【解説】中国「ゼロコロナ政策」抗議活動では異例の政権批判「習近平退陣!」の声も “緩和”難しい事情
中国国内で政権への不満が噴出する異変が起きています。
●“白い紙”で抗議
●「ゼロコロナ政策」限界か
●台湾が“親中国”に?
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
首都・北京では27日夜から28日未明にかけて多くの人が集まり、ゼロコロナ政策への不満を訴えたほか「自由や人権が欲しい」などと習近平政権の姿勢をやり玉に挙げました。
また、中国のSNSに投稿された新疆ウイグル自治区のウルムチ市で撮影された動画には、防護服を着た警察と市民が激しく殴り合う場面が収められていました。
さらに、上海で行われたとみられる抗議活動では、集まった人々から「共産党退陣! 習近平退陣!」と叫び声が上がり、公然と習近平政権の退陣を求めていました。
こうした中国政府への抗議活動は、SNSなどを通じて中国各地に広がっています。
今月14日に広州、25日から新疆ウイグル自治区のウルムチ、そして25日・26日ごろから北京、26日・27日ごろから上海などにも広がってきています。
国のトップである習近平国家主席の“退陣要求”すら出る事態になっているきっかけは、中国が推し進めている「ゼロコロナ政策」です。
この政策により、厳しい行動制限が強いられている市民が声を上げ始め、その抗議の声が“習近平政権批判”にまで発展してきているわけです。常日頃、政権批判を厳しく抑え込んでいる中国においては、これは“異例の事態”と言えます。
抗議活動の参加者は、何も書かれていない白い紙を掲げていました。これは“言いたいことを口に出せない”という無言の抗議の意味が込められています。自由な言論が封殺されていることが、この白紙に象徴されているわけです。
ただ、何も書かれていないとはいえ、摘発されないわけではないようです。中国当局は現在、大変警戒を強めていて、各地で起きている状況については、現地のテレビでも一切報道されておらず、SNSへの投稿も当局が発見次第、片っ端から削除しています。
ゼロコロナ政策では一体どのようなことが行われているのでしょうか。
例えば、中国の空港などでは、感染した人をカートに乗せて完全に隔離して移動させるという独自の感染対策がとられています。
また、中国メディアが、広東省でクレーンを使い窓から住人に食料などの物資を届ける様子を報じました。ビルやマンションの敷地内で感染者が確認されると建物全体が封鎖されるため、クレーンまで用意して対応しているということです。
現地で取材を続けるNNN中国総局・富田総局長はこうした抗議活動について、「政権への影響はもちろんあるだろう」とみています。「ゼロコロナ政策を仮に緩和するにしても、どのようにして軟着陸させるか、つまり波風を小さくしたまま解決できるか、難しい選択を迫られる」ということです。
今の政策を強行すればますます国民の心は離れていきますし、安易に緩和すると政府が自身の間違いを認めたことになってしまうわけです。
習近平政権への風当たりが強くなる一方、政権にとって朗報とも言える動きが台湾でありました。
4年に1度行われる台湾の統一地方選挙が、26日に投開票されました。これは台北市など22の直轄市や県のトップなどを選ぶもので、1年2か月後の2024年初めに行われる総統選挙の前哨戦としても注目されました。この選挙で、最大野党・国民党の候補者が台北市長選挙で当選するなど勝利しました。一方で、蔡英文総統が率いる与党・民進党は大敗しました。
今回、与党の蔡総統は、「台湾統一」を掲げて圧力を強める「中国への対抗姿勢」を鮮明にして支持を訴えました。ただ、今回は、これが狙ったほどの争点にはならず、有権者は「中国との関係」より、給与が上がらない状況が続いていることや、新型コロナの感染拡大で落ち込んだ“経済の立て直し”といったことを重視して投票したのではないかとみられます。
蔡総統は、責任をとって党首にあたる党主席の辞任を発表しました。
中国は、今回の台湾の選挙結果をどう見ているのでしょうか。
NNN中国総局・富田総局長は、「中国は歓迎する姿勢を見せている」と話しています。台湾統一にこだわる中国も、「本音では武力統一はしたくない、できるだけ台湾で“親中国”の政権ができて、交渉で統一に持ち込みたい」と考えているとみています。
その意味でも、今回の結果で蔡英文総統の求心力が低下していくことは、“中国にとってのオプションが増えた”と富田総局長は分析しています。
今回は地方選挙でしたが、1年2か月後の総統選挙では、対中国政策が大きな争点になるとみられています。そのため、その選挙に向けて、「中国は“蔡英文政権の対中強硬姿勢は民意を得られなかった”という宣伝工作をするだろう」と富田総局長はみていて、中国による情報戦、揺さぶりは続きそうだということです。
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台湾の将来は日本にも影響します。中国は今後、「増やした」とされるいくつものオプションの中でどのような戦略を選んでいくのか、今後の動向が注目されます。
(2022年11月28日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)