踊』。
龍を操る総勢62人の龍衆のうち、今年は34人が新人です。
新人の一人、山下諒将さん 25歳。
(龍衆 山下諒将さん)
「龍が輝いて見えました。一つずつ課題を乗り越えていきながら、新しいチャレンジもしながらきたが、ようやく最近つかめてきた。楽しいなと思えるようになった」
6月半ばまでは、龍の重さを再現した棒を使って、基礎的な動きや体力を身に付けます。
(龍衆 山下諒将さん)
「上げる時は、左足ですか?」
(指導)
「違う。上げて振り出すときはこう」
(龍衆 山下諒将さん)
「初めて棒振りに特化した練習で 自分の課題が見えてきた。あと4か月、やりたい番手がとれるように頑張りたい」
玉使いと10人の龍衆で息を合わせ、生きているかのように操る龍踊。
高く速く龍の顔を上げる龍頭や、くぐりの門の高さを合わせる七番衆、八番衆など、番手にはそれぞれに心得があります。
(龍衆 山下諒将さん)
「おぉ。これが本番の龍ですか。気持ち入りますね」
(龍衆 南部 光伸さん)
「番手が決まるまで、勝ち取れるように頑張って」
10年前、二番衆を務めた南部 光伸さん。
先頭の龍頭の動きを見ながら、後ろの番手とをつなぐ重要な役割を担う二番衆。
南部さんは、総監督も太鼓判を押す「プロフェッショナル」です。
(龍衆 山下諒将さん)
「すごいストイックに頑張っている。情熱が一番ある人だと思う。そこを目指していきたい」
南部さんに憧れ、五嶋町の龍衆に挑戦した山下さん。
目指すのはもちろん、同じ二番衆です。
(龍衆 南部 光伸さん)
「二番衆で自分の後継者として頑張らせたい」
普段は長崎市内の小学校で、3年生の担任を務める山下さん。
稽古の時とは違った柔らかい表情で優しく語り掛けます。
先生の挑戦を、子どもたちも応援しています。
(児童)
「かっこいい。イケメン、おもしろい」
「やまぴー先生 頑張ってね」
「ファイト一発!」
(龍衆 山下諒将さん)
「大人が頑張る姿を見るのは貴重な機会になると思う。あきらめない姿勢とかいろいろなことに挑戦する思いに伝播していきたい」
希望のポジションがあっても決まるまではさまざまな番手を経験。
監督陣は鋭いまなざしで適性を見極めます。
“南部さんと同じ 二番衆を勝ち取りたい”
稽古がない日も、筋力トレーニングや走り込みを行ってきました。
そして7月、いよいよ番手発表の日。龍衆に緊張感が漂います。
(馬場 龍監督)
「はっきり言って、正直悩みに悩んだ」
(馬場 龍監督)「二番衆、南部光伸」
南部さんは 二番衆の筆頭です。そして…
(馬場 龍監督)「六番衆、山下諒将」
山下さんは、六番衆。
南部さんとともに二番衆になることはかないませんでした。
「もらった番手を誇りに最後まで走りぬいていきましょう」
番手の発表後、初めての稽古。
六番衆は、龍体の真ん中にあたるため、円になった形を保つときに “要” となります。
外に出すぎても 内に入りすぎても 円が崩れてしまうため、繊細な動きが求められます。
(筆頭 加藤 博之さん)
「六番衆はストッパーの役割。俺たちまでいってしまったら、七番が引っ張られてしまう」
(六番衆 山下諒将さん)
「今まだ、100%任されている番手を楽しめていない。悔しい気持ちもあるけれど、任された番手で自分がなくてはならない存在になりたい」
通常の稽古に加え、駐車場を借りて秘密の特訓も。
悔しさが決意へと変わりました。
番手発表から3か月。
(六番衆 中村 尊さん)
「六番衆がサポートで高くした方がいいのか」
同じ六番衆の仲間とともに、理想を追い求めてきました。
(六番衆 山下諒将さん)
「関係性は、どの番手よりもいいんじゃないかって思ってます」
山下さんをずっと気にかけていたのは、二番衆の南部さん。
手ぬぐいをリメークして作った、お手製のバッグ、山下さんへのプレゼントだそうです。
(龍衆 南部 光伸さん)
「ケガなく無事、乗り越えてほしい。次の7年後につながるような “踊” をしてほしい」
龍と、自分と向き合い、仲間とともに乗り越えてきた 半年あまり。
くんち開幕までは、あとわずかです。
(六番衆 山下諒将さん)
「龍がきれいになるのは 五番とか六番のおかげだと、日々自信を持ってやっている」
より高く、より速く。
勢いのある龍が、辰年の大舞台に臨みます。
(六番衆 山下諒将さん)
「いろいろな人が楽しみにしているので、感動を届けたい」