【奇跡の救助】下田市の海岸で不明となった女性が2日後80キロ離れた千葉沖で救助された海難事故続報(静岡)
この映像は、7月10日、千葉県の沖合を飛ぶヘリコプターから撮影された映像。手でサインを送り合うのは、海上保安庁の特殊救難隊です。ロープを使って海上に浮かぶ船の真上につけると隊員が降下していきました。
船で待っていたのは青いタオルに包まれた女性。女性は、7月8日の夜、海で泳いでいたところ沖に流され海上保安部などが捜索していました。遭難から救助まで約37時間にもわたった漂流。
(海上保安庁の隊員)
「低体温」
船員に肩を支えられながらも、女性は自分の足で立ちます。
(海上保安庁の隊員)
「オッケー!」
ヘリコプターに引き上げられると、手をふるようなようすもみせていたこの女性。見つかった場所は…。千葉県の南、11キロほどの海上。ただ、女性が行方不明となったのは下田市の白浜大浜海水浴場で直線距離で、約80キロも離れた場所でした。いったい女性に何があったのでしょうか。
7月8日の夜。
(女性)
『一緒にいた友人が海に入ったあと戻ってこない』
午後8時前、海で遊んでいた20代の中国人女性が沖に流されたとの友人の通報を受け、警察と消防、海上保安部が付近を捜索。しかし、女性を見つけることはできず、行方不明に。
水難事故の専門家によりますと、事故の起きた海域は黒潮という大きな潮の流れがあり、女性はそれにのって千葉県の沖合まで流されたとみられます。そして…。千葉県沖を航行していた貨物船が浮き輪に体を入れた状態で漂流している女性を発見。付近を航行していた別のタンカーが貨物船から連絡をうけて駆けつけ、乗組員2人が海へ飛び込み女性を救助しました。
その後、海上保安部のヘリで女性を病院に搬送。脱水症状がありましたが、意識ははっきりしていて命に別条はないということです。広大な海でおよそ37時間もひとりで漂流し続けた女性。専門家は奇跡の救助だと話します。
(水難学会 斎藤 秀俊 理事)
「(発見された付近は)貨物船の 行き来が頻繁なところ」「船にぶつかることなく」「運良く発見されたというところは奇跡と言っていいと思います」
そして助かったのには2つのポイントがあったと指摘。
(水難学会 斎藤 秀俊 理事)
「浮輪をつけていて呼吸がきちんと確保できたこと」「(今の時期)海水温で26度くらい、そうすると体は冷えるけど、すぐに命に直結するような水温ではなかったので、そういった状態が生存に繋がったということですね」
今回、中国人女性が泳いでいた下田市の白浜大浜海岸では、これまで、波にさらわれて死亡する水難事故が発生していました。6年前、白浜大浜海岸で海水浴をしていた大学生の男女4人が波に流され、このうち一人が死亡する事故がありました。警察は、岸から沖に向かって強く流れる「離岸流」によって流されたとみています。
この映像は「離岸流」をとらえたものです。緑色の着色剤が、波の向きとは反対の沖の方へと流れていくのがわかります。この離岸流は、海岸へ打ち寄せた波によってたまった海水が沖に戻ろうとするために起きるもの。流れが速く、知らず知らずのうちに沖まで流されてしまうため、事故につながりやすいことが指摘されています。
また、白浜大浜海水浴場は7月13日に海開きをする予定となっていて、下田海上保安部は、開設前に海には入らないように注意を呼びかけています。
(下田海上保安部 牧野 真也 交通課長)
「海水浴場がまだ開設されていません。ということは監視員がいない、ライフセーバーがいないことで、発見が遅くなることもあります。」「(夜間の遊泳は)捜索や救助が困難になってしまうので、このような事故にならないためには、開設されたライフセーバーや監視員がいる管理された海水浴場で泳ぐこと、それでマリンレジャーを楽しんでほしい」
これから本格的に始まる海開きシーズン。海に入る際はルールとマナーを守ることが求められます。