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【AI】進化の先に見えるものとは?

2017年5月30日 16:57
【AI】進化の先に見えるものとは?

 先週、中国で行われた囲碁の世界最強棋士・柯潔九段と人工知能(AI)との世紀の一戦。結果はAIが圧勝した。囲碁で人間を超えたAI。そこから見えてくることとは。


■世紀の一戦

 柯潔九段は19歳という若さでいくつもの国際タイトルを獲得しており、非公式ながら世界ランク1位で“世界最強”とされている。

 対する囲碁AI「アルファ碁」はグーグルが開発したAIで、去年、世界トップクラスの韓国人棋士を撃破して衝撃が広がった。

 今回、最後の砦(とりで)として柯潔九段が挑んだが、3番勝負の対局で3連敗という結果に終わった。柯潔九段は第2局で一時、接戦に持ち込めたが、チャンスの場面で緊張し、ミスをしてしまったということで、やはり感情がないAIの方が有利な部分もある。


■人間とAIの対決 他のゲームは?

 1対1で戦う主なゲームを見ると、チェスは1997年に当時の世界チャンピオンがIBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」に敗れている。将棋は2013年の電王戦で、プロ棋士が将棋ソフトに初めて敗北した。

 しかし、囲碁はチェスや将棋と比べ、マス目の数が圧倒的に多いため、局面の数は10の360乗ある。10の12乗でも1兆なので、360乗というと無限に近い数だ。それだけに、コンピューターでも計算が追いつかないほど展開が複雑なため、「AIが人間に勝つには、あと10年はかかる」とも言われていた。


■急に強くなった秘密「深層学習」

 以前の囲碁AIは次に打つ一手を考える際、ランダムに選んだ手の勝率を計算し、最も高いものを選んでいた。しかし、全ての可能性を計算することはできないので、限界があった。

 そこで導入されたのが「深層学習=ディープラーニング」という最新技術だ。膨大な過去の対局データからいい手を学び、さらにはAI同士で対局を繰り返して自ら学習することで、人間の直感のような能力を身につける。

 これにより、囲碁の局面を認識した上で最適な一手を判断できるようになるという。

 電気通信大学の伊藤毅志助教によると、AIが「認識」や「判断」といったことができるようになると、例えば「車の自動運転」や、「レントゲン写真から病気を見つけ出す」といった医療分野など様々な分野への応用が可能だとして、研究が進められている。

 実際、「アルファ碁」を開発したグーグル子会社「ディープマインド」のデミス・ハサビスCEOは、今回の対局後、「アルファ碁」を引退させ、今後はその人工知能をエネルギー技術や医療などに応用していくとしている。


■人間の可能性

 囲碁のトップ棋士である井山裕太六冠は、AIが人間を超えたとしても、「人間同士の対局は見ていて、ミスを含めて心が揺さぶられる。今後もその価値が下がるとは思いません」とコメントしている。

 今回の対局を通じて、コンピューターと渡り合える人間の可能性に改めて気づかされた。今後、AIが得意な分野ではそれをうまく活用し、豊かな社会につなげていきたいものだ。