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発達障害のある子どもや家族のサポートに取り組む団体『TOMOはうす』代表を務める女性が伝えたい思いとは【高知】

2024年10月3日 18:53
発達障害のある子どもや家族のサポートに取り組む団体『TOMOはうす』代表を務める女性が伝えたい思いとは【高知】
発達障害のある子どもやその家族、また教員などの支援者のサポートに取り組む団体が高知県内にあります。
代表を務める女性には保護者や支援者たちに伝えたいある思いがあります。


高知市に住む、杉本向陽くん(7歳)です。保育園に通っていた頃、ASD=自閉スペクトラム症と診断されました。
お気に入りの、海の生き物たちのブロックのおもちゃで水族館を作ってくれました。

向陽くんは言葉での説明を理解することや気持ちを言葉にして伝えることが苦手です。
発達障害の一つ、ASDの人は対人関係を築くことが苦手、強いこだわりがあるなどの特性があり、国内では100人に1人いるといわれています。

母親の美穂さん。向陽くんの行動がASDの特性によるものなのか、またどういった対処が必要なのか、悩む日々でした。

杉本美穂さん
「自閉の症状なのか、子どもの一般的な年齢のあれなのか全然分からず、1人っ子やし、でも呼んでも学校のこと聞いても(何も言ってくれない)どうしたらいいか分からんなと。それってほかの親御さんたちに聞くこともしづらいし」

こうした悩みを抱える家族や、教員などの支援者のサポートに取り組む団体が県内にあります。

いの町の久武夕希子さん(67)。元・小学校教員で、支援団体「TOMO(とも)はうす」の代表を務めています。

TOMOはうすが家族や支援者をサポートするため行っているのが「アーリーバードプラスプログラム」です。
イギリス自閉症協会が開発した3か月間の講習で、参加者はASDの子どもの特性を理解しよりよいコミュニケーションの取り方を身につけていきます。

プログラムは1回2時間半の講座があわせて8回と家庭訪問が2回で、約5年間で91人が受講しました。

久武夕希子さん
「みなさん最初のうちはとにかくうちの子を何とかしようと、あのお子さんをどうやってサポートするか。そのお子さんをどう変えていくかということに主眼を置かれているが、でも実は自分たちの関わり方を変える、環境を変えてあげることでそのお子さんの持っているいいところが出てくる、伸びてくる。そんなことを伝えたいですし、それを通して皆さん子育てが楽になったり、お子さんのことがもっと好きになったり、そういうふうにもなっていくと思うのでそういうことを学んでいただきたい、肌身で感じていただきたいと思っている」

久武さんがASDと向き合うようになったのは、高知大学教育学部附属養護学校に勤務していた2006年頃から。
自閉症学級を担当しましたが当初、ASDの知識はほとんどありませんでした。
手探りの日々のなかで発達障害の子どもたちやその家族、そして自分と同じように悩む教員たちのために何か手助けをしたい。その思いが次第に強くなりました。

久武夕希子さん
「(ASDの子は)みんな真面目、律儀。一生懸命。そういうところが大好き。だけど知識のない私からしたら、なんでここで固まる?とか何で急にパニックになった?とか全く理解できず、それで保護者も苦労されていた。まだ当時はだいぶ前なので、しつけが悪いんじゃないかとか、そんなことを思われていたような時でもあり、ちょっとでもお役にたちたい、そんなことを思いました」

そこで久武さんが仲間とともに2012年に立ち上げたのが「TOMOはうす」です。

メンバーは教員や言語聴覚士でともにASDなど発達障害の支援に対して悩みを抱えていました。

久武さんたちは2018年、家族や支援者をサポートする「アーリーバードプラスプログラム」のライセンスを取るためイギリスへ向かいました。
慣れない英語での講義に苦しみながらも必死に学び、日本でプログラムを実施できる2つ目の団体になりました。
久武さんが心がけていること。それは参加者と「ともに学ぶ」ということです。

久武夕希子さん
「向こうの方に、教えてあげましょうみたいな、それをやっちゃいけませんと言われた。それが今まで限られた時間でヒントをお伝えしようと思ってやってきたので4人とも全員そういうことをしてたなとどきっとして、というところから研修が始まった。実際にやってみたら、保護者がどんどん自分にあった支援を工夫されていくのをみたら、ともに学び彼らの気づきに教えてもらう本当の同等の仲間だな一応知識は伝えるが、こっちが学ばされていると毎回思う」

久武さんが開く講座では毎回、参加者が日々の気づきを共有しています。

参加の保護者
「信号のルールを覚えてもらいたいな」
「飛び出さないようにと最初いっていて、信号機が交通公園ありますので、赤信号で渡ったらだめよということをずっと言っていたのですが、なかなか守れなかった。ちょっと肯定的意見に変えて、青になったら渡ろうねといったら青になるまでずっと待つようになりましたので、言い方次第でだいぶ本人違うのかなと感じたところです」
「こういうの聞くとすごい勉強になりますよね」

TOMOはうすと出会いプログラムに参加したことで向陽くんとの向き合い方が変わりました。
例えば、その日にやることを絵に描いて示す「視覚支援」を取り入れるようになり、向陽くんは自分から進んで宿題をやるようになりました。
親子が生きやすくなるためのヒントをたくさん得たという美穂さん。誰にも相談できなかった悩みを気軽に話せる場ができました。

杉本美穂さん
「家の中でこの家族だけでこの子のことを育てて自閉症に向き合っていこうというのは限界があって親も限界があって、うちの子こんなことがあるんですよってアーリーバードで言い合えた時間は、すごい気持ち的にも頑張っていこうという気持ちのつながりみたいなのが出来たよかった」

TOMOハウスの活動はさらに広がりを見せています。受講者で結成した「親・支援者の会」の有志で去年と今年いにあわせたくふう展」を開催しさらに特性への理解が広がりました。

子どもたちの家族や支援者に久武さんが伝えたいことがあります。

久武夕希子さん
「悩んでいるときって、うちだけなんでこんなことにって、私の場合もそうだったが絶対思う。でもほんとに1人じゃないんです。仲間がいるし学べば絶対解決策は見つかる。周りは敵だらけみたいに思うかもしれないけど、ふっと上を見たら真上に青空が広がっていたということは本当にある。学んだらそういう青空は見つけることができるのでぜひ一緒に学びたい。そのお手伝いなら出来るんじゃないかな」

ASDなどの発達障害の子どもたちや家族支援者がひとりで悩みを抱え込まず、生き生きと暮らせるよう寄り添って久武さんはともに前に進みます。