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【記者がみた法廷】遺体発見は“母の誕生日” 自宅に放置した66歳の息子 法廷で語った身勝手な理由《新潟》

2024年8月21日 14:16
【記者がみた法廷】遺体発見は“母の誕生日” 自宅に放置した66歳の息子 法廷で語った身勝手な理由《新潟》

90歳代の母親の遺体を自宅に放置したとして死体遺棄の罪に問われた66歳の息子。
なぜ事件は起きたのか。母親に対して、思うこととは……。
法廷で語った“証言”に迫った。

【「最近姿が見えない」近所からの通報で明らかになった事件】
新潟市秋葉区の小林弘明被告(66)はことし6月、同居する90歳代の母親が亡くなったにも関わらず、遺体を自宅に放置したとして死体遺棄容疑で逮捕された。

「最近、女性の姿が見えない」。付近の住民からの相談を受けた警察が開いていた窓から室内に入ったところ、遺体が見つかり事件が発覚した。


【「間違いありません」初公判で認めた罪】
8月20日に開かれた初公判。白髪交じりの頭に白いマスクを着用。指先までピンと伸ばした姿勢で証言台の前に立った。
検察側が起訴状を読み上げた後、起訴内容について「間違いはありませんか?」と問われた小林被告。「ありません」。


【なぜ90代の母を?検察が指摘した身勝手な動機】
検察側の冒頭陳述。
「6月2日、小林被告は自宅1階で母親が死亡したことに気付いたが、葬儀代などが捻出できないと考え、寝室に遺体を運び、遺体の上に敷きパッドをかけて放置した。さらに数日後、遺体の腐敗が進んでいることを認識したが、虫が湧き出てくるのを防ぐため、寝室のドアなどにガムテープを貼り、その後、母名義の口座に振り込まれた年金を引き出し、生活費やボートレース代などに消費した」。


【実妹が証言「兄はお金にだらしなく、あればあるだけギャンブルに」】
検察側が読み上げた供述調書。
実の妹が語ったのはお金に対する小林被告の“だらしなさ”だった。
「お金にだらしなく、あればあるだけギャンブルに使っていた」。

母親と2人で暮らしていた小林被告。
「母は兄を溺愛しており、甘やかしていた。だらしのない人だったが、母のことはしっかりしてくれると信頼して任せていた。なぜそんなことをしたのか理解できない。母は兄と一緒に暮らせることを喜んでいたのに、最後がこんなことになってしまいかわいそう」

【遺体発見は“母の誕生日”「ごめんね、という感じ」】
弁護側からの被告人質問。やりとりは以下の通り。

弁護人「お母さんとの関係性は?」
小林被告「人並みに仲がいいと思います」

弁護人「お母さんはあなたをどのように思っていましたか?」
小林被告「姉や妹よりは溺愛されていました」

弁護人「お母さんを発見したのは?」
小林被告「脱衣所の中です、6月2日の昼頃です」

弁護人「6月2日は何の日ですか?」
小林被告「母の誕生日です」

弁護人「だから日付を覚えていたのですか?」
小林被告「はい」

弁護人「今回のことをどう思っていますか?」
小林被告「姉妹、母、周りにも大変申し訳なく思っています」

弁護人「お母さんへはどう思っていますか?」
小林被告「ごめんね、という感じ」


【遺体発見後も年金でギャンブル「一獲千金の気持ちで」】
弁護人「自分はギャンブルに依存していたと思いますか?」
小林被告「はい、ギャンブルへの依存により借金を重ねたり金銭的にだらしなく余裕のない生活が今回の事件を導いたと思います」

弁護人「お母さんが亡くなった後はなぜギャンブルをしましたか?」
小林被告「借金が残っていて、どうにか清算したいという思いでした。一獲千金の気持ちで」

弁護人「ギャンブルについては今後どうしたいと思いますか?」
小林被告「今回の事件を起こす引き金になったギャンブルなので、完全に絶ちたいです」

検察側「6月14日に振り込まれていた20万円ほどの年金が引き落とされています、引き落としたのはあなたですか?」
小林被告「はい」

検察側「何に使ったのですか?」
小林被告「借金の返済と光熱費と食費です。少しギャンブルに充てました」

検察側「ギャンブルにはいくら使いましたか?」
小林被告「半分の10万円ほどです」


【「身勝手な動機。酌量の余地なし」懲役1年2か月を求刑】
論告求刑で検察側は「母親の年金を引き出し、ボートレース代などに充てるなど、その身勝手な動機に酌量の余地は一切ない」と指摘。
小林被告に対して懲役1年2か月を求刑した。

一方の弁護側は「葬儀代が払えないという理由で、遺体の遺棄に特別な目的はない」などとして「相当な量刑とすべき」と情状酌量を求めた。

判決は9月4日に言い渡される。

(取材:TeNYテレビ新潟・田中利奈)