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両陛下、平和と民主主義への思い鮮明に

2014年1月1日 5:06

 天皇陛下は去年、80歳(傘寿)の誕生日を迎えられた。今年は5月と10月に傘寿を記念して皇居・宮殿の内部が一般に初公開されるなど、天皇陛下の傘寿を祝う年となる。皇后さまも、10月に傘寿を迎えられる。4月には、両陛下は結婚から55年の節目も迎えられる。

 新年にあたり、天皇陛下は「国民皆が苦しい荷を少しでも分かつ気持ちを失わず、助け合い、励まし合っていくとともに、世界の人々ともに相携え、平和を求め、良き未来を築くために力を尽くしていくよう願っています」と感想を寄せられた。

 常に、困難に直面した国民に心を寄せ、お言葉を述べてきた天皇陛下が、年頭に「世界平和への願い」を改めて述べられているのは注目すべきことだ。両陛下はこうした平和を願う気持ちを、去年、様々な機会のお言葉の中でより鮮明にしてきた。

 天皇陛下は去年11月~12月、53年ぶりに皇后さまとともにインドを公式訪問された。歓迎晩さん会では、53年前にインド独立直後の指導者たちと会った思い出に触れ、「民主主義、国際主義、さらには非暴力を旨としたガンジーの思想の流れをくむ平和主義を理想とする国造りへの高い志に触れたことは、今日もなお私どもの中に強い印象として刻まれています」と述べられている。

 また、天皇陛下は先月の誕生日会見で80年の人生を振り返り、最も印象に残っていることとして「先の戦争」を挙げ、「前途に様々な夢を持って生きていた多くの人々が、若くして命を失ったことを思うと本当に痛ましい限りです」と振り返られた。その上で「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました」と語り、戦災からの復興の礎を築いた先人たちに深い感謝の気持ちを表された。

 これらのお言葉からは、天皇陛下が心から平和を願うとともに、さらに国の繁栄に不可分なものとして民主主義や国際主義を大切にされていることがうかがえる。

 また、誕生日会見の冒頭で日本国憲法に言及された天皇陛下は、去年、オリンピック招致などで議論となった「皇室の活動と政治の関わり」についての質問にも、日本国憲法を引用して話されている。天皇陛下は、日本国憲法の「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」という条項を挙げ、憲法を順守し、「天皇としての活動を律している」と答えられた。その上で、「国政に関与するかどうか判断の難しい場合もある」とし、「できる限り、客観的にまた法律的に、考えられる」立場にある宮内庁長官らの意見を聴くことにしていると述べられた。

 一方、皇后さまも去年10月の誕生日の際に、印象に残ったこととして、「5月の憲法記念日をはさみ、今年は憲法をめぐり、例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます。主に新聞紙上でこうした論議に触れながら、かつて、(東京・)あきる野市の五日市を訪れた時、郷土館で見せて頂いた『五日市憲法草案』のことをしきりに思い出しておりました」と、憲法に触れられている。

 皇后さまは、明治時代の市井の人々が作ったこの憲法私案に「基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務、法の下の平等、さらに言論の自由、信教の自由など」の理念が盛り込まれていることに触れ、当時の人々の政治参加への強い意欲などに「深い感銘を覚えた」と思いをつづられた。

 このように、両陛下が憲法について立て続けに思いを述べられるのは極めて異例。平和と民主主義への強い思いをますます鮮明にされる両陛下は、ともに傘寿となる今年も平和を祈り、国民の幸せを願い続けられることだろう。