【大井川鉄道】新たに就任した社長はローカル鉄道の“再生請負人”とも呼ばれる人物…その手腕は?(静岡)
SLやトーマス号で人気の静岡・「大井川鉄道」に新たな社長が就任しました。新社長はローカル鉄道の“再生請負人”とも呼ばれる人物その手腕は?
2024年も、SLやトーマス号を目当てに多くの観光客が訪れる「大井川鉄道」。2022年9月、台風15号に伴う大雨被害で一時全線が運休。被災から、もうすぐ2年が経ちますが大井川本線の半分にあたる約20キロの区間で運休が続いています。
(沿線の飲食店)
「相当経済効果があったのでだいぶ地元の商店・飲食店・旅館にも影響がある」
”地域の足”としての役割だけでなく、沿線の事業者にも多大な影響を与えている大井川鉄道の運休。多くの人たちが全線再開を待ち望んでいますが、復旧に必要な費用は約22億円に上ります。大井川鉄道は、コロナ禍以降、赤字経営が続き自力での復旧は不可能な中、「支援の要望」を受け協議を続けてきた県が、2024年3月に今後の方針を示しました。
(県の担当者)
「大井川鉄道の観光資源としての重要性地元住民からの熱い期待、そして大井川鉄道の運行継続への強い意気込みを踏まえて、早期の運行再開を目指した検討を継続する」
県は「観光資源としての影響力の大きさ」などを理由に、”全線復旧を前提に”具体的な議論を行うことを決定。これまで先が見えなかった”全線再開”に向けて風向きが変わるなか、この夏、大井川鉄道はさらなる転機を迎えました。
(大井川鉄道 鳥塚 亮 社長)
「地域鉄道としてはかなり厳しい状態に置かれているという現状だと私は認識しております」
これまで社長を務めてきた鈴木肇さんに代わり、鳥塚亮さんが新社長に就任。東京都出身の鳥塚さんは”ローカル鉄道再生請負人”と呼ばれ、これまで地方鉄道会社の再建を行ってきました。幼少期から鉄道ファンだった鳥塚さん。航空会社などを経て、2009年に経営の悪化で廃線の危機にあった千葉県の「いすみ鉄道」の社長に就任。前例にとらわれないユニークなアイディアを次々と打ち出し、黒字に転換させました。取り組みの一つとして導入したのが、線路の‟枕木オーナー制度”。
(いずみ鉄道 鳥塚 亮 社長・2012年当時)
「いま200本以上枕木オーナーの 方いらっしゃるので、運賃収入以外のかなり大きな収入になってます」
年間5250円払って枕木のオーナーになるとプレートに名前やメッセージを残すことができ、好評を博しました。その後、2019年に新潟県の「えちごトキめき鉄道」の社長に就任。
(えちごトキめき鉄道 鳥塚 亮 社長・2021年当時)
「鉄道に対して思い出を持ってもらうこと。いろんな方々に鉄道に親しんでもらって、特に若い人たちですね」
”昭和の急行列車”をコンセプトにした懐かしさを感じさせる観光列車の導入や…、SLを活かした”鉄道のテーマパーク”を作るなど新たな挑戦で話題を集め、地域経済の回復に貢献しました。危機的な状況だったローカル鉄道を再建してきた”新たなかじ取り役”の手腕に期待が集まりますが、6月28日の就任会見では….。
(大井川鉄道 鳥塚 亮 社長)
「私は鉄道っていうのは楽しいものだと思っている。楽しい鉄道を作ることによって、子どもたちの明るい未来に貢献できれば地域の未来にも繋がるし、この国の未来にも繋がる」
”楽しい鉄道を作る”と声を弾ませた鳥塚社長。これまでの経験を例に出し大井川鉄道の再生に自信をにじませました。
(大井川鉄道 鳥塚 亮 社長)
「千葉県の房総半島、過疎地です。新潟県の『えちごトキめき鉄道』は、2m雪が降るんですよ。そういう所で出来たんだから、天下の東海道でできないことはないんじゃないかなと思っております」「ただ、同じやり方が通じるとは思っていませんので、やっぱり地域に溶け込んで、色んなことを探っていけたらいいなという風には思ってます」「オンリーワンと言えばトーマス走っていて、ナンバーワンと言えば立地条件だと思います」「天下の東海道で新幹線が通っていて、飛行場もあって食べ物がおいしくて富士山があってお茶がある」「静岡県はポテンシャルというかコンテンツがまだ埋もれている」
静岡の魅力を活かして集客に繋げたいと話した鳥塚社長。新社長の就任に地域からも期待の声が聞かれました。島田市の染谷市長は…。
(島田市 染谷 絹代 市長)
「鳥塚新社長はマネジメント能力企画力がある。まさにいま大井川鉄道を再建していくにあたってふさわしい方を招へいされた」「期待と同時にひとつの危機感の表れでもある、だから鳥塚さんにお願いした」「いまの大井川鉄道に大勢の方に乗ってもらえるように鳥塚さんの手腕を心から期待している」
川根本町の食堂「四季の里」。SL撮影スポットの近くということもあり、以前は多くの鉄道ファンでにぎわっていましたが、不通区間となったことで売り上げは半分ほどに。経営を続けるため、訪問販売も行っているといいます。
(四季の里 嶋 育子 代表)
「(被災前は)すごくにぎやかでよかった」「写真家の人たちがグループで来てそばを食べて遠くから来る方が多かった」「その人たちがほとんど来なくなった」「ここを大鉄が走るように早くなってほしい。観光客がいっぱい入ってくれるようにしてほしい」
全線再開に向けて”再出発”した大井川鉄道。新社長がどのような経営手腕を見せるのか、今後の動きに注目です。
(スタジオ解説)
改めて大井川鉄道の現状についてみていきます。
2022年の大雨被害で一時は全線で不通となっていた大井川鉄道ですが、2022年12月には金谷~家山間が復旧し、また、2023年10月には家山~川根温泉笹間渡間の2.9キロが復旧しました。しかし、いまだ本線の半分ほどが不通のままになっています。
復旧には約22億円かかると言われていますが、コロナ禍以降、赤字経営が続いていたこともあり、自力で費用を捻出することはできないのが現状となっています。
復旧に向けて具体的な見通しがみえないなかで、新社長に就任した鳥塚亮さんですが、その手腕に期待が集まるのには理由があります。これは鳥塚さんの経歴です。2009年に千葉県の「いすみ鉄道」の社長に就任、枕木オーナー制度や地域の特性を生かした観光列車など斬新なアイデアを打ち出し、当時廃線の危機にあった会社を黒字にしました。2019年には新潟県の「えちごトキめき鉄道」の社長に就任し、鉄道のテーマパークを作るなど、地域経済の回復に貢献してきたといいうことで、我々もわくわくしてくるのですが、こうした流れが”ローカル鉄道再生請負人”と呼ばれるゆえんとなっています。