コメ不足再来?冷夏の影響「やませ」とは
北海道から関東にかけて、夏らしくない天気が続いている。この涼しさで心配されているのが、私たちの食事に欠かせない「コメ」への影響だ。
■「コメどころ」が「やませ」に…
気象庁がホームページに公表した、ここ20日間平均気温を見ると、北海道、東北の太平洋側が特に平年より低いことがわかる。また、ここ20日間合計の日照時間を見ると、北海道や東北の太平洋側が特に短かったことがわかる。
これは、6~8月ごろに北海道、東北、関東などで吹く北東の風「やませ」が太平洋側から吹いていることが原因だ。
太平洋側の冷たい海流の上を吹いてくるので冷たく湿った風となるが、これが山にぶつかって雲ができることで太陽が遮られ、霧が出たり、曇りや雨の日が続いたりする。
まさに日本の「コメどころ」が「やませ」にさらされてしまっている。
日照時間が不足して気温の低い日が続くと農作物に被害が出るため、「やませ」は昔から「冷害風」「餓死風」と呼ばれ、恐れられているという。
■タイ米輸入した「平成の米騒動」
「やませ」の影響で大きな被害が出たのが1993年。「平成の米騒動」とも呼ばれた深刻なコメ不足の年で、店にはコメを買い求める人の行列ができるほどだった。
この年は記録的な冷夏で、全国のコメの収穫量は前年比で7割ほどにとどまっていた。このため海外からタイ米などを緊急輸入する事態にもなった。
一方で、1993年の北海道、東北地方の作況指数を見ると、平年を「100」とした場合、青森が「28」、岩手が「30」、宮城が「37」だった。全国的に不作だった中でも、東北の太平洋側が特に収穫量が少なかったことがわかる。
■今年は大丈夫?
「JAみやぎ登米」のコメ収穫へ向けたスケジュールを見ると、8月上旬に稲から穂が出て、いまはまさに中のコメが大きく膨らんでいく時期だという。来月中旬から10月にかけて収穫時期を迎える。
JAみやぎ登米の担当者は「現状、稲の生育に影響は出ていない」としつつも、「今後も天候が悪い状態が続くと、お米が大きくならず細くなってしまい、味や収穫量に影響が出る可能性もある」と話していた。
■心配は「いもち病」
また、JAみやぎ登米の担当者は「一般的には、いもち病というのが一番心配されるところですね。やはり、天候の回復というのが待ち遠しい状態です」と話している。
「いもち病」とは、日が当たらないなどの理由で稲にカビがはえ、稲が枯れてしまう病気だ。このまま悪天候が続くと、こうした病気にかかるリスクも高くなってくるという。
気象庁によると、今後の天候の見通しは「やませ」の原因となっているオホーツク海高気圧がしばらく居座るため、東北地方の太平洋側では週明けにかけて、まだ「やませ」が吹き続ける見通しだ。
生産者にとっては、気が抜けない日が続きそうだ。