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東芝豪腕経営者・西田元相談役が残した課題

2018年1月3日 18:13
東芝豪腕経営者・西田元相談役が残した課題

東芝のアメリカ原子力事業での巨額損失が明るみに出てから約1年。迷走を続けてきた東芝に、ようやく再建のメドが立った。

東芝は、2017年12月、半導体子会社の売却をめぐり対立していたアメリカのウエスタンデジタル社と、和解すると発表。これにより、東芝は、中国など各国での独占禁止法の審査に通れば、半導体子会社の売却を完了できる見込みとなった。

半導体事業の売却をめぐり混乱の収拾のメドがようやくつきはじめた2017年12月8日、東芝の一時代の終焉を象徴するように、社長や会長を歴任した西田厚聡氏が死去した。

西田厚聡氏は2005年に社長に就任。原発と半導体メモリーへの重点的な巨額投資により事業を拡大させ、2006年にはアメリカの原発大手「ウエスチングハウス」の買収を手掛けるなど、「豪腕経営者」と評された。

しかし、相談役時代の2015年に不正会計問題が発覚すると引責辞任し、批判の声が多い中、説明する場に一度も出ることもなくこの世を去った。

強力なリーダーシップで絶頂期の東芝をけん引してきた西田氏は、現状の東芝について、何を思っていたのだろうか。

日本テレビは、去年の春以降、インタビュー取材を何度も試みた。しかし「裁判中なので語ることはない」と一向に取材に応じてくれる気配はなかった。

ところがその後、繰り返し自宅に訪ねると、西田厚聡氏はインターホン越しにようやく重い口を開いた。

「力を注いできた半導体がまた、このようになるのは、極めて、残念です」

東芝が半導体事業売却をめぐり揺れ動く最中のこと。

「私が社長の時に韓国との差がついてしまった。いかに生産能力を増強するかで金をつぎ込んだわけですよ。東芝は技術を持っていたが、生産能力で差がついてしまった。しかもウエスチングハウスを買収する時も、結局一番重要なのは半導体ですから」

一方で、結果的に経営危機を招く要因となったアメリカの原発事業「ウエスチングハウス」の巨額買収について、経営判断は間違っていなかったか聞くと、西田氏は─

「ウエスチングハウスの買収の話と、今回東芝がこういう風になったのは全く100%無関係とは言わないが、買収の件に関しては、あの当時としては私は最適な判断をしたつもりです。あの状況下で。福島の原発事故が起こることも予測できなかったわけですし。その最適な判断が正しい判断だったのかどうかは、10年20年たたないと分からないこと」

当時としては判断は間違ってなかったと強調する西田氏。その後の経営陣に対して、こう批判した。

「今回の問題は経営判断能力、つまりマネジメント能力の問題。実効能力がほとんどなかったということが今回のWHに関わる本質です」

更に、今後の東芝の経営について西田氏は、「何かが起こってから何かが問題と言って、何かをする、こういう後手後手だと経営にならない。この先、何が起こるが予測して、それに対する最大限のリスクに対して最大限手をうつ。経営というのはリスクを負いながら経営をしなければいけないわけで、どんな事業も残らなくなっていく。なくなっちゃいますよ」と、常にリスクを取っていた自身の経営スタイルを自負しながら、現在の経営姿勢を批判していた。

半導体子会社の売却のメドがたった今、危機を脱したかに見える東芝だが、まだ課題は山積。

現在、利益の約9割をたたき出している虎の子「半導体」に変わる中核事業を育てなければならない。また、東芝の主要株主には「ものいう株主」と言われる多くの海外ファンドが名を連ねているため、株主が納得のできる経営を緊張感とスピード感を持って進めなければならない。

今後、東芝に残った社会インフラ事業やエネルギー事業でどのくらいリスクを取って、どのように収益を上げていくか、早期に具体的な経営戦略を示す必要がある。

2018年は東芝にとって正念場になりそうだ。