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【解説】避難生活長期化で“命の危険”も…「エコノミークラス症候群」どう予防する? 避難者数3万人超…能登半島地震5日目

2024年1月5日 22:52
【解説】避難生活長期化で“命の危険”も…「エコノミークラス症候群」どう予防する? 避難者数3万人超…能登半島地震5日目

■避難者数3万人超 長引く避難生活…注意点は?

鈴江奈々キャスター
能登半島地震発生から5日で5日目となりました。避難生活を送る上での注意点について、災害時の健康管理に詳しい新潟大学・特任教授の榛沢(はんざわ)和彦医師にお話をうかがいます」

「石川県によりますと、5日午後4時の時点で、3万2000人以上の方が避難生活を送っています」

■避難生活で“体勢”変わらず「エコノミークラス症候群」になる危険性が…

鈴江キャスター
「榛沢医師は2004年の中越地震で診療にあたってこられましたが、いま最も心配されているのが『エコノミークラス症候群』だということです。あらためて、これは、どういった症状なのでしょうか」

榛沢医師
「まず、『エコノミークラス症候群』というのは、足の静脈にできた血栓(血液のかたまり)がだんだん大きくなるんですけれども、その時点では症状がない、というのが一番怖い。足に血栓ができているんだけれども症状がない、と。それがすごく大きくなってしまって初めて、流れていって詰めてから症状が突然でる、というのが怖いんです」

鈴江キャスター
「その症状というのが、『胸の痛み・循環不全』などを起こす、ということでしょうか?」

榛沢医師
「はい。『ショック』といいますけど、肺の血管が全部詰まってしまうと、心臓に戻ってこなくなってしまうので、血圧がガーンと下がってしまうんですね、それを『ショック』といいますけれども、そういう状態になってしまいます」

鈴江キャスター
「そうすると、命の危険もあるものなのでしょうか?」

榛沢医師
「そうですね。詰まってしまうと…病院で起きたものなら助かりますけれども、外部でなった場合にはほぼ助からないと思った方がいいと思います」

鈴江キャスター
「環境として、避難生活でどういった状態で起こりやすいのでしょうか?」

榛沢医師
「避難所だと、ずっと雑魚寝をしている状態。要するに、床でずっと座りっぱなしとか、寝っぱなしとか。あと、冷えると、『循環不全』はさらに加速されますので、冷たい床で寝ている状態が危ないと思います」

鈴江キャスター
「そして、車中泊をされているという方もいらっしゃるようですが…」

榛沢医師
「車中泊は、毎日毎日重なっていく…リスクがどんどん重なっていくと考えた方がいい。新潟県・中越地震では、3泊以上連泊した方が肺塞栓を多く起こしていましたので、やはり毎日毎日重なっていくことが危険なので」

「(今回の能登半島地震も)5日目、6日目になっていくともっと危険になりますので、いま車中泊している方がいらっしゃいましたら、『水分をとる』、『動く』、それから、足に『弾性ストッキングを着ける』とか、そういった予防法を本当に今すぐやってください」

■避難1週間前後で急増 血栓が20年残るケースも

鈴江キャスター
「いまお話にあった注意点を、あらためて詳しく説明します。上のグラフは榛沢医師が中越地震の時に、実際に診療にあたられて調査したデータです」

「(避難生活を始めて)5日目から「エコノミークラス症候群」になる人が急に増えていますが、報道で注意を呼びかけられますと、少し増え方はなだらかに。しかし、その後も少しずつ増え続けているという状況がみられました。5日が能登半島地震の発生からちょうど5日目ということで、より注意が必要なフェーズに入ってきているということでしょうか?」

榛沢医師
「そのとおりです。だいぶリスクが重なってきてしまって、これは足の血管がだんだんと膨れてくるということによるのですが、ずっと同じ格好をしていると、どんどんと静脈が膨れてきますので、そうすると血管の中に血栓ができやすくなることになります」

鈴江キャスター
「一度、血栓ができてしまうと、命のリスクというのは長年続くものだ、というふうに榛沢医師は指摘されていますが…」

榛沢医師
「中越地震が起こってから我々が調べた中で、血栓があった方のうちだいたい1割の方がいまだに残っています。その血栓が突然大きくなることもありますし、そういったリスクを抱えてしまうので、ぜひ今のうちに予防してください」

■妊婦・術後・40~50代女性…血栓ができやすい人は特に注意を

鈴江キャスター
「こういった血栓ができやすい方、特に注意が必要な方というのはいらっしゃるのでしょうか?」

榛沢医師
「まず、『妊婦』さんですね。この1~2か月のうちに出産した方というのは危険ですし、この1~2か月のうちに『手術を受けた方』も危険です」

「あと、それから、『以前に血栓ができたことがある方』、以前に足に血栓ができたり肺に血栓があった方は非常に危険なので、そういう方はもう、車中泊は避けてください。そうでないと、危険です」

鈴江キャスター
「これは、もう、ご高齢の方とかに関係なく、若い方でもなるリスクがある、ということなんですね?」

榛沢医師
「そうなんです。新潟県・中越地震で、『肺塞栓症』という病気で、つまり『エコノミークラス症候群』で亡くなった方は40代・50代なんです。ですから、比較的若い方が亡くなっていることを本当に覚えておいてください。熊本地震でも50代の女性が亡くなっていますので、やはり、比較的若い方が危ないです」

■予防に効果的「弾性ストッキング/着圧ソックス」とは?

鈴江キャスター
「では、どう予防したらよいか、ということで、榛沢医師のお話にもありましたが、『運動』、『水分補給』、そして『弾性ストッキング』というのは聞きなれない方もいると思うのですが、どういった効果があるのでしょうか?」

榛沢医師
「これは『着圧ソックス』ともいいますが、足首からだんだんと“圧”が低くなっていって、上の方に流しやすくなるようになっているソックスです。ですので、静脈の流れをアシストする、静脈の流れをよくするものです」

「よく、締め付けると血流が悪くなるんじゃないかと言われる方がいますが、それは動脈系がそうなんですけれども…でも、動脈の圧よりもずいぶん低くなっていますので、静脈の流れがだんだんとよくなるようになっています」

鈴江キャスター
「この『弾性ストッキング』については、徳島県が支援の一部として現地に送るなどの動きがあるようです。こういった支援が広がるといいですね」

榛沢医師
「そうですね。ぜひ、お願いします」

鈴江キャスター
「また、命にかかわるこの避難生活の送り方について、現地でテレビを見られていない方もいると思います。もし、LINEや電話などがつながって、直接お話できる方がいれば、ぜひ伝えてもらえたらと思います」

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