【工事の不手際】東京ドーム4個分の農地に海水が流入し農業被害 熊本県が謝罪し示した対策は
2月、天草市で水門の工事中に海水が農地に流れ込んだ問題で、熊本県は4日、被害にあった農家に謝罪しました。今後の農業はどうなるのか、県が示した対策とは。
この問題は2月下旬、天草市河浦町で、羊角湾の堤防に設置された樋門から大量の海水が田畑に流れ込んだものです。
県によりますと、現場では老朽化した樋門を取り換える工事が行われていましたが、予定していた2月28日の夕方に作業が終わらず、業者が門の扉を外したまま現場を離れたということです。
業者は県に対し「土のうで海水が止まる」と話したということですが、夜の満潮時に海水が土のうを乗り越えて流れ込みました。
■コメ農家 倉田晋幸さん
「本当にショック。概算で1000万円から2000万円ぐらいの被害が出そう」
被害は果樹園にも及んでいます。河内晩柑を栽培する山﨑修さんの畑を訪ねると…。
■山﨑修さん
「葉っぱが落ち始めましたかね、黄色くなって。弱っている葉っぱは落ちていますね」
ひざの高さくらいまで海水に浸かったことで、樹木に変化が出てきたといいます。
■山﨑修さん
「代替地を探すべきなのか辞めるべきなのかというところで迷っているところです」
そして4日、県が農家に説明会を開きました。
■県の担当者
「工事関係で業者の不手際ではございますけれども、色々ご迷惑をおかけしていますことを、まずはお詫び申し上げたいと思います」
県は、説明会に出席した11人に、塩分濃度が高い場所もみられると説明。対策として示されたのは…。
■県の担当者
「湛水(水をはってため続けること)を基本として、場合によっては湛水を繰り返してもらう。あるいは、その水がうまく地下に浸透していかない場合は、地下に浸水しやすいように何らかの対策をしてもらうということが、県がお示しできる対策」
田畑に水をため、土に残った塩素を洗い流す方法です。参加した農家は。
■農家
「とりあえずここを全部、今年は保証するというか、県が。作って、あとで枯れました、そこで補償しますかって。それでは私たちも困る。作業がすごくわずかな時間しかないので」
■熊本県天草広域本部農林部農業普及・振興課 桑野伸晃課長補佐
「データが揃わないと県としてもなかなか動けないので、要望を受けてデータを揃ろえてから、対策をしっかりとっていきたいと思っております」
県は、海水が流れ込んだ範囲は、東京ドーム4.1個分にあたる19ヘクタールに及ぶと見込んでいるということです。
【スタジオ】
東日本大震災で、広大な田畑が津波の塩害に襲われて復旧が大変でした。塩素は比較的早く抜けるものの、ナトリウムの除去が時間がかかるといわれています。
気になる今後の対応について、熊本県農業技術課に取材しました。一般的な目安として、農地の土の量に対する塩素濃度が稲作では0.1%より低い場合、果樹では0.05%より低い場合、このままの土壌で農業を継続できるとしています。
塩素濃度がこれより高い場合、海水に浸かったところに水をためて塩分を洗い流し、濃度が基準を下回るまでこの作業を繰り返します。現時点では、今回被害を受けた農地には、主にこの方法を検討しているということです。県は、土の分析結果は近日中に出ると説明しています。
一方、門を外したままにした熊本市の業者は、KKTの取材に対し「ゲートの周りに土のうがあり、海水が土のうは超えないだろうと思ったのが判断ミスだった。当社に責任があるので、誠意を持ってしっかり対応していこうとはっきり決めている」と話しています。