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失踪説まで…ジャック・マー氏3か月ぶり姿

2021年1月21日 0:26

「質屋の発想」と金融業界に苦言を呈す異例の“政府批判”発言のあと、公の場から姿を消したジャック・マー氏。中国のデジタル経済をリードするマー氏の身に何が起きたのか。世界の注目を集める中、3か月ぶりに姿を見せた。

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■3か月ぶり…オンラインイベントで突然

「皆さん、こんにちは。毎年、この日は皆さんと会う約束の日です」。約3か月ぶりに姿を現したアリババ・グループの創業者、ジャック・マー氏はモニター越しに静かに語りかけた。中国メディアによると20日、自身が主催する慈善イベントにオンラインで参加したという。

マー氏は2020年10月に上海市内で講演したのを最後に、公の場での発信が途絶えていた。この時の講演でマー氏は「今の銀行はまだ(担保を重視する)質屋の発想」「中国の金融機関の質屋的な発想は最も深刻だ」などと中国の金融業界に苦言。中国の大手銀行は多くが国有企業で、政府が経営しているのが実態だ。そうした銀行を批判するのは政府を批判するのと等しい。中国で政府を公然と批判するのはタブー中のダブーと言える行為だ。マー氏は発言の真意を明らかにしていないが、その後、公の場に姿を見せず、発言も途絶えた。

マー氏が創業したアリババ・グループの傘下、アントが展開する電子決済サービス「アリペイ」は無担保の小口融資を推進してきた。ビッグデータから個人の信用度を分析し、瞬時に金を貸す仕組みだ。10億を超えるユーザーを抱えるアリペイが急速に業績を伸ばしてきた要因の一つだ。

これが国有銀行などの地盤を脅かしているとの指摘もある。中国の政府関係者は「ジャック・マーはシロアリのように銀行の持ち場を食った上に、大手金融機関の仲間入りをしようとしている。それが思い上がりと思われた」と語った。実際、中国の金融当局はマー氏の発言に呼応するかのように、アントの小口融資を狙い撃ちにした業務改善を指示。11月に予定されていたアントの上海証券市場への上場も突然延期された。

欧米メディアなどはマー氏の発言が習近平指導部の逆鱗(げきりん)に触れたとの観測を報じ、その動向に注目が集まっていた。そして、約3か月ぶりに姿を見せたマー氏。あいさつでは当局の規制などについては一切触れることはなかった。そして、最後にこう述べた。「新型コロナの感染拡大が終わったらまた会いましょう」。

中国当局はアントがすでに業務を改善するための社内チームを立ち上げたことを明らかにしている。マー氏はこのまま表舞台に戻るのか。アリババ・グループに対する圧力はさらに強まるのか? 両者の動きが注目される。


※写真は中国SNSより