全国初の判断 伊方原発差し止め訴訟 住民の訴え棄却 最大の争点は「地震や噴火が起きても安全か」 大分
大分県内の住民500人以上と電力会社が約7年半に渡って争ってきた愛媛県の伊方原発3号機の運転差し止めを巡る裁判。
大分地裁は7日、住民側の訴えを棄却する判決を言い渡しました。
この裁判は愛媛県にある伊方原発3号機の運転差し止めを求めて2016年に県内に住む人たちが起こしたものです。
裁判では地震と火山の噴火に対する原発の安全性が最大の争点でした。
7日の判決言い渡しで、大分地裁の武智舞子裁判長は「原発に具体的な危険があるとは認められない巨大噴火の可能性も低いと判断できる」などとして住民側の訴えを棄却しました。
◆四国電力原子力部 池尻久夫副部長
「これまで伊方発電所の安全性ついて裁判所に主張してきたが、それが認められたということで妥当な判決をもらえた」
住民側は裁判後の会見で怒りをあらわにしました。
◆住民側代表 徳田靖之弁護士
「私たちが想定した中でも最低な判決だった。私たちの命、私たちの家族、そして故郷を守り抜くためにこの戦いをやめるわけにはいかない」
同様の集団訴訟は大分を含め全国4つの地裁で行われていますが、判決が言い渡されるのは大分が初めてです。
今回の判決について佐藤知事は「各地で裁判が継続していて今後も動向を注視していく。県としても、県民の安全・安心の確保に向け今後も対応すべきことを行っていく」とコメントしています。
【記者解説】
この裁判は大分県内に住む569人が原告となり約7年半に渡って行われてきました。
争点の1つは「地震が起きても安全か」ということです。
伊方原発の近くには中央構造線断層帯があります。
裁判では原発により近い場所に別の活断層があるかどうかが争われました。
住民側は「地下の構造をより正確に把握出来る三次元探査をしておらず調査が不十分」などと主張。
一方、四国電力は「周辺で別の調査をしていて他に活断層は無いと評価出来ている」などと主張していました。
これに対して大分地裁は「三次元探査をしなくても地下構造は把握出来る、調査や専門家の話から別の活断層は存在しないとした四国電力の評価は合理的」などと判断しています。
もう1つは「火山が噴火した時安全かどうか」ということです。
原告側は「およそ9万年前に阿蘇山で起きた巨大噴火を想定すべき」などと主張。
一方、四国電力は「原発の運転期間中に阿蘇山で巨大噴火が起こる可能性は低い」などと主張していました。
これについて大分地裁は「巨大噴火を引き起こす大規模なマグマだまりは存在しないと考えられる。阿蘇は巨大噴火直前の状態ではないとする評価は科学的合理的根拠によって裏付けられている」などと判断しました。
判決の直後、傍聴席からは「恥を知れ」などと怒りの声聞かれました。
住民側は控訴する方針で裁判は今後も続くとみられます。
また広島や松山などでも同様の裁判が行われていて、各地でどのような判決が出るか引き続き注目されます。