深刻!“1000円の壁”ラーメン王国・札幌を襲う「値上げの波」苦渋の決断その裏に…
物価高騰の影響で値上げが相次いでいますが、ラーメンも例外ではありません。
1杯1000円を超えると客足が落ちるとされるラーメン業界。
札幌市内のラーメン店では自慢の味を守り続けるため、苦渋の決断を迫られています。
国民食として愛されている「ラーメン」。
そんなラーメン業界でささやかれているのがー
1杯1000円を超えると客足が遠のくと言われれています。
(観光客)「ちょっと高いと思う。800円~900円が妥当かな」
(急式キャスター)「ラーメンが1000円だったら食べに行く?行かない?」
(札幌市民)「結局行くんですけど、高いなとは思いますね」
「1000円の壁」が立ちはだかる中、苦渋の決断をしたラーメン店があります。
札幌市北区にある「麺武はちまき屋」です。
看板メニューは、真っ黒な見た目が特徴のしょうゆラーメン。
(急式キャスター)「見た目よりもあっさりしていますね。甘みとコクを感じる醤油の風味。細めの麺によく絡んで美味しいです」
お昼時になると店内はすぐ満席に。
(客)「よく来てる」
(急式キャスター)「どのくらいの頻度で?」
(客)「月に3回くらいかな」
(客)「濃くて他にない味。1回食べたらもうこれ以外食べられないですよ」
遠方からも客が訪れる人気店ですが、7月に大きな決断に踏み切りました。
それは、値上げです。
「930円」から「1000円」に価格を引き上げました。
(麺武はちまき屋 江良篤史店主)「(従業員の)賃金を上げるためと、物の値段が上がったことに対する対応として、値上げさせていただきました。たとえばガス代だったら20年前から5割増し、ラーメンに使うラードも5割、倍増ですね」
チャーシューに使う豚肉やスープをとるための豚骨も、2002年の創業時に比べて2倍近く値上がりしているといいます。
1杯の価格1000円のうち、原価と人件費が6割から7割を占め、そこから光熱費など引くと利益は100円前後。
1日100杯売れたとしても、店を経営する夫婦の利益は1万円ほどです。
値上げの波に抗いつつも「万策は尽きた」というラーメン店。
1000円の壁は超えざるを得ないといいます。
(麺武はちまき屋 江良篤史店主)「逆の立場で考えると高いと思うんですよ。昼ご飯代で1000円かかるというのは、僕の暮らしから考えると贅沢だなと思ってしまうので。当然僕の中では1000円の壁というのはすごく高くて、でもいつか超えざるを得ない。値上げしないで我慢しようとすると、借金が増えたりということになって、お店が続けられなくなる」
店の味を守り続けていくための、まさに苦渋の決断です。
ラーメン「1000円の壁」について、STVのYouTubeチャンネルでアンケートをとったところ、6割以上の人が高いと思うと答えました。
一方で、こんな声も…
(札幌市民)「高くはなったと思いますけど、食べたくなったら払っちゃうぐらいの金額だと思います」
外国から来た人の見方は、少し違うようです。
(スペインから来た人)「まだ安いと思う、ヨーロッパと比べたら。(ラーメン1杯)1600円までなら大丈夫かな」
スペインの首都・マドリードでもラーメンを食べたことがあるといいます。
(スペインから来た人)「たぶん3000円くらい。高いでしょ」
こちらは行列ができる人気店、札幌・狸小路にある「らーめんサッポロ赤星」です。
カウンターのみの店内はお客さんでいっぱいです。
人気メニューは、鶏白湯スープを使ったしょうゆラーメン。
(客)「おいしいですね。めっちゃうれしいですね。500円でこれはすごい」
値段はなんと500円!
2004年の創業以来、ワンコインで食べることができます。
仙台でラーメン店を営んでいる家族が食べに来ていました。
(仙台から来た人)「あっさりしているんだけどコクもあって海苔の風味とかめちゃめちゃよくて。仙台でこのレベルで500円はないですね」
ラーメンは「庶民の食べ物」という先代の思いを受け継いできましたが、この店にも物価高騰の波が押し寄せています。
(石黒記者)「1杯500円で食べられると人気のラーメン赤星ですが、8月1日から600円に値上げするということです」
20年間貫いてきたワンコインの看板を下ろすことになりました。
値上げの背景はというとー
(らーめんサッポロ赤星 厨房 山本和弘さん)「チャーシュー用の豚肉ですね。2割~3割は上がってきています」
こだわりの岩のりも値上がりしています。
(らーめんサッポロ赤星 厨房 山本和弘さん)「3か月間に1回ぐらい上がっている。1800円が今は2500円ぐらい」
長時間のガスコンロの使用を控えたり、卵の代わりにお麩をトッピングするなど、値段を変えないための工夫を凝らしてきましたが、すでに限界を超えているといいます。
(らーめんサッポロ赤星 前井孝政店長)「ちょっとずつ上がってきたんですけど、ことしはもうガーンガーンと。先代が500円でやっていた時の話をずっと自分も聞いていたので、自分の代で500円を終わらせるっていうのが・・・苦渋でしたね。500円プラス100円握りしめて来てくれたらうれしいですね」
原材料費の高騰に苦悩するラーメン店。
ラーメンを研究する専門家は、2極化の時代を迎えていると分析します。
(大和大学社会学部 立花晃准教授)「1000円の壁は越えつつあるというところは、いろんな職人的なトライアルをされる中で、こだわりの食材であるとか返し、醤油にこだわるであるとか、職人気質のラーメンというものと、いわゆる大衆文化としてのラーメンに二極化してるという見方が1つはできる。東京でもう1500円を超え始めているとすれば、早晩全国で1000円の壁というのはブレイクスルーされる可能性はあると思っています」
客に満足のいく1杯を提供したいと葛藤するラーメン店。
北海道が誇る食文化のひとつ・ラーメンが、いま苦境に立たされています。