【芸能コラム】宮田陽・昇とホンキートンク
東京の漫才師が元気だ。
すっかり“若手のベテラン”になりつつあるナイツとは違うアプローチが人気の「宮田陽・昇」と「ホンキートンク」が6月21日、初めての「二組会」を開いた。
初もの好きとしては見逃せないとばかりに足を運んだが、こんなにエキサイティングな会に接したのは久方ぶり。記憶に残る“神会”だった。
ピンで活動する落語家が同業者と開く会を「二人会」と呼ぶ。あやかる形で名づけた「宮田陽・昇 ホンキートンク 二組会」。会場となった東京・中央区のお江戸日本橋亭は、超満員だった。
漫才師「青空球児・好児」の球児が会長を務める漫才協会に所属する一方、「宮田〜」は落語芸術協会(桂歌丸会長)、「ホンキー〜」は落語協会(柳亭市馬会長)に所属。頻繁に寄席に出演し、しゃべりの場を確保していることが、彼らの芸を下支えしている。
この日、寄席で聞いたことがあるネタもかけたが、それでも格段におもしろかった。
落語家目当ての客が多い寄席と違って、この日の客は漫才師目当て。寄席で笑いが取れるネタは破壊力を増し、笑いの渦を作り出した。
2組とも理想的な相方に恵まれた。どことなく凸凹っぽいコンビで、しかもどちらのコンビも、ボケがちょっと色気のあるイケメンときている。
ツッコミの腕前が確かで、ネタをうまく振りつつ、相方のボケに勢いよく突っ込むが、決して暴力的にはならずに品がある。ツッコミの品の有無によって、漫才の品は決まる。2組とも、理想的な相方を得た、というわけだ。
出しものは、漫才ネタを各組2本ずつ。加えて、相方を交換して“シャッフル漫才”に挑んだ。
事情を知らない人が見れば、「このコンビ、何ていう名前?」と間違うほど、シャッフルされた2人による漫才も、安定的な笑いを放つ。こなれていないな、と少しは感じてしまうネタではあるが、十分にご愛嬌として楽しめる。
漫才協会に所属する若手2組にしゃべる機会を与えようと、番組の合間に出演枠を設けた。彼らの独特の芸風に客席がひんやりする場面もあったが、後輩思いの先輩漫才師の配慮を感じる客席は、温かい。
今後、漫才師ではないゲスト、という具合に選択肢を広げれば、この「二組会」は“神会”として大いに発展、継続が期待できる。
「宮田陽・昇」は、平成23年度(第66回)文化庁芸術祭「大衆芸能」部門新人賞を受賞し、高いレベルの実力は折り紙つき。あえて注文を付けるとしたら、ついつい横を向き相方と対面する時間が長引く宮田陽に、もう少し客を見ながらしゃべる時間を増やしてもらえば、というささやかな希望だけ。
次回開催は、12月16日(水)、同所で。楽しみな会が生まれた。(Q)