カカオ生産者はチョコレートの味を知らない?
2月14日はバレンタインデー。日本では、バレンタインデーに向けて、チョコレート商戦が繰り広げられています。しかし、チョコレートの原料であるカカオ豆の生産者は、チョコレートの味を知らないことも多いそうです。
■生産者と購入客の「境界線を溶かすチョコレート」
2020年に設立された、MAAHA CHOCOLATE。オンライン販売のほか、デパートの催事などへの出店や、ワークショップの開催などを行っています。このブランドのチョコレートには、ガーナのエンプレーソ地方で採れたカカオ豆が原料に使われています。
代表の田口愛さんは、チョコレートには特別な思い入れがありました。幼少期に祖父の家に行くたび、もらっていたのがチョコレート。それをとっておいて、自分にとって大事な日、大事な瞬間に大切に食べていたそうです。
ある日、チョコレートがどこからどうやって自分の口にまで届くのかが気になり、「その先」を調べてみると、日本に輸入されるカカオ豆の8割ほどがガーナ産で、その生産には児童労働や貧困の問題が存在することを知りました。「チョコレートを食べて、自分が幸せなだけでいいのか」という疑問を抱いた田口さんは、実際にガーナに行ってみることを決意。19歳で単身ガーナに渡り、カカオ農家の元を訪れました。
カカオ豆を原料にして作られるチョコレート。それなのに、「チョコレートの味を知らない人が多くて、ショッキングだった」といいます。現地の人たちに即席のチョコレートを作って振る舞ったところ、「人生で食べたものの中で一番おいしい」と言ってくれたことが強く印象に残りました。
カカオ豆とチョコレートはつながっているのに、生産者と消費者との間には、あまりに大きな境界線があることを目の当たりにした田口さん。生産者の皆さんに自分たちが生産したカカオ豆からできたチョコレートの魅力を伝え、カカオ豆作りに誇りを持ってもらいたい。そして、カカオ豆の付加価値を高めたいと、現地での事業を始めました。
カカオ豆からチョコレートになるまで現地で一貫して生産するために、現在、工場も建設中で、「5年以内に100%メイド・イン・ガーナ」を目指しています。「第一次産業には限界があるから、地域の人の雇用も生み出していきたい」と語る田口さんは、このチョコレートをきっかけに、生産者の現状など、一歩先を考えてほしいと願っています。
■ショコラと人のつながりを感じられるパッケージ
オーガニックチョコレートを展開するブランド「ジャン=ミッシェル・モルトロー」。今年の新作チョコレートは、かごの編み目のようなパッケージで販売しています。この模様は世界各地で伝統的に行われる「編む」という行為と、ショコラで生まれる生産者とショコラティエ、購入客のつながりを象徴しています。
また、フランス人が市場に買い物に出掛けるときかごを持参し、そのかごに入る分だけを購入するので、買いすぎや無駄が生じない文化からも着想したといいます。チョコレートからサステナブルな文化につながっていく……そんな思いも込められているといいます。
原料には、タンザニアやペルーなど7か国にあるパートナーシップを結んだ農園で採れたカカオ豆を使用。ともに作っていることを共有するため、完成したチョコレートは農園に送っているそうです。
■バレンタインにチョコの購入予定がある人は6割弱
「ぐるなび」の調査によりますと、今年のバレンタインにチョコレートの購入予定がある人は57.2%と、去年に比べ4%増加。贈る相手でもっとも多かったのは「配偶者(47.6%)」。それに恋人・パートナーが続き、自分用として購入するという回答も23.1%にのぼりました。中には、「自分へのチョコを少し贅沢しようと思う」という人もいたようです。
購入した人や味わう人はもちろん、生産者も幸せや喜びを分かち合えるチョコレートへ。バレンタインのチョコレートが持つ意味はさらに広がりをみせそうです。