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急浮上“人づくり解散”…選挙戦の争点は?

2017年9月19日 18:39
急浮上“人づくり解散”…選挙戦の争点は?

 突然、浮上した衆議院の“解散”に揺れる永田町。総選挙で国民に何を問うのか―。その“争点”について考える。

――解散の大義を後付けで持ってくること自体が、私は安倍首相が国民と選挙をばかにしていると思う。(民進党・山井国対委員長代行)

 安倍首相は今回の“解散”について「人づくり解散」と位置づけているが、その大義を巡り野党は批判を強めている。

■「人づくり」とは?
 安倍政権は人材育成に力を入れる「人づくり革命」というものを看板政策に掲げていて、先月の内閣改造では「人づくり革命担当相」も新設され、茂木経済再生担当相が兼務している。

 幼児教育の無償化など、子どもからお年寄りまで教育を受ける機会を整えて生産性の向上を図ろうという政策だ。ただ、具体的な検討を進める会議は今月11日に始まったばかりで、議論はまだまだこれから。そんな中で、安倍首相はこの「人づくり革命」で進めようとしていることを争点の柱に掲げ、その財源について国民に訴えようとしているわけだ。

 この会議ではまだ財源についての議論は始まっていないが、選挙の公約には再来年10月に10%まで引き上げられる消費税の増税分で、元々は国の借金返済に充てる予定だった分の一部を幼児教育の無償化などに回すことが盛り込まれるとみられている。

■国の借金は大丈夫?
 今の国の借金は1093兆円、国民1人当たりで計算すると862万円の借金を背負っていることになる。この数字、先進国の中では“断トツ”だ。幼児教育の無償化など子育て支援は重要な政策だが、これだけの借金の返済を後回しにすることは、結局、子どもたちの世代の将来にシワ寄せがいくことになる。

■野党の反応は?
 実は、財源を巡る方針は民進党の前原代表が代表選で掲げていたものとほぼ同じ。前原代表は消費税を増税した分、幼児教育や保育の無償化に充てていきたいと話していた。

――サービスを向上させていこうと思ったら財源がいるんだということを真剣に国民に対して訴えかけていくと。(前原代表・先月22日の民進党代表選討論会)

 こうした社会保障・子育て政策は民進党が力を入れてきた分野で、民主党時代からずっと訴えてきたことだ。結果として似たような政策を打ち出されて民進党は反発している。

――ここ数日で考えたことなんでしょ?そんな軽い話じゃないんですよ。(山井国対委員長代行)

――社会保障教育を充実させるという考え方を臆面もなく選挙の争点にしてくるということで、まさに“争点消し”をやろうとしてきます。(前原代表)

■同じような政策が狙い?
 日本大学法学部の岩井奉信教授は、「民進党の主張に擦り寄ることで、争点をなくそうとしているのではないか」と指摘している。安倍政権としては看板政策の「人づくり革命」を進めるため打ち出しているわけだが、結果として民進党の政策とも似ていて民進党としては批判しづらくなる。それを狙っているんじゃないか、という指摘だ。

■何を問う?はっきりと。
 選挙は人気やイメージではなく政策本位であるべきだ。それには有権者が与野党の政策を見比べてじっくり判断する必要があるが、今回は急な解散で短い選挙戦になりそうだ。スローガンが先行して具体的に何を問いたいのかわからないまま終わってしまうことのないよう安倍首相は問いたい政策をしっかり説明し、“争点隠し”と言われない選挙戦にしてもらいたいと思う。