テロに屈せず“自ら活動する”被害者たち
先月、イギリス・ロンドンの中心部にある議会議事堂に、車が突っ込むテロ事件が起きた。イギリスでは去年もテロが相次いだが、1年以上がたった被害者たちの今を取材した。
■“サポート足りない”被害者が政府に働きかけ
先月14日、ロンドンの議会議事堂の前にあるバリケードに車が突っ込み、3人がケガをしたテロ事件。
若林大介記者「議事堂周辺でまたしても事件です。周辺は多くの警察官や警察車両が配置され、物々しい雰囲気です」
車を運転していたイギリス国籍の29歳の男が拘束されたが、動機などはいまだわかっていない。実は、議事堂周辺では、去年3月にも5人が死亡するテロ事件が発生していた。
事件直後の一報を伝えた記事がある。救急車へ搬送されるトラビス・フレインさんは、犯人の男に車ではねられ、重傷を負った。事件後、チャールズ皇太子のお見舞いなどはあったものの、政府のサポートは十分ではなかったと感じたという。
トラビス・フレインさん「ほかの被害者と、どんなサポートが政府に欠如しているか検討するようになった」
フレインさんは、テロ事件の被害者らを支援する団体を立ち上げ、被害者を援助する基金設立などを求めている。
フレインさん「被害者にとって有益な政策になるよう政府に働きかけを行っている」
フレインさんは、すでにEUのテロの関連会合に出席していて、今後、イギリス議会の委員会にも参加する予定だ。
■“チャリティー”に救われ、自らも活動
また、去年5月、中部のマンチェスターでも人気歌手、アリアナ・グランデさんのコンサート会場周辺で、自爆テロ事件が発生し、22人が死亡した。
この時、NNN取材団は、現場に居合わせた被害者を取材していた。オリビア・ケリーさんは当時15歳。事件の影響でトラウマに苦しんでいたが、アリアナ・グランデさんが事件後に開いたチャリティーコンサートで“勇気”をもらったと話した。
オリビア・ケリーさん「事件を忘れることはありません。たとえ悪いことが起きようとも、共に寄り添うことを今回の事件を通じて考えるようになれました」
そんなケリーさんは、チャリティーコンサートの後、被害を受けた人たちのために新しい活動を始めていた。
ケリーさん「事件発生から1年の日に学校の友達とチャリティーイベントを主催しました」「また、学校でケーキを販売して、寄付もしました」
ケリーさんは、これからもチャリティーの活動を積極的に行うつもりだ。
■テロの影響、子どもたちにも…
一方で、テロの直接の被害者でなくても影響を受けている人たちがいる。それは子どもたちだ。メンタルヘルスケアなどを行う慈善団体「NSPCC」は、テロ事件が起きると、不安に思う子どもたちのカウンセリングが毎回、急増するとしている。
トルガ・ヨルディズさん「不安の気持ちにどう向き合えばいいか、しっかりと話してアドバイスします」
事件後もテロに屈せず、前向きに生きようとしている被害者とそれをサポートする人たち。イギリス政府は、被害者らのサポートを継続する一方で、テロを抑止するための対策なども重点的に行う方針だ。