マスク氏が開発に注力 脳にチップ“考えるだけでPC操作” 体動かなくても…初の被験者「大きな希望」
アメリカ・トランプ次期大統領のもとで影響力を増すイーロン・マスク氏。今、手がけているのが「脳インプラント」の技術開発です。人間の脳にチップを埋め込み、“考えるだけ”でパソコンの操作が可能になるというのです。
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私たちが向かったのは、アメリカ西部アリゾナ州。
「はじめまして。私はノーランドです。よろしくお願いします」
ノーランド・アーバウさん、30歳。8年前、湖で水難事故にあい、脊髄を損傷。首から下を動かすことができなくなり、家族の助けをかりながら生活しています。
今年、アーバウさんの日常生活に大きな変化が…。
人間の脳にチップを埋め込み、利用者が“考えるだけ”でスマートフォンやパソコンなどを操作できる技術の臨床試験で、初の被験者に選ばれたのです。
手がけているのは、トランプ次期大統領のもとで影響力を増す、実業家のイーロン・マスク氏です。電気自動車大手「テスラ」や、宇宙企業「スペースX」などのCEOを務め、医療分野でも、今注目の「脳インプラント」を開発するベンチャー企業「ニューラリンク」を率いています。
実業家 イーロン・マスク氏
「現実として、ほとんど全ての人は、時間の経過とともに脳や脊椎に問題を抱える。しかし重要なのは、埋め込み型のデバイスが、これらの問題を実際に解決できるということだ」
ニューラリンクは、規制当局の承認を得て、今年1月、臨床試験を開始。アーバウさんが、初の被験者に選ばれました。今年1月、脳にチップを埋め込む手術を受けたアーバウさん。マスク氏も病院に駆けつけました。
手術直後、埋め込まれたチップが脳の「信号」を検知することに成功。
アーバウさん
「信じられないような感覚で、本当に本当に素晴らしい瞬間でした」
術後の経過は順調で、“考えるだけ”でパソコンのカーソルを操作できるようになったといいます。
アーバウさん
「カーソルを動かしたいと思えば動き、とまってほしいと思ったらとまる。それほど複雑ではありません。とてもわかりやすい」
再びパソコンを使えるようになったことで、日本語の勉強を始めたというアーバウさん。いつか日本へ行くという新たな夢もできました。
アーバウさん
「(脳インプラントは)将来への大きな希望を与えてくれました。全てが突然変わった。人生で再び様々な経験ができる可能性が増え、以前より人に頼らずにすむようにもなった」
アーバウさんのように、身体が麻痺した人や、全身の筋肉が衰える難病ALS=筋萎縮性側索硬化症などの患者にとって、“一筋の光”となっている脳インプラント。
ただ、専門家は、人間の脳の構造は複雑で、開発には時間を要すると指摘します。
ノースウェスタン大学神経科学部 リー・ミラー教授
「(脳インプラントの)問題は、脳に異物を突き刺しているということ。脳は身体の一部として、何百万年も前から異物に抵抗するよう発達してきた。我々は脳の免疫システムを理解する必要があるが、まだ十分に解明できていない」
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ニューラリンクは、脳インプラントの全ての臨床試験を2031年に終え、実用化につなげたい考えです。