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【脅威】「手足口病」だけじゃない…死に至る「人食いバクテリア」患者数すでに過去最多 手足が壊死も 背景に新型コロナによる“免疫”不足も

2024年6月15日 8:00
【脅威】「手足口病」だけじゃない…死に至る「人食いバクテリア」患者数すでに過去最多 手足が壊死も 背景に新型コロナによる“免疫”不足も
“人食いバクテリア”(提供:国立感染症研究所)

 幼い子どもたちを中心に流行する「手足口病」の流行が拡大し、関西2府4県すべてで「警報レベル」に達しています。保健所などが感染対策を呼び掛けていますが、実はいま、死に至る可能性がある感染症の患者数が過去最多になっています。その病気の通称は“人食いバクテリア”と呼ばれ、手や足が「壊死」する危険性もあります。(報告:加藤沙織)

■溶連菌の一種“人食いバクテリア” 「のどの風邪」とは別種の「劇症型」 致死率10~40%

 “人食いバクテリア”の正式な病名は「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」=溶連菌の感染症が劇症化した病気ということを意味します。

 国立感染症研究所によりますと、患者数は6月2日までで977人にのぼり、過去最多だった2023年の941人を半年も経たずに上回り、このままのペースだと年間で2倍を超える可能性があります。

 細菌学を研究する大阪公立大学の金子幸弘教授によりますと、“人食いバクテリア”は、急な発熱を伴う感染症で、傷口から細菌が入って患部が壊死し、多臓器不全に陥ることもあり、致死率が10~40%と高いのが特徴です。

 原因となる「溶連菌」自体は常に私たちの身の回りにいるものですが、①小学生くらいの子どもに多い「咽頭炎」のタイプと、②大人でもかかる「劇症型」のタイプ(人食いバクテリア)との2種類があるといいます。

 ①の「咽頭炎」はいわゆる「のどの風邪」です。飛沫で感染することが多く、くしゃみやせき、近距離での会話などに注意が必要で、対策には手洗いうがいが効果的です。

 一方で、②の「劇症型=人食いバクテリア」は、ケガをした時の傷口から細菌が入ることによる感染症です。初期は発熱や悪寒などから始まることも多く、手や足の激しい痛みや大きな腫れなどがあり、これを放置しておくと「壊死」をもたらします。さらに、病状の進行が非常に早く、息苦しさや血圧の低下、数十時間以内に多臓器不全を起こすことがあります。

■ヨーロッパ中心に流行の変異株「M1UK」 すぐに医療機関で治療を

 金子教授によりますと、ヨーロッパを中心に、新しい変異株「M1UK(エムワンユーケー)株」が流行し、近年、日本でもこの変異株が確認されているということです。この変異株が患者数の急増に影響を及ぼしている可能性がありますが、明確な因果関係があるかどうかは不明だということです。

 劇症型は傾向として、基礎疾患を持つ人や、免疫が弱っている人は特に注意が必要で、40~50代の大人に多いということです。咽頭炎のタイプから劇症型に変化するケースは多くはなく、患部をきちんと洗うことが対策として効果的だといいます。

 万が一、傷口のまわりで激痛が走ったり、冷や汗や意識がもうろうとするなどの「ショック症状」が出たりした場合、進行が早いため、治療までのスピードが重要になります。切開手術や抗菌薬を投与することで十分治療することが可能で、適切な処置をするためにも、できだけ早く医師に相談することが重要です。

■「手足口病」関西2府4県すべて“警報レベル”

 一方、大阪府は6日、子どもの夏風邪「手足口病」について、府が指定する1医療機関あたりの1週間の患者数の平均が5人を超え、2019年以来5年ぶりの“警報レベル”に到達したと発表しました。

 さらに6月3~9日の期間では7.33人とさらに増加する傾向にあるほか、14日までに関西2府4県すべてが“警報レベル”到達を発表するなど、広い地域で流行が広がっています。

 手足口病は、6~7月にピークを迎える感染症で、5歳くらいまでの子どもを中心に流行します。発症すると、手や足、口の中などに発疹ができ、熱が出ることもあります。髄膜炎などの合併症を引き起こすこともまれにありますが、一般には、口の痛みなどから、飲食を避けてしまうことによる脱水などが心配される病気です。

 まれに免疫力の低下した大人にも感染し、子どもに比べ大人の方が、口の中の痛みや高熱への苦痛感が強い可能性があるということです。

 感染経路については、くしゃみやせきなどによる飛沫感染が多く、手洗い・うがいが最も効果的な予防策だということです。便からの感染もあるということで、トイレの蓋を閉めてから水を流すことも対策になるといいます。

 金子教授によりますと、「人食いバクテリア」「手足口病」など、さまざまな感染症が猛威を振るっている理由について、新型コロナ対策で感染症にかからなかった結果、免疫が獲得できず、感染対策が緩んだ今のタイミングでかかる人が多くなっている可能性を指摘しました。

 コロナ禍を乗り越えた今、改めて徹底した感染症対策が求められます。

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