【解説】「宿泊税」全国で導入が相次ぐ…税収の使い道は? 専門家“今後広がっていく”
長崎市で先月から「宿泊税」が導入されました。「宿泊税」は自治体が独自に定める税金の一つで、今、全国で導入が相次いでいます。税収はどのように使われているのでしょうか。また専門家は「宿泊税」について、「広がっていくだろう」と話しました。
■「宿泊税」全国で導入相次ぐ…使い道は
有働由美子キャスター
「日本の三大中華街の一つ、長崎市の中華街は、1日はゴールデンウィーク中とあって多くの人でにぎわっていました。その長崎市で新たに導入されたものがあります。それは旅館やホテルに泊まった時に支払う『1泊100円から500円』の『宿泊税』です。1泊の料金によって払う額に幅がありますが、長崎市では先月から開始しています。今、全国の自治体で導入が相次いでいるといいます。小野さん、『入湯税』は知っていましたが『宿泊税』ですか」
小野高弘・日本テレビ解説委員国際部デスク
「『入湯税』と同じで、これも自治体独自の税金です。長崎市は年間3億7000万円の税収を見込んでいます。これで『端島炭坑(軍艦島)』『旧グラバー住宅』など、世界遺産『産業革命遺産』を紹介する施設を作ったりしたいといいます。『観光の魅力アップのために使うので、観光で来たみなさんどうか協力してください』という税金です」
「すでに始めている自治体はあります。例えば東京都は税率1泊100円~200円で、2023年度の税収は17億円になると見込まれています。これをWi-Fiの環境の整備や、海外へのPR事業などに使っています。大阪府は税率1泊100円~300円、2023年度は約12億円の税収見込みです。駅周辺での案内表示の整備などに使っています。福岡県は税率1泊200円で、2023年度は14億円の税収見込みです。海外の富裕層を対象にした旅行商品の開発にも使うそうです」
有働キャスター
「インバウンドにかなり力を入れているのがわかりますね」
小野解説委員
「経済効果が大きいですからね。一方でこういう使い道もあります。京都の夏と言えば『祇園祭』です。京都市は祭りで使われる『山鉾(やまほこ)』の修理に使っているそうです。続いて、『日本新三大夜景都市』に選ばれた北九州市では、『夜景フェス』を開催する際、山までのシャトルバス運用に活用するそうです。金沢の町屋では、町屋再生に使うだけではなくて、金沢市では街を走るシェアサイクルの数を増やしたり、電動アシスト型に変えたりするのに『宿泊税』を役立ているそうです」
■熱海市では導入に慎重…客が近隣に流れるのでは 専門家「循環が必要」
小野解説委員
「ただ、導入に慎重な自治体もあります。静岡・熱海市です。『宿泊税』は観光客からすると実質、値上げになるわけで、市民や事業者などから心配の声も出ています。『多くの税を払う印象になると宿泊客が近隣の温泉地に流れてしまうのでは』『事業者も手間が増えるのでもっときちんと説明して』という意見も出て今、導入するかどうか検討中だそうです」
「観光業に詳しい明治大学の飯田泰之教授によると、『観光のインフラ費用を観光客が負担するという考え方でもあるので、広がっていくだろう』『ただし“この税のおかげでこれができた!”というのを示せないと理解は得られないでしょう。観光客が増えて税収も増える、そういう循環も必要です』と言っていました」
有働キャスター
「今後、『海外から来る人を2030年までに6000万人まで増やす』と政府が目標を立てていることを考えると、観光地が魅力を増すことは大事なことだと思いますが、快く支払ってもらえる説明も大事です」
(5月1日放送『news zero』より)