グーグルが個人情報を一括管理 不安の声も
アメリカのインターネット検索最大手「グーグル」は1日、個人情報の取り扱い方法を変更した。ユーザーが検索した内容や動画投稿サイト「YouTube」の閲覧履歴などを、全て一まとめに管理するという。「インターネット上での行動をまるごと管理されてしまう」との声もあり、世界で波紋が広がっている。
グーグルは検索サービスの他に、YouTubeや「Gメール」、SNS(=ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「グーグルプラス」など多くのサービスを無料で提供している。
グーグルはこれまで、ユーザーが検索すると何を調べたかなどの情報を検索サイトの中で管理し、YouTubeで動画を検索した場合の情報はYouTubeの中で管理していた。
1日からは、個人情報を一括管理する。例えば、ユーザーがログインした状態で料理に関する検索をしたとすると、その言葉が情報として残る。その後、YouTubeを利用すると、検索履歴から得た情報により、料理のレシピに関する動画が画面上に出てくることが可能になる。
ユーザーだけでなく、グーグルの主な収入源である広告でもメリットがあるという。広告主にとっては、より自分たちの情報を受け取ってほしい人に向けての広告の展開ができるようになるのだ。
アメリカの新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、今回の統合の背景には、成長を続ける交流サイト「フェイスブック」に対抗する狙いもあるという。フェイスブックには、個人の行動や好みなどの情報が多く蓄積されている。そのため、ターゲットを絞った広告を出すことができると、企業の注目が高まっているのだ。
アメリカのソフトウエア大手「マイクロソフト」は、方針変更が広告主のためだとしてグーグルを批判、ネガティブキャンペーンを展開した。
グーグルは「今回の個人情報の統合が収益拡大につながるとは考えていない」としている。
しかし、「情報が統合されることで、個人の行動がまるごと把握されるのでは」というプライバシー保護の観点からも、批判の声が上がっている。
アメリカでは、36の州と特別区の司法長官が連名で、グーグルの新たな運用方針に反対する声明を発表した。
EU(=ヨーロッパ連合)は、フランスの情報保護監視機関に調査を依頼した。この機関は、グーグルがEUのデータ保護に関する基準を守っていないとして、方針変更の延期を求める要望書を送った。
日本でも、総務省と経産省が先月29日、連名で「グーグル日本法人」に対し、法令順守やユーザーに対するわかりやすい説明が重要だとする注意喚起を行ったと発表している。
こうした批判に対し、グーグル日本法人・舟橋義人広報部長は「今回の個人情報扱い方針の統合が、我々が取得する個人情報がより多くなるということではありません。グーグルに情報を提供したくないという人は、ログインしないで使うという選択肢もありますし、これまでグーグルが収集した情報を削除するという選択肢もあります」と話している。
波紋が広がるグーグルの新方針については、今後も議論が続いていくとみられている。