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つなぐ③最新技術で郷土芸能を守る老舗染物店 岩手・花巻市

2024年10月17日 17:04
つなぐ③最新技術で郷土芸能を守る老舗染物店 岩手・花巻市

 シリーズ「つなぐ」、3回目は郷土芸能の伝統をつなぐため、最新技術で祭り道具を作る花巻市の老舗染物店の話題です。道具の製作だけでなく、郷土芸能の未来を見据えた活動をしています。

 岩手県の無形民俗文化財「鹿踊り」。9月に開かれた花巻まつりでも勇壮な舞が観客を魅了していました。

 花巻市にある染物店「小彌太(こやた)」。江戸時代から続くこの老舗では、鹿踊りに使用される鹿頭(ししがしら)の製作を新たに始めました。

十代目 小瀬川雄太さん
「こちらは30数年前に作られた鹿頭のパーツだけですね。ちょっと今残ってるのがこの目の部分だけなんですけど。こちらが新しくことし作って漆まで塗った鹿頭のパーツになります。完全に再現するのを目標にさせていただきました」

 昔の職人のクセまで忠実に再現した鹿頭。ここまで精巧に制作した職人の正体、それは。

十代目 小瀬川さん
「これは3Dプリンターで造形いたしました。見本をスキャンしたものをパソコンでデータを編集して、このような形で造形をするという。まず、やはり作る方が減って来てるというのが一番にあって、彫る職人がご高齢の方が多いようなんですね。それでじゃあウチにできる形は何だろうと考えた時に、この3Dプリンターに行きついたという」

 郷土芸能が抱える問題…、それは後継者不足。祭りに参加する担い手だけでなく、その祭りを支える裏方の職人も年々減少しています。そうした問題を解決すべく、先月、雄太さんが中心となり、郷土芸能を後世に残すためのプロジェクトが始動しました。

Q「こちらの方はどなた?」
十代目「吉浜知輝さんという方で、副業で外部から入っていただいてうちの郷土芸能事業に対してアドバイスを色々といただいている方になります」

雷太ブランドディレクター 吉浜知輝さん
「今回衣装の事業というのは分かりやすいなという所ではあるんですけど、郷土芸能の担い手が減ってきているというのは喫緊の課題かなと思ってますので、教育事業にも取り組んでいこうと。習い事教室みたいなものもやっていきたいなという所だったりだとか、郷土芸能をもっと世の中に発信していくメディアの事業もやっていきたいなとか、多角的に郷土芸能を盛り上げていきたいなと考えております」

 この雷太プロジェクトがテーマとして設定したのは、「衣装製作」と「教育」と「発信」…そもそも雄太さんは花巻出身ではあるものの、特に祭りに興味を持つことが無く、大学卒業後は県外へ就職。しかし、5年前、家業でもある小彌太に戻り、外回りをすると、郷土芸能の抱える問題に直面したのです。父で社長の弘樹さんもまた、雄太さんのプロジェクトに期待を寄せています。

小瀬川弘樹社長(九代目)
「私も父から郷土芸能というのをやっていかなくてはと教わって、それを見ながら受け継いでくれたというか、感じ取ってくれたんじゃないかなと思います」

十代目「…明日高文祭の発表会なんですけど、それのリハーサルをされていて、高校の鹿踊り部の方とお話をしようと思って来ました」

 この日、足を運んだのは、岩手の高校生による文化の祭典、総合文化祭のリハーサル。関係者から生の声を聞ける大切な機会です。

奥野流富士麓行山鹿踊 松本寛章さん
「せっかくオリジナリティ出すんだったら、新商品できたんだったらこっちの方がね、フィット感はあるでしょうから」

十代目「そうですね」

 江刺の鹿踊り団体に所属する松本寛章さん。プロジェクト発足以前から、演じる側の視点で道具の製作などにアドバイスをしてきました。

松本さん
「小彌太さんが開発している新ゴムわらじといったらいいのかな?」
十代目
「一番は供給元が製造を辞めちゃったんですね。これがもう今手に入らないという状況で、何とかしてもらえませんか?というお声を結構いただいて…」
松本さん
「いま地域のそういった店も無くなってますし、なおのこと先細りでそういった中で、小彌太さんがはっきり郷土芸能をきちんと対応するという事業が始まったので、とても心強いなと思います」

 現在、試作を進めているのは、祭り用のゴムわらじの制作。消耗品であるわらじの供給不足が課題となっているのです。

十代目
「市民体育館の中で、おみやげ屋さんとか飲食店さんがブースを出したんですけど、その中で我々も出させていただきまして。今回新しい形でやりますと言った時に、絶対これまでの伝統で慣れてるみなさんなので、多分受け入れてもらえないんじゃないかなという不安の方が正直大きかったですね。ただまぁ、色んな団体さんからのポジティブなお声は本当に多かったので、自信にはつながりましたね」

 プロジェクトを通して小彌太が目指しているのは「郷土芸能の総合メーカー」。これまで祭り道具や衣装はそれぞれの工場や店が担当してきましたが、その全てをカバーし、供給不足を無くすことを目指しています。

十代目
「やっぱり昔ながらの技術を受け継いで、今の時代に合うように形を見直しながら先の時代に受け継いでいかなければいけないなとは思いますし、やはり岩手県の郷土芸能って本当に色んな種類があって、それが今後も絶えることなく盛り上がって、そして、その踊りを継承していけるようにお手伝いをしていきたいなと考えております」

 岩手が誇る郷土芸能を守るため…雄太さんの挑戦は未来へとつながっていきます。

最終更新日:2024年10月17日 18:49