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日米財界人会議 いきなりグリーンではない

2021年10月8日 12:00
日米財界人会議 いきなりグリーンではない

日米の経済界のリーダーらが参加して行われた日米財界人会議。「カーボンニュートラルはブラウンからいきなりグリーンではない」の真意は?アメリカ産業界が強くCPTPPへの参加意欲を示したワケは?そしてワクチン、半導体、レアアース、防護服の国家間での奪い合いを経て行き着いた対策は?

■「サプライチェーン」への危機感

日米の経済界のリーダーらが通商や経済の課題解決に向け提言をまとめる日米財界人会議。ことし強力なキーワードとなったのは「サプライチェーン」だ。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外の半導体や部品の供給が追いつかなくなり、日本の自動車メーカーの生産が止まる、などといったことが今起きている。こうしたことを含め、サプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性が問題となる中で、今回の会議は行われた。

提言にはパンデミックで「半導体」や「防護具」「医薬品」などを生産する既存のサプライチェーンの脆弱性が明らかになったとして、「特定の産業における調達先を多様化することは、強靱(きょうじん)なサプライチェーンを構築し、リスクを軽減するための鍵であると(日米で)一致した」と明記された。

議長を務めた三菱UFJ銀行特別顧問の平野信行氏は会見で「サプライチェーンは今世界中に張り巡らされている。それをどこかで寸断するということは、今まさに様々な問題が生じているが、こうした問題が続くということになる」と述べ、デカップリング(国と国の経済分断)などはあってはならないとの見解を示した。

■アメリカ、CPTTPに意欲

また、通商分野について平野議長は「今年はアメリカ側からも“アメリカがCPTTPに加盟することが必要だ”という意見が強く出た」と述べ「前進だ」と評価した。

平野氏は、背景に“サプライチェーン寸断という事態の中で、アメリカ経済にとっても世界貿易や投資の重要性が強く認識されたことがある”との見方を示した。

■脱炭素、いきなりグリーンではない

さらに2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、平野議長は「ブラウンからいきなり全てがグリーンになるわけではない」「いかに円滑に社会的混乱無く、産業競争力を損なうことなく進んでいくことができるか、トランジッションが鍵だというのが日米経済界共通の考えだ」と説明した。

提言では“カーボンニュートラル実現に向けた移行は企業、消費者、労働者などに与える経済的ダメージを抑える方法で行われるべき”とされ、政府に対して、「望ましいエネルギーミックスを達成するための政策を明確化し、革新的技術への投資を醸成させること」、「現実的かつ段階的で計画的な移行を促進させること」などを求めた。