海水浴場閉鎖も…“海離れ”進むワケは?
夏のレジャースポットとして定番の「海」。今年も多くの人でにぎわった。ところがその裏で、閉鎖を余儀なくされる海水浴場も年々増えている。背景の一つは 若い世代の“海離れ”。そのワケを取材した。
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平成最後の夏。私たちが向かったのは日本海沖に浮かぶ無人島、兵庫県の「臼ヶ浦島」。実はここは船でしか向かえない、知る人ぞ知る穴場の海水浴場だ。その魅力は――
海水浴客「まず海がきれいなこと」「すごい透明度も高くて、魚も見えるしね」
太陽に照らされると、エメラルドグリーンに輝くほど透き通った海に。
海水浴客「(Q:何がいるの?)ウミウシとか」
都会の海ではめったに見られない生き物とのふれあい。子供も大人も楽しめる海水浴場として、県外からもリピーターが多く訪れていた。しかし――
臼ヶ浦海水浴場監視員・小林和夫さん「来年からちょっとさみしくなるなと」
この夏をもって閉鎖が決定。19日に約半世紀にわたる歴史に幕を下ろした。休憩所に置かれたノートには、“この海に来年も来たい”と存続を望むメッセージがつづられていた。
多くの人に長年愛されてきた海水浴場の閉鎖。実はここだけではなく全国で広がりを見せている。かつては夏のレジャーの定番だった海水浴。海水浴場は連日大勢の人でにぎわっていたが、平成に入ってからはその数が減少の傾向に。全国の海水浴場の数は1990年の1379か所が2017年には1095か所と、約30年のあいだに300か所近く減っている。
その理由の一つが海水浴客の減少。臼ヶ浦島では、海水浴客の減少などに伴い、島に向かう船の経営が赤字に。船が老朽化したこともあり、来年以降の営業を断念した。さらに関東でも去年、千葉県勝浦市の海水浴場が、海水浴客の減少などを理由に閉鎖している。
平成元年には約3000万人以上いた海水浴客。しかし、この30年間で4分の1以下の約700万人に激減。いわば「海離れ」が急速に広がっている。
実際に街で話を聞いてみると――
「(Q:今年海行きましたか?)行ってないですね」「行ってないです」
100人中今年海に行ったのは29人。行っていないのは71人で、「海離れ」を裏付ける結果に。なぜ海に行かないのか?その理由も聞いてみた。
「焼けたくない」「暑いので、熱中症とか気になるので」
連日猛暑となった今年ならではの理由や…
「わざわざ行くのがめんどくさい」「車がないとあんまり行きにくいイメージが」
「車離れ」など今の時代を反映した理由も。その結果、「遠いから」が最も多く40人、「暑いから」が36人と大半を占めた。(「汚い」15人、「怖い」9人)
では、海に行かない人たちは夏のレジャーをどこで楽しんでいるのだろうか。その一つが都内を中心に今続々と誕生している「ナイトプール」。ここを選ぶワケを聞いてみると――
「海が遠いからプールいいなって思ってきました」「日焼けしないし、暑くないし」
海に行かない理由とは反対の声が多く聞かれた。さらに、海では難しい鮮やかな演出も人気の理由に。
「東京サマーランド」では、「タイ コムローイ祭り」や、「イタリア 青の洞窟」。さらに、オーロラを眺めながら泳ぎを楽しめるなど、世界各国の絶景をテーマにしたイルミネーションを今年から実施(9月9日まで)。7月の来場者は去年に比べて2割増えたという。
若者を中心に進む「海離れ」。この現状を打破しようと新たな取り組みも始まっている。神奈川県の湘南にある「片瀬東浜海水浴場」(神奈川・藤沢市)では、今年から子供向けのアスレチック施設(日本財団「海と日本PROJECT」ちびっこBEACH SAVERパーク 8月31日まで)を設置。
親子連れでも安心して遊べる場所を提供している。さらにもうひとつある特徴が――
「ごみも全然ないし、何も落ちてなくて歩きやすい」
海水浴客から驚きの声が上がるきれいなビーチ。それを支えているのが小さな子供たちだ。
自ら海をきれいにすることで、親しみを持ってもらうことが狙いだという。
ちびっこBEACH SAVERパーク・古波蔵梨沙さん「海と一緒に生きていくというか、そういう気持ちを持ってもらえたらうれしい」
そして自分がきれいにした海で遊んだ子供たちは――
「(Q:一番楽しかったのはどこ?)海」「海」「海ー!」「(Q:海は好きですか?)だいすき!」
平成最後の夏に始まった海離れ解消への取り組み。次の時代に、にぎやかな夏の海を取り戻すきっかけになるのだろうか。