【見守り犬・卒業】校門で児童に愛情注ぎ足掛け12年の老犬…子どもらとの“約束”果たす(静岡・牧之原市)
3月3日、朝の登校時間、静岡・牧之原市の小学校にカートに乗せられ現れた一匹の犬。名前は「ジェード」。黄色いスカーフがトレードマークのラブラドール・レトリバーで、もうすぐ15歳になる「おばあちゃん犬」です。
そんな「ジェード」が、小学校の校門で何をしているのかというと…。
(校長】
「おはようございます」
「ジェード」は、飼い主の永田菊寿さんと一緒に、子どもたちの安全な登校を見守る「見守り犬」なのです。
2013年から、毎週月曜日に校門に立ち続けて4月で丸12年になります。「ジェード」が見守り活動を始めたきっかけは、当時の校長からの依頼だったといいます。
(ジェードの飼い主 永田 菊寿さん・71歳)
「『ジェード』はCC検定…で盲導犬になれなかった子なんですけ」「この子の性格見てると、何か社会の役に立てるんじゃないかなと思って」「たまたま小学校の方から、見守り活動をするんだけど、やっていただけませんかって依頼があって、それがきっかけで始めたんです」
盲導犬を目指して訓練を受けたことで、何事にも動じず雨の日も風の日も堂々とした姿で、高齢によりカートに乗せられるようになった後も、子どもたちの登校を見守り続けてきました。
そんな「ジェード」ですが、この春卒業した子どもたちと6年前に“ある約束”をしていました。
校庭の桜が綺麗に咲き誇った先週・3月18日・火曜日。卒業式を迎えた子どもたちの華やかに着飾った姿がありました。入学した6年前は「ジェード」の体に隠れるほど小さかった体も、大きく立派に成長しました。晴れやかな表情で花道を歩く卒業生の先にはジェードと永田さんの姿が。実は、この日は、子どもたちの卒業だけでなく、「ジェード」と永田さんも長年続けた見守り活動からの卒業の日だったのです。
さかのぼること6年前の春。「ジェード」は、入学したばかりの子どもたちと“ある約束”を交わしていました。それは…。“卒業するまで見守って私たちの卒業式にも来てね”。しかし、当時「ジェード」は既に9歳。人間でいうと、約70歳のおばあちゃんで、永田さんは6年後の卒業式まで元気でいられるか不安だったといいます。
(永田 菊寿さん)
「ちょうどお約束したのが、2019年」「『私たちの卒業式にも来てね』というお話があったのですけどれも、大型犬はね、10歳が寿命なんだよね、お約束守れるかわからないよ…というお話をしたんです」
それでも、子どもたちとの約束を目標に、暑い夏も、寒い冬も、毎週欠かさずやってきて、少しずつ成長する子どもたちの姿を見守り続けました。数年前からはカートに乗ってやってくるようになりましたが、見事に、約束した6年間の見守りを勤め上げ、子どもたちの卒業式に来るという約束も果たすことができたのです。
「ジェード」からの愛情をたっぷりと受けて育った卒業生たちは、卒業証書に「ジェード」から足形を押してもらい別れを惜しみます。そして…。
(卒業生)
「せーの、ウイスキー」「よかったね、おめでとう」
6年前に「ジェード」と約束を交わした子どもたちは、あの日と同じように写真を撮ります。
(約束を交わした児童)
Q.約束かなってどう?
「うれしいです」「ちゃんとかなうって思ってなかったから。うれしいです」
6年間、とても大切な存在だった「ジェード」との別れを惜しみ、感謝の気持ちを込めて、頭を何度も何度もなでます。
(永田 菊寿さん)
「よかったでしたか?」
(児童)
「うん、よかった」
(永田 菊寿さん)
「『ジェー』、頑張ったんだからな」「約束したときが『ジェーちゃん』9歳だったから、それから6年、『ジェード』頑張ったね」
目に涙を浮かべる子どもたちに、永田さんは、こんな言葉を贈りました。
(永田 菊寿さん)
「横には『ジェーちゃん』いるからね、きっと。これからもずっとね」
卒業式から1週間が経ったこの日。離任式が行われた体育館には、学校を離れる先生の横に並ぶ「ジェード」たちの姿がありました。この日が「ジェード」の見守り活動からの卒業式です。
(永田 菊寿さん)
「12年間、『ジェード』を愛してくれて、ありがとうございました」「『ジェーちゃん』は算数を教えるわけでもないし、漢字を教えるわけでもないんだけど、もっと大事なことを教えてくれました。それはね、人を優しくすることかと思います」
(児童)
「私がだいすきな『ジェード』、毎週月曜日の朝に来てくれてありがとう」「みんな『ジェード』のことは、いつまでもいつまでも大好きだよ。毎日毎日頑張った分、体を休ませてね、ず~っと元気でいてね」
12年間、見守り活動を通して、子どもたちにたくさんの愛情を届けてきた「ジェード」。今後は、体調を見ながら、可能な範囲で子どもたちを見守り続けるということです。