アユ釣りシーズンの「狩野川」で深刻な「カワウ」による被害…全国的問題の実態と対策の現状・展望は(静岡)
静岡・東部を流れる狩野川ではいま、アユ釣りのシーズンを迎えていますが、アユを食べてしまう“大きな鳥”「カワウ」に頭を悩ませています。カワウは全国的にも被害をもたらしていて、行政も対策に乗り出しています。
(坂井 太一 記者)
「1、2、3、4、5、6?、7?8?」「たくさんカワウがいますね」
黒い羽根に覆われ体長80センチにもなる大型の鳥、「カワウ」です!カワウが出没しているのは県東部を流れる狩野川…。上流部は“アユ釣りの聖地”として知られていますが…。
(釣り人)
「カワウはよく見ますよ、いますよ~!」「急に増えた感じがする」
(釣り人)
「アユが減っちゃっている。食べられちゃって毎日何十匹も食べますから」「増えているんじゃないですかね」
釣り人などによると、狩野川でカワウを目撃するようになったのは15年から20年ほど前、その数は年々増えてきているといいます。カワウはペリカンの仲間で、水に潜り魚を捕らえ、1羽で1日10匹ほどの魚を食べると言われています。
以前からカワウによるアユの被害に悩む栃木県では、年間の被害額、約1億7000万円にもなります。
ここは釣り人が訪れる店。
ロケット花火で追い払っているといいますが…。
(飯田おとり店 松下 充弘さん)
「カワウは魚がいる所に下りる」「この先のカーブの辺りは、30羽から40羽下りてくるから」「一匹でも減らしてほしい、組合では追いつかない県や国でテコ入れをしてもらわないと」
狩野川沿いのある、民宿も…。
(尾崎荘 山下 喜博さん)
「ウグイとか雑魚(小さい魚)がみんないなくなりましたよ。それだけカワウが食い尽くした」「あんなものはいてもらいたくないね」
アユ釣りスポットではない下流にも…。
(坂井 太一 記者)
「目の前にたくさんのカワウがいます。近くに寄っても逃げませんね」「カワウは、お腹いっぱい食べると、石の上でじっとして消化を待つ 習性があるということです」
これは2023年の冬、浜名湖で大群のカワウを捉えた映像。黒い点全てがカワウ…。カワウは東部だけでなく西部、中部でも確認されています。県によると2023年3月の調査では、全体の数は約8300羽、2015年と比べると倍増しているのです。
(野鳥に詳しい水産技術研究所 坪井 潤一さん)
「北海道から沖縄まで日本全国にいる」「他の鳥と比べても繁殖力は強い」「温暖化によって幼鳥が年を越せてどんどん増えていく、増えやすいような状況」
琵琶湖を中心にカワウの被害に悩まされる滋賀県では、2020年には7200羽のカワウに年間漁獲量の7割にもおよぶ543トンもの魚が食べられてしまったと推計されています。
千葉市でもカワウの大群が…。
10キロ以上離れた市川市でも…。
(日本テレビ 渡辺 未空 記者)
「鳥の毛のようなものがたくさん落ちてます」「設置してある柵もフンでしょうか白くなってしまっています」
約1万羽いるというカワウ。フンはドブのような臭いだといい…近くの会社では、「洗車するのも大変で車を保有するのをやめた」と話します。
全国的に問題となっているカワウの被害…。国もだまって見ているわけではありません。これはことし水産庁が発表した「カワウ対策」。対策を進めるにあたり体制づくりの重要性や…行動範囲を把握するためのGPSの取り付け方法、また、ドローンでドライアイスを巣に投入し卵を凍らす対策などが示されています。
6月、狩野川漁協。漁協や県、伊豆市などが集まり、カワウのすぐそばで対策会議が開かれてました。
(狩野川漁業協同組合 井川 弘二郎 組合長)
「僕らは放流をして、カワウが来るのは何も変わっていない」「とにかく調査は分かるが減ってくれないと…」
現在、県などが考えている対策。それはカワウを捕獲しGPSを装着、そのデータから行動範囲や集団繁殖地「コロニー」を特定し、そして、ドローンでドライアイスを巣まで運び、それを投入、卵を凍らせて繁殖を抑える作戦です。しかし、捕獲をするための許可の申請や、いつどこで捕獲をするか、まだ序盤の段階です。
(県水産資源課 日吉 菜々子さん)
「4か所の地点で捕獲できるように申請を出す予定です」「漁協の運営のためにも被害を与えるカワウを減らしていこうと思っている」
(狩野川漁業協同組合 井川 弘二郎 組合長)
「狩野川に来るカワウをゼロにしたい。日本全国、河川は困ってるので結局、そこをやらないと狩野川もゼロにならない」「結局飛んでくるので」「狩野川に来るカワウをゼロに出来るような道筋を、しっかりスピード感を持って作ってもらいたい」
被害が続く中、早めの対策が求められています。