全国に1千万人?初期症状ない糖尿病に注意
全国で糖尿病が強く疑われる人が、推計1000万人に上ることが先月、わかった。重大な合併症を引き起こすこともある糖尿病。知っているようで知らない糖尿病の怖さとは? 諏訪中央病院の鎌田實名誉院長が解説する。
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■糖尿病とはどんな病気?三大合併症の危険
全国で糖尿病が強く疑われる人は推計1000万人。これほど多いのは、糖尿病への理解が進んでいないからだという人もいる。糖尿病の“怖さ”を知ることが予防への第一歩だ。
健康な人は食事をとると、血液中のブドウ糖の濃度、血糖値が上がるが、すい臓から出るインスリンが血糖値を下げる働きをして、時間がたつと元に戻る。糖尿病は、インスリン不足やその作用の低下により、血糖値の高い状態が続く病気だ。その状態が長く続くと、様々な合併症を引き起こすことになる。
例えば、目の病気として網膜症がある。進行すると視力が低下するが、さらに進んでしまうと失明の危険も出てくる。
それから腎症。これは腎臓が持っている体内の老廃物をろ過する機能が低下する病気で、最終的には腎臓の代わりに血液をキレイにする人工透析を行わなければ、生きていくことができない。
また、神経障害を発症すると、手足のしびれや痛みが起こる。次第に感覚がなくなってしまい、ケガをしても気づきにくいため、傷口から細菌が入って壊死(えし)して、足などの切断を余儀なくされる可能性もある。
この3つを糖尿病の三大合併症という。さらには脳卒中や心筋梗塞などを起こすリスクも高くなる。
■合併症を起こす前に食い止める
合併症を引き起こす前に、糖尿病自体の進行を食い止めることが重要だが、問題は、糖尿病の初期段階には自覚症状がほとんどないということ。糖尿病の専門医に聞いた。
東京女子医科大学糖尿病センター内科・馬場園哲也教授「(糖尿病が)ひどくなって、血液の糖分が高くなると、のどが渇くわけですね。そして水をたくさん飲む。尿がたくさん出る。かなりひどくなった段階では症状が出てきますけれども、それより前の時期にはほとんど症状がない」
のどが渇きやすくなるなどしたら、糖尿病の可能性があるが、そのときには、もう進行しているということ。その症状も、それほどひどい症状ではないので、なかなか本格的に治療しようという気持ちにはならないようだ。
25年前から糖尿病を患う田岡敬浩さん(57)「症状というのは、トイレが近いとか、軽いものだったので、深刻には考えてなかったです。もっと進むと(手足の)末端が壊死しちゃって、切断しなきゃならなくなるとかっていう話を聞いて、これは大変なものだなというのは感じました」
糖尿病になると、すぐに指先などが壊死するわけではないが、合併症が起こらないように、早いうちに糖尿病に気づいて対処することが大切。ただ、初期は症状がないということで、自分では気づきにくい。
■糖尿病に注意が必要な人の特徴とは?
では、糖尿病に注意が必要な人の3つの大きな特徴を挙げてみる。
まずは肥満傾向の人。食べ過ぎは血液中のブドウ糖の増加につながる。この状態が続くと、インスリンを作り出す、すい臓に負担がかかり続けて、やがて分泌しにくくなる。そうすると血糖値の高い状態が続くことになる。
次に運動不足の人。運動をするとインスリンの働きが高まり、血糖値が下がりやすくなる。運動をしないと、その効果が期待できない。
そして、家族が糖尿病の人。両親や兄弟などが糖尿病の場合、自分も糖尿病になるリスクが高い。実際、国立がん研究センターが約3万人を10年間、追跡調査した結果、糖尿病歴のある家族がいる人は、いない人と比べて、男性では2倍、女性では2.7倍、糖尿病になりやすいということもわかっている。家族に糖尿病の人がいる場合は女性の方がリスクが高いので、気をつけなければいけない。
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■誰もがかかる危機感を
日本人の多くは糖尿病になりやすい体質だと言われていて、太っていなくても、誰もが糖尿病になるリスクを抱えている。糖尿病には予防する薬はない。食べ過ぎを避けたり、運動不足を解消したりするなど心がけること。そして、健康診断などで異常が見つかったら、早めに対処することも大切だ。