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【独自解説】「国家的殺人」「結論から言えば論外」国会での議論なく『高額療養費』見直し決定に批判殺到 “長瀬効果”主張の政府に当事者は怒り「受診控えたら数値がすぐに悪くなる。そうしろということか?ふざけるな!」

2025年3月2日 12:00
【独自解説】「国家的殺人」「結論から言えば論外」国会での議論なく『高額療養費』見直し決定に批判殺到 “長瀬効果”主張の政府に当事者は怒り「受診控えたら数値がすぐに悪くなる。そうしろということか?ふざけるな!」
『高額療養費』見直しに怒り

 今、最も熾烈を極めている『高額療養費』見直しの問題。政府は2025年8月から自己負担額の上限を段階的に引き上げる方針ですが、「国家的殺人だ」など反対の声も多くあがっています。政府が主張する“長瀬効果”とは?当事者の本音とは?元経産官僚・岸博幸氏の解説です。

■100万円の治療費が実質約9万円に…患者の負担軽減する『高額療養費制度』『多数回該当』とは?

 『高額療養費制度』とは、医療費が高額となった場合に自己負担額に上限を設け、患者の負担を軽減する“セーフティーネット”です。

 Aさん(40代・年収600万円)を例にすると、1か月に医療費が100万円かかった場合の窓口負担は30万円ですが、現在の制度では、21万2570円が高額療養費制度で払い戻され、実質的な自己負担額は8万7430円となります(年収によって月額上限は変動あり)。

 また、『多数回該当』という制度もあり、自己負担限度額を超える月が直近12か月以内に3回以上あったとき、4回目からさらなる負担軽減を受けられます。例えば、自己負担が月8万7430円なら、4回目以降は月4万4400円となる仕組みです。

■政府『高額療養費』見直し決定 実質負担約9万円が、2年後には約12万円へ

 一方で、高齢化や高額な薬などで高額療養費の支給総額が増え、2012年度~2021年度の10年間で6900億円も増えました。これにより働く世代の保険料が増えているので、政府は「働く世代の負担軽減のため」、そして「少子化対策財源にするため」、高額療養費の上限を引き上げると決定。

 患者団体は“上限引き上げ”の「一時凍結」を求めましたが、2025年2月20日に自民党・厚生労働部会は、“多数回該当に限り”負担増を取りやめる修正については了承しました。

 Aさん(40代・年収600万円)の場合、月8万7430円の上限額が段階的に上がっていき、現在と2027年8月以降を比べると、一か月に約3万円アップすることになります。当初の案だと、『多数回該当』についても徐々に引き上げられる予定でしたが、こちらは取りやめが決まっています。

■「今回の改正は乱暴すぎる」手取り450万円なら年間40万円負担増

Q.『高額療養費制度』は、アメリカにはないですか?
(デーブ・スペクター氏)
「アメリカでは医療費がとんでもない額になるので、インターネットで自己診断して、ちゃんとした治療をしない人もいます。日本の医療制度は高い評価があるのに、なぜこんなことをするのか。『そんなに財源がないんだったら、議員の数をまず減らして』と言いたくなりますよね。ただ、今回の対象はズバリ有権者ですので、それでもここを削減するということは、よほど逼迫しているとも言えるのかなと思います」

Q.政府が負担額を上げていくことについて、どう考えますか?
(元経産官僚・岸博幸氏)
「結論から言えば、論外だと思います。自分もそうなのですが、がんなどの重篤な病気になって高い注射・高い薬を使うと当然、毎月すごい金額になります。でも、『高額療養費制度』があるから、私も毎月定額で収まっています。

この負担額が増えていくとなると、特に子育て世代ががんなどにかかった場合の現実は、非常に厳しいです。先ほど例にあった“年収600万円のAさん”は、それなりに収入があるように見えるかもしれませんが、税金と社会保険料を引くと、手取りは約450万円です。その中で月に3万円も上がったら、年間40万円ぐらい負担が増えますので、親は『子どもの教育にお金がかかるから、自分の治療は控えようか』となってしまいます。

国民の二人に一人ががんになり、若いうちになる可能性もある中で、そういう人たちが治療できる環境を維持できるのかという観点から考えると、今回の改正は乱暴すぎると思います」

■政府は“長瀬効果”主張も、十分な議論なく…「命に直結する部分を最初に削減するのは理解できない」

 また、指摘されているのが、十分な議論が行われたのかどうかについてです。2023年12月、政府は『こども未来戦略』閣議決定し、この時点で、「高額療養費の見直しなどで財源捻出」と記載がありました。

 それが一気に動いたのが、2024年末です。同年11月~12月12日にかけて、厚労省の部会が4回開催され、高額療養費の見直し議論が行われました。そして、12月25日には、2025年8月から自己負担の上限額引き上げを決定したということです。

Q.あっという間に決まったんですね?
(岸氏)
「決定のプロセスが乱暴すぎます。厚生労働省という一役所の部会の中の審議会の議論を、4回しただけで決めています。しかも、『政令改正』なので、国会で議論しないんです。こんなに大切なことを、国会での議論・国民的議論を経ないで決めるというのは、何なんだと思います」

 制度全体の見直しを凍結するよう求める声がある中、政府が主張するのは、“長瀬効果”への期待です。“長瀬効果”とは、患者の自己負担が増加すると“受診控え”が起き、国全体の医療費が削減される効果のこと。政府は、『高額療養費』見直しで削減できる医療費のうち、約1950億円の“長瀬効果”を想定しています。

(岸氏)
「“長瀬効果”といいますけど、本当に腹が立つのは、私は受診控えをしたら血液の数値がすぐに悪くなります。そうしろということか?ふざけるな、と思います。当然ながら医療費のコストは上がっているので、削減は必要です。ただ、これが最優先でしなければならない削減なのか。医療や社会保障関係の無駄は他にたくさんあるのに、それをせず、よりによって命に直結する部分を最初にやるのは、理解できません」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年2月25日放送)

最終更新日:2025年3月2日 12:00
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