【解説】トランプ氏の人事で波紋 自身の裁判と国際情勢への影響は?
トランプ次期大統領は、国務長官に対中強硬派のマルコ・ルビオ上院議員を、司法長官には自身の熱烈な支持者のマット・ゲーツ下院議員を起用すると13日に発表しました。連日、波紋を広げているトランプ次期大統領が打ち出す人事について、日本テレビ・小林史国際部長が解説します。
◇
鈴江奈々キャスター
「トランプ氏が打ち出した一連の新人事を、どうみていますか?」
小林史国際部長
「一期目の時とは打って変わって、異例とも言えるスピードで重要な人事を矢継ぎ早に発表しています。来年1月の就任式を終えた瞬間から、すぐにトランプ氏の思い通りにことが進められるように、着々と準備を進めているといった印象です」
鈴江キャスター
「新たに発表になったメンバーもいますが、どこに注目していますか?」
小林国際部長
「注目したいのが、司法長官として発表されたマット・ゲーツ下院議員です。共和党の中でもゴリゴリの右派で、挑発的な発言でこれまでも物議を醸してきた人物です。米メディアによると『下院議員の中でも最も嫌われている人物の一人』だとされています。また、性的人身売買の疑いで、司法省の調査対象になったことがあるといった人物です」
鈴江キャスター
「そういう人物をなぜ、司法長官に選んでいるのでしょうか?」
小林国際部長
「トランプ氏は周りの評判などを全く気にしない人なんです。とにかく、自分にどれだけ尽くしているか、忠誠心が最大の物差しです。熱烈なトランプ支持者であるゲーツ氏を司法長官という重要ポストに就け、司法省を思い通りに動かしたいという狙いがありそうです」
鈴江キャスター
「トランプ氏は自らが刑事訴追されていますが、そこへの影響はどうでしょうか?」
小林国際部長
「影響は甚大なものがあると思います。トランプ氏は4つの訴訟を抱えていますが、そのうち2つは司法省がトランプ氏を起訴しています。ただ、アメリカでは現職の大統領を罪に問うことはできないとされているので、これらの訴訟は取り下げられることになる見通しです」
「また、それだけではありません。トランプ氏は自らを起訴した特別検察官らを、これから徹底的に追い詰めて、復讐(ふくしゅう)するとみられています。そこで、自らに忠実なゲーツ氏を司法省のトップに据えて、司法省の内部でも、自分に逆らう人を徹底的に排除する可能性が高いとみられています。そういう人が司法省のトップに就くということで、司法省の職員らも、すでに戦々恐々としているとみられています」
桐谷美玲キャスター
「この人事は、もう決定なんですか?」
小林国際部長
「閣僚人事は議会上院の承認が必要ですが、ゲーツ氏を良く思わない議員もかなり数がいるので、承認は難航する可能性もあります」
小林国際部長
「そして、この人事を受けて動き出したのがハリス陣営です。『トランプ氏が復讐(ふくしゅう)と報復の計画を実行に移すのを阻止しなければならない』と支持者に対して、さっそく支援や寄付を呼びかけるメールを送っています。ゲーツ氏が司法長官に就くと、政敵であったバイデン政権の人々への復讐(ふくしゅう)も始まるとみられ、民主党側も身構えているということです」
鈴江キャスター
「司法長官以外にも、注目される人事はありますか?」
小林国際部長
「国務長官に正式に発表されたマルコ・ルビオ上院議員です。ルビオ氏は中国やイランへの強硬姿勢で知られ、ウクライナへの軍事支援には反対の立場で、ロシアに有利な形になったとしても停戦すべきだという主張の人物です。トランプ氏は声明で『敵対者には決して引き下がらない、恐れを知らない戦士だ』と評価しています」
鈴江キャスター
「国務長官と並んで、外交の要となる国防長官についてはどうでしょうか?」
鈴江キャスター
「国防長官にはピート・ヘグセス氏の起用をすでに発表しています。イラクやアフガニスタンでの従軍経験のある軍人出身で、その後、保守系のFOXニュースで8年間、司会者を務めた人物です。テレビが大好きなトランプ氏は、知名度の高いキャスターらを好む傾向があるとされ、言ってみれば非常にわかりやすい人事です」
小林国際部長
「一方でロイター通信によると、トランプ氏らは国防総省の幹部らを大量に解雇する計画を進めていて、すでに軍幹部の解雇者リストが作成されているといいます。国際情勢がこれだけ緊迫する中、アメリカの外交安全保障の舵取りがどうなるのか、注目していきたいと思います」