枝野氏が“新党結成”なぜ選挙直前に?
総選挙に向け、希望の党への民進党の“合流”が難航している。公示まで1週間あまりというタイミングで、また新たな党が誕生するかもしれない。
――排除されないということはございませんで、排除いたします。(先月29日、希望の党・小池代表)
――仲間の多くの方々があの時の話と違うではないかと。(今月1日、民進党・枝野代表代行)
公認が得られるか不透明な中、民進党の枝野代表代行が自ら新党を立ち上げる方針を固めたことが分かった。
■なぜ今、新党の結成が必要?
先週、民進党は希望の党に合流することを決めた。この時、前原代表は希望の党から民進党全員の公認を得ることを目指すとしていた。
ところが、いざ調整を始めてみると、希望の党の小池代表は「全員公認するつもりはさらさらない」などと発言。さらに、公認の条件としては、安全保障関連法を認めること、そして、憲法改正を支持することなどをあげている。
民進党の中でも「リベラル系」と呼ばれる議員、つまり、安保関連法に反対し、憲法の改正に慎重な立場をとっている議員がいるため、こうした議員は公認を受けられないことになり、民進党は分裂状態に陥っている。
そこで、リベラル系の代表格の枝野氏が、希望の党でも民進党でもない、新たな受け皿として新党を立ち上げることを決めた。名前は「立憲民主党」と名付ける。
■無所属出馬ではなく、なぜ新党を立ち上げる?
政党の候補者か無所属かで選挙の戦い方は大きく変わってくる。無所属で出馬する最大のデメリットは、「比例代表選挙に重複立候補できない」という点。政党の候補者は、小選挙区で落選しても比例代表選挙で復活当選する可能性があるが、無所属だとそれはなく当選のチャンスが減ってしまう。
また、無所属だと政見放送に出ることもできない他、ビラの枚数にも違いがある。無所属だと「2種類以内で7万枚」が上限だが、政党候補だと「種類に制限なく11万枚」まで作れる。さらに、選挙カーは無所属だと1台だけだが、政党候補になると都道府県内の候補者3人につき、もう1台動かせる。
■民進党の議員だった人のうち、どのくらいが枝野氏の新党に加わりそう?
希望の党から公認が得られないとされている中には、首相経験者や党の代表を務めた民進党の大物が含まれている。その中で枝野氏は新党を結成すると表明し、赤松元衆院副議長、辻元幹事長代行もその新党に参加する見通し。
一方、枝野氏は岡田元代表や野田前首相にも参加を働きかけたが、2人は2日、無所属で出ると明言した。2人はリベラルというよりも保守的な政治スタンスのため、新党には加わらない判断をした。
■その他の人たちは?
菅元首相はまだ態度を表明していないが、無所属になるのではとみられていて、安住元財務相は2日、地元で会見して無所属で出馬すると表明した。
このように民進党は希望の党に行く人、枝野氏が作る新党に行く人、そして、無所属の人に分かれて戦うことになる。
■こうした動きを他の党はどう見ている?
与党側は批判を強めている。安倍首相は2日午後、都内で公明党の山口代表とそろって街頭演説を行い、「残念ながら選挙で当選するためにどういう枠組みを作るか、その話ばかりだ」と批判した。山口代表も「相手がよく見えない。民進党も希望の党も混乱している。こうした政党に日本を委ねるわけにはいかない」などと訴えた。
一方、共産党の小池書記局長は枝野氏らの新党について、「これまでの野党連携を発展させるならば、大いに歓迎したいし、大いに連携したい」と話している。
選挙直前に最大野党が分裂するという異例の事態になっているため、有権者は動きをしっかり理解して、見ていかないといけない。