【解説】創建記念日に動きは?その対応は?
25日、軍の創建記念日を迎えた北朝鮮。アメリカが圧力を強める中、記念日に合わせた核実験やミサイル発射が行われるのか警戒感が高まっている。
■最も強い姿勢を誇示できる日
創建記念日は、金正恩委員長の祖父にあたる故・金日成主席が日本の植民地時代の1932年、独立のための「抗日遊撃隊」、今の朝鮮人民軍をつくったのが4月25日だとして、祝日となっている。
北朝鮮にとって朝鮮人民軍は、国の体制を守るためにとても大事な組織だ。朝鮮半島情勢に詳しい早稲田大学大学院・李鍾元教授は「北朝鮮からすると、最も強い姿勢を誇示できる日は今日だ」という。
だから、大規模な火力訓練だけでなく、ミサイル発射や核実験が強行されるのではと警戒されている。特に今年は軍創建から85年、北朝鮮では5年ごとの節目が重視されるということもあり、注目されている。
■過去5年、4月25日に“発射”なし
ただ、過去5年で4月25日当日に弾道ミサイルが発射された例はない。
※北朝鮮 4月の弾道ミサイル発射(過去5年)
2012年 13日
2013年 なし
2014年 なし
2015年 なし
2016年 15日、23日、28日
弾道ミサイルは天候が良くないと撃てないので、ピンポイントで日程を調整するというのは難しいという事情もあるのかもしれない。
一方で、過去5回行われた核実験を見ると、1回目は労働党創立記念日の前日(2006年10月9日)、3回目は故・金正日総書記誕生日の4日前(2013年2月12日)、5回目は建国記念日当日(2016年9月9日)だった。
ミサイルと違って核実験は地下で行うので天気を気にする必要がなく、記念日に合わせられる可能性もある。
また、こうした記念日には、平壌で開かれる祝賀行事に諸外国の要人やメディアが招かれることも多く、今回も海外のメディアが平壌に入っているという。世界で注目されやすいということもあるかもしれない。
ただ一方で4回目については過去3回と違って、北朝鮮の後ろ盾とされる中国にさえ事前連絡なく突然、核実験が行われた。政府関係者は「金正恩体制になってからは、挑発行為の法則性が崩れて不確実性が増している」と話している。
■ミサイル発射、私たちにどう伝わる?
ミサイル発射を想定した訓練を行った自治体もある。先月、秋田県男鹿市で行われた訓練では、自治体に登録した住民に対し、ミサイルが飛んできたことを知らせる緊急メールが届き、屋外ではサイレンが鳴り響いた。
実は、日本では「Jアラート」という「全国瞬時警報システム」が整備されている。
まず、日本政府はミサイルが飛んできたことを確認すると、防災無線やメールで情報を発信する。
そして、「1:日本の領土・領海に落下する可能性がある場合」「2:日本を通過した場合」「3:日本の領海の外に落下した場合」の3ケースに分け、それぞれの情報をメールなどで送るとしている。
■発射からメールまでの時間差は?
Jアラートで情報が出された去年2月7日の場合、日本政府の情報によると、北朝鮮は午前9時31分頃、日本の沖縄県の方向に向けてミサイルを1発発射。その3分後に政府はJアラートなどを通じて各自治体に発射情報を出し、9時41分頃にミサイルは沖縄県の上空を通過した。
私たちは、この7分間で避難しなくてはいけないわけだが、落下場所など詳しい情報はこれよりもさらに遅れて発信されるので、実際にはそれよりもさらに短い時間しかないかもしれない。
こうした、万が一弾道ミサイルが落下してくる場合など、どうやって身を守るか、政府は内閣官房のウェブサイト「国民保護ポータルサイト」で、以下のように説明している。
屋外にいる場合「できる限り頑丈な建物や地下街などに避難する」
建物がない場合「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」
屋内にいる場合「窓から離れるか、窓のない部屋に移動する」
■情報にアンテナ
北朝鮮の動きは予測が難しく、いたずらに不安ばかり抱いていても仕方ない。
外務省の「たびレジ」というシステムは、例えばゴールデンウイークに旅行する際には日程やメールアドレスを登録し、緊急時に現地の日本大使館が出す情報をメールで受け取ることができる。
このように、できる範囲で情報にアンテナを張ることが大切だ。