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【解説】愛媛・高知で震度6弱…「南海トラフ巨大地震」との関係は? 日本地震予知学会会長に聞く

2024年4月18日 20:53
【解説】愛媛・高知で震度6弱…「南海トラフ巨大地震」との関係は? 日本地震予知学会会長に聞く

17日夜、愛媛・高知などで最大震度6弱の激しい地震がありました。今回の地震は「南海トラフ巨大地震」と関係があるのでしょうか。日本地震予知学会会長の長尾年恭教授に話を聞きました。

■56年ぶりの大きな地震

鈴江奈々キャスター
「17日夜、四国地方で最大震度6弱の激しい揺れを観測する地震がありました。この地震について、日本地震予知学会の会長で、東海大学と静岡県立大学の客員教授、長尾年恭さんと話を進めていきます」
「まずは、これまでにわかっていることを整理します。気象庁によると、17日午後11時14分ごろ、豊後水道を震源とするマグニチュード6.6の地震がありました。愛媛県愛南町、そして高知県宿毛市で震度6弱を観測したほか、愛媛県や大分県で震度5強から5弱の揺れを観測しています。この地震による津波はありませんでした」
「被害状況も明らかになってきています。愛媛県では、松山市や宇和島市などであわせて7人が軽傷を負いました。高知県では、宿毛市で1人が過呼吸を訴え救急搬送されたということです。また、大分県では2人が軽いケガをしたということです。長尾さん、今回の地震が起きた豊後水道というのは、よく地震が起きる場所なのでしょうか?」

日本地震予知学会会長 東海大学・静岡県立大学客員教授 長尾年恭氏
「いえ、ここでこういう規模の地震が起きることは極めて珍しい、そういう場所です」

鈴江キャスター
「最近、こういった場所で地震というのはまったく起きていなかったんでしょうか?」

長尾会長
「体に感じない小さな地震は起きるんですけれども、この規模の地震は1968年が最後で、それから56年ぶりという、そういう意味でも珍しい地震です」

鈴江キャスター
「そうすると経験していなかった人も多かったので、本当にびっくりした大きな地震だったということですよね」

長尾会長
「その通りだと思います」

■「南海トラフ巨大地震」との関係は? 気象庁「メカニズムが異なる」

鈴江キャスター
「今回の地震で『南海トラフ巨大地震』が起きるおそれを感じた人もいるかもしれません。そもそも、『南海トラフ巨大地震』がどういうものなのか、あらためてみていきます。想定震源域は東海地方から九州地方にかけてのエリアです。この領域では、前回の地震から80年近く経過していて、今後30年以内の地震の発生確率は70%~80%とされています。最大規模の地震が起きた場合には、太平洋沿岸に大津波が押し寄せ名古屋や大阪などの大都市でも激しい揺れとなる見込みです」
「今回の地震が起きた場所をみてみると、『南海トラフ巨大地震』の想定震源域の中に入っていますが、気象庁は『南海トラフ巨大地震』とはメカニズムが異なること、そして地震の規模が小さいことから、『南海トラフ巨大地震』の発生の可能性が高まったとは考えていないとしています。まずこのメカニズムが異なっているというのはどういうことでしょうか?」

長尾会長
「『南海トラフ巨大地震』は海側のプレートが(陸側のプレートに)押し込んで、『逆断層』という海側と陸側のプレートとの境界で発生します。それに対して17日夜の地震というのは、海側のプレートの内部で破壊が起きました。『南海トラフ巨大地震』は『逆断層』、17日夜の地震は『正断層』という、メカニズムが違うというのはそういうことをいっています」

鈴江キャスター
「『南海トラフ巨大地震』はずっとエネルギーがたまっていて、陸側のプレート(の海側のプレートとの接地面)がグンと跳ね上がってしまって、海側のプレートとの境界で起きる地震ということですね?」

長尾会長
「跳ね上がることによって海水が持ち上げられて、巨大な津波が発生するということです」

鈴江キャスター
「ただ、今回は海側のプレートの中が壊れた地震だったからメカニズムが異なっていたということですね」

■今回の地震 「南海トラフ巨大地震」との関連を調べる基準には届かず

鈴江キャスター
「また、気象庁によると、今回の地震の規模は小さいということだったんですが、地震の規模をみると、速報値はマグニチュード6.4、その後、修正されてマグニチュード6.6と0.2大きくなりました。これでも小さい規模といえるのでしょうか?」

長尾会長
「実際には、今気象庁が考えている、臨時情報を出すか出さないか検討するための委員会を立ち上げるには小さいという意味で、この地震そのものは被害も出ていますし、かなりの規模の地震と考えるべきです」

鈴江キャスター
「『南海トラフ巨大地震』の基準というのは、マグニチュード6.8以上の場合は、関連を調べる基準ということでしょうか?」

長尾会長
「その通りです」

鈴江キャスター
「マグニチュードが6.4から6.6に上がりましたが、この0.2という違いというのは、どれくらいの大きさなんでしょうか?」

長尾会長
「マグニチュードというのは『対数スケール』というログスケールというもので、0.2違うと2倍エネルギーが大きくなります。6.6と6.8でも2倍、そういう関係です」

鈴江キャスター
「なるほど、マグニチュード6.8と比べると、それほど大きいものではなかったという評価なんですね」

■最終到達点「南海トラフ巨大地震」へ着実に階段を上っている

鈴江キャスター
「『南海トラフ巨大地震』の発生の可能性が高まったとは考えていないと気象庁はしていますが、ただ『南海トラフ巨大地震』のリスクというのは今もあるわけですよね?」

長尾会長
「結局、地球は生きているので、こういうある程度小さな地震がたくさん起きることによって、最終到達点という『南海トラフ巨大地震』へ着実に階段を上っているというふうにとらえていただきたいと思います」

桐谷美玲キャスター
「今年に入ってから能登、台湾と大きな地震が続いていますが、それぞれの地震に関連性は?」

長尾会長
「能登の地震と台湾の地震、あるいは17日夜の地震と、個々の地震には関係がないです。これは『西太平洋』という日本列島周辺でだんだん…この地点の最終ゴールという言い方はおかしいですけれども、『南海トラフ巨大地震』の階段を上っていっていると、そういう形でいろいろな場所でエネルギーを小出しにしている。実際に『南海トラフ巨大地震』は17日夜の地震の1000倍の規模のエネルギーが出る地震ですから、桁違いの地震の準備過程の1つをみているということです」

■巨大地震を予知できない理由は?

鈴江キャスター
「『南海トラフ巨大地震』の前触れであったり臨時情報とかそういったものがなくても突然、起きることもリスクとしてはありますし、予知も地震というものはできないということですよね?」

長尾会長
「できないというか、できないんですけれども、なんで臨時情報が出るのかというと、地下で起きている異常は非常によくわかるんです。ただ問題は、近代的な観測網ができてからこれが初めてのケースなので、どこまでいったら本当に地震が起きるのかを正確にいうことができない。ただし、異常はわかるのでそれをちゃんと伝えて、それに対する情報リテラシーをみなさんにもってもらうのが、1つ被害を減らす大きな方法じゃないかと思います」

鈴江キャスター
「いつ起きてもおかしくない、そういった地震には常に備えていただきたいと思いますが、今後、地震が起きた地域で注意すべきことをあらためてお願いします」

長尾会長
「やはり、1度大きく揺すられていますので、雨ですとかそれによる土砂崩れ、そういうものは十分、注意してもらわないといけません。そして、最近多いのはライフラインの老朽化です。特に水道などのトラブルが大きくて、これは日本がだんだん経済的に悪くなってきて、更新が非常に遅れています」

鈴江キャスター
「そういった水の備えも大事ということですね」

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