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終わらない米の価格高騰『備蓄米の放出』や『適正価格』の背景・課題とは【高知】

2025年3月7日 18:49
終わらない米の価格高騰『備蓄米の放出』や『適正価格』の背景・課題とは【高知】
去年から続くの品薄や価格高騰を改善しようと、国は3月中旬から「備蓄米」の放出を行います。
この米問題、販売店や生産者を取材すると根本的な課題が浮かび上がってきました。

毎日の食卓に欠かせない米。去年の夏から価格の高止まりが続いています。

■井上琢己キャスター
「値上りが始まる前は、5キロ2000円くらいの値段でした。現在は倍の価格です」

■消費者2人
「高いなと思いますね。うかつに手が出せないというか」
「びっくりしますよね。ごはんが無いとお腹がもちません」

全国のスーパーでの米の5キロあたりの販売価格はじわじわと上がり続け、去年の同じ時期と比べると約2倍近い4000円になっています。

高知県内外の約40種類のコメを取り扱っている、高知県香南市の販売店「高橋米穀店」。
一昨年からコメの主要産地・新潟県や東北地方で高温障害による不作が続き、米が品薄となっていました。

去年秋には新米が出始めたものの、それまでの品薄の影響で新米の取引が例年より早くなり、いまも品薄が続き現在の在庫は例年の4割ほどだといいます。

■高橋米穀店 秋山兼一さん
「米を先に先に出している状況なので、今から増えるということはないので、どうなるかというのは心配」

2月、国はコメの流通を増やし価格高騰を抑えるため、3月中旬にも「備蓄米」を放出すると発表しました。

■江藤拓 農林水産大臣
「販売数量は21万トンとします。これはいわゆる流通が滞っている、スタックしているこの状況をなんとしても改善したいという強い決意の数字だと受け止めてほしい」

備蓄米は3月10日から12日にかけてJAなど年間の玄米仕入量が5000トン以上の業者を対象に入札が行われ、合わせて21万トンが放出されます。

量販店などの店頭では3月下旬から4月にかけて出回る見通しですが…

■高橋米穀店 秋山さん
「高知ではそれ(備蓄米)が回ってくるのかというのはちょっとまだ分からないですね。実際に入札の資格要件があり、年間の取り扱い高っていうのが自分たちでも取り扱わないくらいの規模じゃないと入札に参加できない。都会の大手の業者しか入札できないような感じかなと見受けられるので」

県内で年間5000トンを超える米を取り扱うJA高知県で、今の問題の背景を聞きました。
価格の高止まりには、意外な要因もあるようです。

■JA高知県 濵田さん
「コロナ明けで飲食業の需要が増えたのと、インバウンド需要が増加して、令和6年も思ったより生産量も伸びなくて今に至っているという、そういう状況」

まもなく国が行う「備蓄米」の放出で、県内にはどのような影響があるのでしょうか。

■濵田さん
「いま現在、都心部の方が高知県より米の値段が高くなっていて、まず都心部の米の価格が高知県並みに落ちてくるのではないだろうかと思っている。その後、高知県を含む全国的に米の価格が落ち着いて来るんじゃないかと予想している」

一方で、濱田さんは「備蓄米」放出後も生産者の収入を確保できる価格の維持が重要だと強調します。

■濵田さん
「コロナ禍の令和2年、3年、4 年あたりは米の価格も安くて、生産者を辞めた人もいた。なんとか生産を続けていくためには、ある程度の米の価格は必要になってくる」

コロナ禍での下落と品薄による高騰。このはざまで翻ろうされているのが、農業を営む一人ひとりの生産者です。

南国市の生産者・武市竜人さんは、来週から始まる田植えに備えて今、苗を育てています。
武市さんは約32ヘクタールの田んぼで極早生品種の「南国そだち」のほか「コシヒカリ」などを育てています。

去年の収穫量は約140トン、例年に比べて約1割減少しました。

■生産者 武市さん
「ここ2、3年が特に、高温、異常な気象で。」

全国的な不作で進んだ米の価格高騰。生産者として武市さんには複雑な思いがありました。

■武市さん
「農家からすると米の値段が上がると収入が増えるので喜ばしいことだが、ちょっと異常なくらい上がっているなという感覚はしている。やっぱり上がりすぎて米を食べなくなってしまうと、結局米離れになってしまう。そうすると、米が売れなくなる。売れなくなると収入がまた下がる 」

世界情勢の影響などで燃料や肥料なども値上がりするなか、武市さんが願うのは、米の適正価格です。

■武市さん
「うちもぎりぎりでやっていたところもある。今の値段でようやくプラスという人(もいる)。今まではマイナスで経営している人が多かったと思う。生産者と消費者のちょうど良いような値段というのがあれば良いが」

そして、米の品薄を機に行われる「備蓄米」の放出についても懐疑的な考えを持っていました。

■武市さん
「一時的には値段の変動があったりとか、スーパーの品薄感がなくなるとは思うが、単純に不足をなくすにはやっぱり作付けを増やしていくしかないと思う。収量が下がっている分、作付けを増やさないと、なかなか不足分まで生産していくのは難しいと思う」

日本人の主食(米)の品薄と価格の高止まり問題は、「備蓄米」の放出で一時的には改善する見込みですが、生産者など米に関わる人たちが投げかける「米の適正価格」という根本的な課題は横たわったままです。

需要と供給のバランス、そして気候変動などさまざまな要因によって米の価格は変動しますが、やはり生産者の生活が成り立つような適正価格の設定についても今一歩、議論が進むことが必要だと感じました。
最終更新日:2025年3月7日 18:49
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