日本海溝・千島海溝の地震で「注意情報」を新たに導入~「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは~
最大19万9千人の犠牲者が想定されている日本海溝・千島海溝の巨大地震について、ひとまわり小さなマグニチュード(M)7クラスの地震が発生した場合に、地震への備えを再確認するなどの防災対応を呼び掛ける「注意情報」が発表されることになりました。この「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が突然発表されたら、どうしたらよいのでしょうか?
日本は巨大なプレートがぶつかり合っているところにあり、プレート境界がずれる際に起きる巨大地震で津波も発生し、被害が繰り返されてきました。
東日本大震災を起こした日本海溝では岩手県より北側の部分が割れ残っていて、さらにその北側の北海道の沖合からカムチャッカ半島にかけての千島海溝も巨大地震が繰り返し発生するとみられています。もしもこの巨大地震が起きると内閣府の想定では、日本海溝の地震では、最悪約19万9千人もの人が死亡し、千島海溝の地震でも約10万人もの人が死亡する想定です。そして死者の多くは津波による犠牲者となっています。
■M7クラスの地震が発生すると数日のうちに巨大地震発生の可能性が
巨大地震が起きる際には、その数日前に一回り小さな地震が起きたケースが知られています。
東日本大震災の時も2日前にM7.3の地震が発生していました。また、1963年に起きたM8.5の択捉島南東沖地震の際には、18時間前にM7.0の地震が起きていたのです。世界の過去の事例を見ると、M7クラスの地震が1477回起きたうち、17回で数日のうちにM8クラス以上の巨大地震が発生しました。
こうしたことから、日本海溝・千島海溝でも想定震源域やその周辺でM7クラスの地震が発生した場合は、その後数日のうちにM8クラス以上の巨大地震が発生する可能性が、100回に1回程度あるとみられています。
もしも巨大地震が起きたら被害は甚大なものになることから、M7クラスの地震が発生した場合には後に起きるかもしれない巨大地震(後発地震)に注意を促す必要があるとして、内閣府と気象庁が「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表することになったのです(2022年12月16日から運用開始)。
■発表される「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは 危険なエリアはどこで、どんな防災対策が必用?
北海道沖や三陸沖でM7以上の地震が発生した場合、地震発生からおおむね2時間後に内閣府と気象庁が合同の記者会見を開いて「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表することになっています。この情報の対象となるのは、想定される最大の巨大地震が起きた場合に被災するエリアで、高さ3メートル以上の津波が押し寄せる地域と、震度6弱以上の揺れが想定される地域となっています。実際には、北は北海道から南は千葉県までの太平洋沿岸を中心とした大変に広いエリアとなります。
この情報が発表された場合、対象エリアの住民はどうしたらよいのでしょうか?巨大地震発生の可能性はあるものの、確実に起きるとは言えないので、事前に避難することまでは求められていません。
内閣府は、いつもよりは地震の発生に注意して、社会経済活動を継続しながら地震への備えを徹底してほしいとしています。具体的には家具の固定などの日ごろからの地震の備えを再確認するとともに、もしも揺れを感じた時や津波警報などが発表された時にすぐに避難できるような準備を進めておくといった対応が求められています。
実際には、危険なエリアの中でも近くに避難タワーなどが建設されていてすぐに逃げられる場所にいる人と、近くに避難する場所のないところにいる人では準備も大きく変わってくることになります。それぞれの事情によって、備えるべき内容が変わってくるので、自治体の情報にも注意しながら個人個人で対応することが求められています。また、厳寒の雪のシーズンでは、雪が積もる中ではすぐに移動ができないうえに、たとえ避難できても寒さで凍えて命の危険にさらされるケースも想定されます。
このように時期によっても対応の中身が大きく変わってくることに注意が必要です。注意情報が発表されてから1週間経過しても巨大地震が起きなければ、内閣府は、「特に注意する期間は終了した」として、今後も地震発生に注意しながら生活を続けてほしいと国民に呼びかけることになっています。
■おおむね2年に1回は注意情報が発表される見通し
北海道沖と三陸沖ではM7クラスの地震が発生する回数が多く、この約100年の間に49回も発生してきました。平均するとおおむね2年に1回はこの「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表される計算になります。情報が発表される北海道から関東までの太平洋沿岸一帯では、何度も注意を促されることになる可能性もあるので、情報の意味をよく理解して冷静に対応することが大切です。