来年度から町内給食無償化 TSMC進出の菊陽町長「増収分を子育て支援へ」
昨年度までに熊本県内では14の自治体が小中学校の給食費を無償化しています(県教委調べ・昨年度まで)。そんな中、菊陽町でも来年度から無償化することが分かりました。背景には、菊陽町ならではの理由がありました。
菊陽町の菊陽西小学校。この日の給食には、牛乳に食パン、野菜のスープ煮など地元の食材を使ったメニューが並びました。町では、物価の上昇に伴い、2022年度から公立の小中学校の給食費の一部を補助。子育て世代の負担を軽減しようと、段階的に補助額を引き上げています。
今年度は、小学校の給食費、月額4800円のうち半額以上の2500円を補助。保護者の負担は2300円となっています。中学校も月額5600円のうち、2600円を補助しています。
これが、来年度からは小中学校ともに全額、町が補助。つまり保護者の負担は“ゼロ”になることが町への取材で分かりました。
■保護者(女性)
「ありがたいです。家計の負担も減って感謝しています」
■保護者(男性)
「単純にありがたい。全国一律に広まってほしい。無償化になって、他の支出にしわ寄せがいったり、さらに物価高騰した時に給食の質が低下しないようにしてくれれば」
なぜ、給食費の無償化が可能となったのでしょうか。吉本孝寿町長に直撃取材しました。
■菊陽町 吉本孝寿町長
「私の政策、選挙の際の政策でもありましたけれども、TSMCの子会社のJASMが開所して来年度から税収が見込めるということです。それが非常に大きな要因だったと思います」
背景にあったのは、台湾の大手半導体メーカー、“TSMCの進出”でした。町は、TSMCや半導体関連企業の進出により、法人住民税などが大幅に増えると想定。増えた税収を8つの小中学校に通う児童・生徒約4500人分の年間の給食費の約3億円に充てようと考えたのです。
“手厚い子育て支援”には、子どもたちが大人になった時にも町に残ってほしいという願いが込められています。
■菊陽町 吉本孝寿町長
「子どもたちに私たちは期待をしているということもメッセージとして伝えたい。子どもたちがいかに菊陽町で育って、菊陽町で学んで、そしてこの菊陽町で働く場所をつくれるのかというのが、菊陽町の今後の課題でもあるし、この政策に取り組んでいくというのが非常に重要だと思います」
【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
学校給食費の無償化について全国PTA連絡協議会の長谷川浩章さんに話を聞きました。メリットとしては、貧困世帯の経済的負担の軽減、給食費滞納の解消などがあげられます。一方、課題としては自治体の財政負担の増大、保護者の食材への意識低下などがあるそうです。その上で、改めて熊本県内の状況をみてみます。
(平井友莉キャスター)
無償としているのは7つの町と6つの村、市では唯一、宇城市が去年8月から無償化にしています。人口が多いトップ3、熊本市や八代市、天草市は導入していませんね。
(緒方キャスター)
熊本市は1日6万5000食を提供していますから、無償化に踏み切るのはそう簡単ではないようです。ただ熊本市は、食材費の高騰に伴う学校給食費の上昇分を国の臨時交付金を活用して市が負担しています。小学校では1食あたり35円、中学校では1食あたり43円です。
(平井キャスター)
人口が多い自治体でも、できる限りの手を打っている状況なんですね。
(緒方キャスター)
政府は、異次元の少子化対策の一つに学校給食費の無償化の実現を掲げています。地域の格差が広がらないよう、今後の行方が注目されます。