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一糸乱れぬ “櫂さばき”「伝統の福田ペーロン」意地と誇りをかけ さらなる “高み” へ《長崎》

2024年7月21日 7:00
一糸乱れぬ “櫂さばき”「伝統の福田ペーロン」意地と誇りをかけ さらなる “高み” へ《長崎》

長崎の夏の風物詩「ペーロン」。

長崎港で開催される大会に向け、各チームの練習も熱を帯びています。

意地と誇りをかけ、頂点を目指す “福田ペーロン” のチームにカメラが密着しました。

櫂を持つ手を深く、そして速く。

心を一つに、前へ前へ。

江戸時代初期、中国から長崎に伝わったペーロン。

海の神の怒りを鎮めようと 漁師たちが競漕したのがはじまりとされています。

▼地域の絆を深めてきた「伝統のペーロン」

5月。長崎ペーロン選手権大会まであと70日となったこの日。船倉庫の前に続々と集まるのは、長崎市の福田東部チーム。18歳から41歳の35人のメンバーです。

大会に向け、3月から練習を始めました。

これまでの大会最高順位は4位。今年はさらなる高みを目指します。

(中村敬博 監督)
「気を抜かず、頑張りましょう。まず走ります」

基礎となる「体力づくり」。

太いロープを波打たせて行うトレーニングは、若手メンバーにもこたえるようです。

(中村敬博 監督)
「動きを大きく、大きく」

(メンバー)
「まだ?」

「ハァハァ」

▼練習時から求められるのはチームワーク

船に乗り込んでも、体力づくりは続きます。

大きな櫂を手に漕いでも漕いでも、船は進みません。

漕ぎ手に負荷をかけるため、ロープでつながれているのです。

伝統の練習法「岩おこし」です。

(中村敬博 監督)
「今はまだまだですね。とりあえず、体力と櫂を合わせることをメーンで頑張っています」

ペーロンの乗り手は30人。漕ぎ手は左右に13人ずつで、先頭を漕ぐ「一番櫂」は、ペーロンの花形です。

(中村敬博 監督)
「潮切りというぐらいの漕ぎをしてもらいたい。前の重い潮を漕いで、後ろに軽くするような漕ぎ」

メンバーの中には、屈強な男たちに引けをとらない迫力を見せる 女性の姿も。今回、3人が参加しています。

鷲池芹奈さん「根性で漕いでいます。練習はすごくきついですけど、乗りたくなる」

ペーロンの機動力となるのは、漕ぎ手だけではありません。

「ドラ」と「太鼓」がリズムをとります。

「あか汲み」は、入ってきた海水をくみ出し、メンバーを鼓舞します。

船を真っすぐに保ち、ターンを最短距離で回すのが「舵取り」です。

さらに、並走する船から動きなどを撮影し、メンバーをサポートする人も。この映像を見ながら、監督が個別に指示します。

(中村敬博 監督)
「漕ぎが浅い。もうちょっと深く深く。頭が動きすぎだから、。体重移動しないようにもうちょっと」

▼太鼓とドラの音にのせ 受け継がれる情熱

1571年。長崎開港前の5年間は、“福田浦”(当時) がポルトガルとの唯一の貿易港でした。

郷土史には、乗組員と漁師が小舟で漕ぎ争ったのが「福田ペーロン」の始まりと記されています。

五穀豊穣や大漁を願う神事として、現在まで大切に受け継がれてきました。

この海で「人」そして「地域の絆」を深めてきたのです。

中村敬博監督も、幼いころから太鼓とドラの音に囲まれて育ってきた1人。

15歳から情熱を注いだペーロンは、“きつい中にこそ得られるものがある” ということを教えてくれました。

(中村敬博 監督)
「こうき、頑張れ」

体力の限界まで、必死に漕ぎ続けるメンバー。

(メンバー)
「あー!」

(漕ぎ手 深江悠太さん)
「きついですね。頑張るしかない」

(漕ぎ手 嶋田遥臣さん)
「体力がないので、体力をつけられるよう頑張っていきたい」

(漕ぎ手 吉永海凪さん)
「打倒!三重、野母崎で、頑張ります」

▼大会は7月28日 “誇り” を胸に挑む

大会まで1か月を切ったこの日。

(福田東部チーム)
「きょうはよろしくお願いします」

去年の大会、職域の部で3位に入賞したチームとの「競り」が行われました。

(キャプテン)
「盛り上がって行こうでー」

この日の一番櫂は、ペーロン歴15年の片山省吾さん。そして、男も女も関係ないと意気込む 牧島澪さんが担います。牧島さんも女性ながらペーロン歴は12年のベテランです。

タオルを振り下ろすのがスタートの合図。

本番と同じ1150メートルで競います。

力強い漕ぎでチームを引っ張る一番櫂の2人。荒波に立ち向かい、相手を徐々に突き放していきます。

舵取りの最大の見せ場、ターンブイが目前に!

しかし…、大量の海水が入り、船はストップ。

悪天候のため、この日の競りは中止となりましたが、一番櫂を務めた2人は手応えを感じたようです。

(キャプテン 片山省吾さん)
「きょう競ってみて、勢いがある感じ。これを続けて頑張りたい」

(牧島澪さん)
「女というのもあるんですけど、(力を)みせてやろうと思いました」

競りが終わっても続いた練習。

一糸乱れぬ櫂さばきを目指し、何度も、何度も。

ゴールの先にあるのは、勝利。そして、皆で分かち合う “歓喜” だと信じて。

地元の意地と誇りをかけて戦います。

「長崎ペーロン選手権大会」は、今月28日に開催。

一般の部が16チーム。職域の部から6チームが出場する予定です。