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受給資格“10年に短縮”年金どう変わる?

2017年8月1日 19:29
受給資格“10年に短縮”年金どう変わる?

 8月1日から年金制度が変わった。年金を受け取るのに必要な加入期間がこれまでの25年から10年に短縮され、これで、新たに68万人が年金を受け取れるようになる。年金の何が変わるのかをまとめた。


■68万人が新たな受給者に

 具体的に年金制度はどう変わるのか。まず、年金を受け取るためには、若い時から年金保険料を払う必要がある。これまでは、少なくとも25年払わないと1円ももらえなかったが、10年以上払っていればもらえることになった。

 つまり、主に、10年から25年に満たない期間分の保険料を払っている人たち、約68万人が新たに年金をもらえるようになる。具体的には、年金保険料を10年だけ納めた場合、約1万6000円もらえる。一方で、成人してから60歳までの40年間払い続けた場合には、約6万5000円もらえる。保険料を支払った期間が1年でも長ければ長いほど、もらえる額も増える仕組みだ。


■対象者には「黄色の封筒」が届いている

 もちろん金額は10年払えば、それ以上払わなくていいということにはならない。厚生労働省の担当者は「10年払えばいいとは思わずに、老後、より安定した生活を送るためにもできるだけ長く保険料を納めてもらいたい」と話す。

 自分がこの制度の対象になっているのかどうかはどうやって知ることができるのか。対象者には、すでに黄色の封筒が日本年金機構から送られている。この中には、「年金請求書」という書類が入っているので、氏名や口座番号などを記入したうえで、最寄りの年金事務所に行き、手続きをする。手続きに問題がなければ、10月に支給される9月分の年金から受け取れるようになる。


■制度が変わった背景とは

 塩崎厚生労働相は去年11月、その狙いについて参院本会議でこう話していた。

 「無年金者の問題は、かねてより年金制度の課題の1つとして指摘をされてきましたが、無年金者をできるだけ救済すると同時に、納付した年金保険料を極力給付に結びつける」

 つまり、若い頃に、年金保険料を十分納めていなかったために、老後を迎えても、年金をもらえず、生活保護に頼らざるを得ない人を減らすという狙いがある。


■昨年度の納付率は65%

 国民年金の保険料を納めている人の割合はどのように変化しているのか。それを示したグラフがある。昔は80%を超えていたものの、非正規雇用の問題や年金制度への不信感が高まる中で年々低下してきた。最近は改善傾向にあるものの、昨年度は65%とまだまだ低い水準にある。

 若い世代の保険料未納も問題となる中で、25年は長いけど10年納めれば満額ではないとしても、少しは年金を受け取れるとなれば、納付率の改善につながることも期待される。


■世代超えた議論を

 今回の法改正により、年金を受給できる人が増え、今後、無年金となる人も減ることが予想されるが、そのために必要な予算は年間650億円にも上る。少子高齢化が進み、財源も限られる中で、年金制度を今後どう維持していくのか、若い世代から高齢者まで、みんなで議論していく必要がある。