ナニを重視?有権者の投票行動を徹底分析
与党が大勝した今回の選挙。公示前に急きょ立ち上がった立憲民主党が大躍進した一方、“小池旋風”を狙った希望の党は結党メンバーの1人が落選する結果となった。
全国の有権者を対象に日本テレビとNNNの出口調査の結果をもとに有権者が何を重視してどの政党に入れたのかなど、投票行動を分析する。
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■有権者はどんな政策を重視?
どんな政策を重視して投票したのかを年代別に見ていく。18歳と19歳の人が最も重視したのは「景気・雇用対策」で、20代から50代の人も同じ。一方で、60代以上の人が最も重視したのは「年金など社会保障」だった。
そして「子育て支援や教育無償化」は、18歳・19歳と20代から50代でも第2位となっている。ところが60代以上になると、第8位ととても低かった。
こうして見ると、政治に求めるものが年代によって違うことがよくわかる。
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■“民進党支持者”はどこへ?
今回の選挙で、民進党は希望の党と立憲民主党と無所属に分裂したが、その民進党の支持者が比例代表でどの党に入れたのかを見てみる。最も多かったのは、立憲民主党で希望の党に倍以上の差をつけた。民進党出身の候補者はどの党から立候補したかで明暗がわかれた。
今回、立憲民主党は、こうした民進党支持者とは別に無党派層からも幅広い支持を得て、公示前の3倍を超える55議席を獲得し、大躍進となった。
一方の希望の党はというと、小池代表のお膝元である東京ブロックでは特に厳しかった。もともと民進党を支持していた人のうち、立憲民主党に投票したのが66.2%だったのに対し、希望の党に投票したのは、わずか20.6%で、その差は3倍だった。
こうした中で、東京都議選での勝利にも貢献した小池代表の側近・若狭勝前議員は今回、小選挙区で破れた上、比例でも復活できなかった。
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■憲法9条に“自衛隊を明記”
今回、与党は3分の2を超える議席を獲得した。これは、国民の多くが憲法改正に賛成しているということになるのか。
憲法9条に自衛隊を明記するとした憲法改正案に「賛成」と答えた人は44.9%、「反対」と答えた人は45.1%と拮抗(きっこう)していて、決して賛成が多いというわけではない。
これを年代ごとに見てみると、20代以下から40代は賛成が反対を上回っていて、50代以降からは逆転して反対の方が多い。背景には、年代が低いほど、災害で活躍する自衛隊にマイナスのイメージがなく憲法改正にも抵抗が少ないのに対して、50代以降になると親の世代に戦争体験があり、より慎重だといえる。
憲法を改正して自衛隊を明記することに「賛成」と答えた人が比例でどの政党に投票したのか見てみると、最も多かったのは自民で56.6%、次が希望で13.7%だった。
公約で希望は、憲法改正に賛成とも反対とも立場を示さず「9条を含め改正論議を進める」としていたのだが、希望は、改憲勢力としての期待が自民に次いであったということになる。
■憲法改正への動きは?
自民党が圧勝してこれだけ改憲勢力を獲得したことは憲法改正に向けた追い風になったことは間違いないが、安倍首相はすぐに憲法改正の発議を目指すことには慎重。
23日午後の会見でも安倍首相は「スケジュールありきではない」と言っている。実際、すぐ改正につながるかというとそう簡単ではなくて、憲法改正に慎重な公明党との調整も必要で、具体的にどう変えるかとなると、各党の合意が得られるかは不透明。
そもそも憲法改正を発議するには、衆議院と参議院の両院で3分の2以上の賛成を得た後、この発議への「国民投票」で有効票の過半数の賛成が必要。つまり、憲法を改正するかどうかは最終的には私たちが決めることになる。
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憲法の問題もしかり、その他の政策も含めて今回、自分が投じた一票がどう国会で議論されて政策に反映されていくのかしっかりと見ていくことが重要だといえる。