【復帰】左足を骨折… トップダンサーを襲った試練 "復帰舞台"までの10ヶ月間『every.特集』
国内最高峰・新国立劇場バレエ団の木村優里さん・28歳は、日本のトップダンサーのひとり。20歳でプロデビューすると、技術や表現力が高く評価され多くの演目で主役を務めてきた。27歳のときに、ダンサーとして最高の階級「プリンシパル」に昇格。
ところがその後、去年1月。公演中に転倒するアクシデントで、左足の外側を骨折する大ケガを負った。全治まで少なくとも数か月かかることになり、歩くことすらできなくなった木村さん。しかしこの日々が、自分を見つめ直すきっかけとなった。
「ケガをする前あたりから自分の体に対して責めていて…もっとこうではないとダメ、何でできないんだろうと」
3年前の練習では、自身の動きに時折、首をかしげる場面も。より完璧な演技を目指して、ストイックな練習を重ねてきたという。
ケガから4か月後。左足をかばう生活でずれた体の重心を整えようと懸命のリハビリ。自分の体と向き合ううちに芽生えたのは、“感謝”の気持ちだった。
「自分の足など体にかける言葉が否定的な言葉ではなく、感謝の言葉が出てきた」
必ず、再び舞台に立つと決意した木村さんはその後、トレーニングを開始。4か月後の舞台「ドン・キホーテ」に、主役として復帰することが決まっていた。
しかし、大きなジャンプや難しい技術が求められる踊りが約3時間も続くため、女性ダンサーはあまり行わないという本格的な筋力トレーニングを取り入れた。
復帰舞台での最大の見せ場は、彼女の魅力のひとつである「ターン」。ケガをした左足を軸に、32回連続で回る。そのため、フィギュアスケート選手も使っているという特別な器具で、衰えてしまった左足全体の筋肉を鍛えた。
舞台まで1か月。この日は、芸術監督の吉田都さんの前で稽古が行われた。ところが、トレーニングを積み重ねたターンでは、左足を無意識にかばうせいか体が右に傾いてしまう。男性が女性を持ち上げる「リフト」でも、タイミングがうまく合わず…。
それでも、以前みせていたストイックなだけの姿とは違い、笑顔が増えた。自分の体に、感謝の気持ちを持つ。すると笑顔があふれ、周りも明るくさせた。
木村さんをデビュー当時から指導してきた、元トップダンサーの湯川麻美子さんは「舞台に立てる喜びを今までよりも強く感じて、精神的にもより強くなって帰ってきたんじゃないか」と話す。
そして、2023年10月。大ケガを乗り越え、10か月ぶりに復帰を果たした木村さん。演目は「ドン・キホーテ」。スペインの港町を舞台に木村さん演じるヒロインと青年との恋の場面がコミカルに描かれる。
3時間にわたる舞台で、ケガをした左足を軸にして32回連続のターンに挑戦。そして復帰した舞台の上で、新たに芽生えた心境とは…
※詳しくは動画をご覧ください。(2024年1月17日放送「news every.」より)