「首都防災」都知事候補の主張は?

今週は東京都知事選の有力な3候補の政策の中身をテーマ別に詳しく伝える。2回目は「防災対策」。国は、最大震度7の首都直下地震が30年以内に70%の確率で起きるとしている。今回は「耐震化・不燃化」と「帰宅困難者」の観点から候補者の主張を考える。
■地震による火災からどう守る?
国によると、首都直下地震では、都内で最大22万棟が出火し、火災による死者だけで、8400人に及ぶとされている。その理由の1つには、都心を囲うように、広がっている木造住宅密集地域の問題だ。
これは、震災時に、延焼被害のおそれがある古い木造住宅が密集している地域のことだが、国は、この木造住宅密集地域が耐震化・不燃化できれば、火災による死者は20分の1に減らすことができるとしている。この対策について、各候補者は次のような意欲を見せている。
増田寛也氏(64)
「感震ブレーカーなど、もっと普及すれば火災の防御になる」
鳥越俊太郎氏(76)
「防災は耐震化率をもっと上げて100%にしていく」
小池百合子氏(64)
「耐震化、不燃化、2020年までに加速していきたい」
こうしてみると、3候補とも耐震化を進めるということでは同じだ。どうしてこれまで耐震化などが進んでこなかったのだろうか。
■資金の問題は?
東京都の被害想定などを都の防災会議で作成した中林一樹さんは、「木造住宅密集地域には、高齢者が多く住んでいて、その高齢者にとって建て替えの資金などは負担になるため、ためらう人が多い」と指摘している。
つまり、資金の問題をクリアしないと、どれだけ目標を掲げても耐震化を進めるのは難しいということになる。この点について、増田氏は「財政支援」、鳥越氏は「助成を行う」などとしているが、具体的に、どの程度の費用をどこから出すのか、明らかにしていない。また、小池氏は、公約や日本テレビが行ったアンケートでは、この件について言及していない。
■帰宅困難者対策は?
もう1つが、震災時に発生する「帰宅困難者対策」だ。東日本大震災のときも、大勢の帰宅困難者が出た。東京都は、首都直下地震の帰宅困難者は、約517万人にのぼるとしている。このうち、路上などで行き場を失う人たちが92万人出るとしていて、この人たちを受け入れる一時滞在施設は、今年1月時点で、必要な数の3割にも届いていない。この問題について、候補者は、何と主張しているのだろうか。
増田氏
「民間事業者などの協力を得る」「他県やその自治体との連携強化を図る」
鳥越氏
「民間企業にも協力してもらい、発災後3日分の物資を備蓄する」
小池氏
「2020年度までに一時滞在施設を100%確保する」
■そのほかの防災対策は?
増田氏
「他の自治体との連携計画を市区町村ごとに策定。日頃から合同訓練を行う」
鳥越氏
「物流拠点で民間事業者のノウハウを活用。支援物資の情報などを、ITを活用して実施」
小池氏
「災害時に救助の妨げとなる電柱ゼロ化を加速。災害時にも使える乳児用の液体ミルクの普及」
3人以外の候補者は―
山口敏夫氏(75歳)
「高度成長期に整備されたインフラの総点検。臨海部の津波対策を重点的に取り組む」
上杉隆氏(48歳)
「全660万世帯に防災グッズを配布。老朽化した住宅や、木造住宅密集地域の都市整備をスタートさせる」
中川暢三氏(60歳)
「病院や老人施設などの耐震性強化。都民を避難所などに円滑に誘導でき、収容された市民がどこの誰か、把握するのに役立つアプリを開発する」
都知事選にはこの他、15人が立候補している。それぞれどんな防災計画を打ち出しているのか、政策の違いを知った上で、投票したい。
高橋尚吾氏(32)
谷山雄二朗氏(43)
桜井誠氏(44)
マック赤坂氏(67)
山中雅明氏(52)
後藤輝樹氏(33)
岸本雅吉氏(63)
七海ひろこ氏(31)
関口安弘氏(64)
立花孝志氏(48)
宮崎正弘氏(61)
今尾貞夫氏(76)
望月義彦氏(51)
武井直子氏(51)
内藤久遠氏(59)