“世界一たのしいゴミ処理場”も…「デンマーク」の環境対策 集合住宅で「SDGs」の目標すべて達成?
古くから環境問題に取り組む北欧・デンマークでは、人にも地球にも優しい街づくりが進んでいます。国連が定めている「SDGs」の17の目標すべてを達成させる世界初の建物や、屋上でスキーをたのしむことができる、ちょっと変わったゴミ処理場など、世界から注目される環境対策を取材しました。
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デンマークの中心部で、ひときわ目立つ建物があります。首都コペンハーゲンの中心部にあるゴミ処理場です。見た目がスタイリッシュなだけでなく、「世界一たのしいゴミ処理場」との呼び声もあります。
“世界一たのしい”とは、一体どういうことなのでしょうか。
実は、このゴミ処理場の屋上にはグラススキー場が併設されていて、コペンハーゲンの景色を眺めながらスキーをたのしむことができるのです。さらに、ゴミ処理場の壁にはヨーロッパでもっとも高い、高さ85メートルのクライミング施設もあります。
ゴミ処理場と思えないほど、施設をたのしむ人々でにぎわっています。
ゴミ処理場代表 ヤコブ・シモンセンさん
「すべてのゴミをリサイクルすることは非現実的です。だから、このような施設をつくったのです」
代表は「人間とゴミは切っても切り離せない関係であり、ゴミ処理場を街の一部にしたかった」といいます。
さらに、この施設はゴミを燃やして終わりではなく、燃やした際に発生した熱をエネルギーに変え、近隣の約8万世帯に電気などとして届けています。
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デンマークが力を入れる環境対策。本気度がわかる取り組みは、駅構内でも確認できます。なんと、駅構内で自転車を押している人がいます。
実は、デンマークでは当たり前の光景で、ほぼすべての国鉄列車に自転車を持ち込める車両があるのです。デンマークは国を挙げて自転車利用を促進していて、自転車専用の信号や橋、高速道路まで造られています。
自転車利用者
「コペンハーゲンには自転車専用道路もあり、はやく快適に自転車に乗ることができます。なので、雨でも雪でも毎日、自転車に乗ります」
2020年の国勢調査によると、日本で通勤・通学に自転車を利用しているのは約13%。それに対し、デンマークはコペンハーゲンだけで44%が利用しているといいます。(European Mobility Atlas 2021年)
他にも、価格によりますが、自動車購入にかかる税金が150%になることもあり、CO2の排出を削減するため、さまざまな取り組みがあります。
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食品ロス削減の取り組みも進んでいます。
私たちはデンマーク発祥の食品ロス専門スーパーを訪ねました。賞味期限が切れたものや、切れそうなものを定価よりも安く販売し、日によっては無料になることもあります。
購入者
「今日は生クリームを買いました。今日の夕食に使うつもりなので、賞味期限が近いことは全く気になりません」
賞味期限が切れたものは、ボランティアが毎日、においや味を確認しています。
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デンマークは環境に優しい工夫が町中にあふれています。
首都コペンハーゲンの中心から車で20分ほどの場所に建設されているのは、「UN17 ビレッジ」と名付けられた集合住宅です。気候変動への対策や海の豊かさを守るなど、国連が定めている「SDGs」の17の目標すべてを達成させる世界初の建物をうたっています。
例えば、国連の目標2番に該当する「飢餓をゼロに」に貢献するため、屋上で野菜を育てる計画です。住人であれば、誰でも食べることができるといいます。
また、7番の目標にある「クリーンなエネルギーの使用」を体現するため、この施設は100%再生可能エネルギーでまかなわれる予定です。
さらに、床にも秘密があるといいます。
建築家 カロリーネ・スチュワートさん
「この床も環境にいい取り組みです。デンマークで廃棄されたボトルやビンを砕き、再利用しています」
UN17ビレッジの標準的な1LDKの部屋は、環境への配慮もありながら、家賃はこの地域の相場と同じ約20万円です。共有スペースや住人同士のイベントなどコミュニティーも重視されており、人と地球どちらにも優しい空間を実現しています。
完成は来年10月の予定です。近年、家賃や広さだけでなく、環境に配慮した住宅へのニーズが高まっているといいます。
入居予定者
「ここには多くの可能性がある。1年後・2年後・5年後、どのような姿になるのか。環境とコミュニティー、どちらにも惹かれ入居を決めました」
人にも地球にも優しい街づくり。日本の未来のヒントになるかもしれません。