独占密着…護衛艦「かが」米仏空母と初の共同訓練 “連携強化”狙いとリスク【バンキシャ!】
先月、アメリカ軍が誇る世界最大級の空母「カール・ビンソン」、フランスの原子力空母「シャルル・ドゴール」、そして日本の大型護衛艦「かが」が参加する初の共同訓練が行われました。その全容とは、「バンキシャ!」が独占密着しました。
◇
先月、広島にある海上自衛隊・呉基地に向かった。
バンキシャ!
「護衛艦『かが』に乗艦します」
バンキシャ!が乗り込んだのは日本最大級の護衛艦「かが」。全長は248メートル。戦闘機の搭載に向け改修が進む“事実上の空母”だ。
敵からの攻撃を迎撃する機関砲、艦対空ミサイルも搭載している。この「かが」が今回、アメリカ軍とフランス軍との共同訓練に臨む。
アメリカからは、世界最大級の原子力空母「カール・ビンソン」。そして、フランスは所有する唯一の空母「シャルル・ド・ゴール」を派遣する。“空母化”が進む「かが」がアメリカとフランスの空母と訓練を行うのはこれが初めてだ。
今回、バンキシャ!はテレビメディアで唯一この共同訓練に密着取材。目撃したのは――
◇◇◇
日本最大級の護衛艦「かが」は、最大14機のヘリを搭載可能。同時に複数のヘリを運用することができる。将来的には戦闘機も搭載し“事実上の空母化”が検討されている。乗艦する隊員はおよそ350人。24時間3交代制で、任務にあたっている。今回は14日間の航海だが、長いときは半年帰れないこともあるという。
隊員たちに取材をしていると――
アナウンス
「(乗艦中の)高橋三曹、2月14日第2子誕生。母子共に健康、おめでとう!」
隊員の妻が出産したとのアナウンスが。
バンキシャ!
「こんなアナウンスが流れるんですね」
隊員
「結構流れますね。言ってしまえば出産に立ち会えてないってことなんですけど」
家族との電話もままならない海の上。しかも、隊員たちの多くはこの時点では、まだ具体的な訓練内容を聞かされていなかった。
今回「かが」が向かうのは、日本の南に位置するフィリピン沖だ。近接する南シナ海では、中国が領有権を主張しフィリピンなどの船に妨害を行うなど実効支配を強めている。
南シナ海を含むインド太平洋地域の不安定化は、世界経済や安全保障環境にも影響を及ぼす。そのため、ヨーロッパの国々も近年、関与を強めていて、今回、フランスもおよそ60年ぶり太平洋地域へ空母を派遣した。
日本の指揮をとるのは、夏井隆群司令。
第4護衛隊 夏井群司令
「今まで準備してきたこと、調整してきたことが、現場で十分発揮できればいい」
訓練海域に到着すると、アメリカが有する世界最大級の原子力空母カール・ビンソンが姿を現した。甲板には戦闘機がずらりと並ぶ。70機以上搭載できるという。
さらに…
隊員
「あちらはフランスの空母シャルル・ド・ゴール」
フランスの原子力空母シャルル・ド・ゴールも合流。甲板から戦闘機が飛び立つと思わず声が漏れる。
隊員
「近っ」
「すごいね」
日米仏で総勢10隻を超える艦艇が集結した。すると、隊員がはる遠くにある黒い影に気がついた。
隊員
「中国の情報収集艦」
電波や通信などを傍受する中国軍の船だという。共同訓練を察知してやってきたとみられる。
そんな中、アメリカ軍とフランス軍の指揮官らが「かが」に集まった。天候や中国軍などの動向を踏まえながら、この後行う訓練の内容を決めていく。そして決まったのは、「かが」が敵国のミサイルに狙われた想定で行う迎撃訓練だ。ミサイルを発射する代わりにフランス軍が戦闘機を「かが」にむけて飛ばす。この仮想ミサイルを機関砲で撃ち落とすという訓練だ。
作戦の指揮をとる戦闘指揮所の撮影が許された。
「ADEX(対空戦訓練)開始」
仮想ミサイルの戦闘機が時速およそ700キロで飛行する。
「目標探知」
ミサイルに見立てた戦闘機を機関砲のレーダーが探知した。
「本艦に近接する」
緊張が高まる。
「この目標、本艦が対処する。対空戦闘」
「本艇、衝撃に備え」
「目標まっすぐ突っ込んでくる」
機関砲が目標を追う。
「攻撃はじめ」
訓練のため実際には迎撃しなかったが、無事、ミサイルを撃ち落としたと判断された。
今回の訓練では空母の運用を学ぶ機会も設けられた。アメリカのヘリに乗り込み、向かった先は多くの戦闘機を載せたアメリカの空母、カール・ビンソン。甲板には、戦闘機が20機以上並んでいた。中には最新鋭のステルス戦闘機もあった。「かが」に搭載することが検討されている戦闘機と同系統の機体だ。将来、戦闘機の運用に関わることになる「かが」の隊員たち。空母だからこそできる戦闘機の運用を目の当たりにした。
同じ頃、カメラは再び中国軍の情報収集艦の姿を捉えた。共同訓練を監視し続けていたとみられる。
バンキシャ!
「情報収集をされているのに訓練をすると、情報がわかってしまうのでは」
隊員
「日米仏が訓練をしているということが大事」
3か国による大規模な共同訓練、それをあえて知らせることにも意味があるという。そのため、広報担当の隊員による撮影も重要な任務だ。上空から3か国が連携する様子を撮影する。「かが」と二隻の空母を一枚の写真に収めるという。こうした訓練を発信することが抑止につながるのだ。
夏井群司令
「力による現状変更を試みる国が存在したとしても、(3か国の)連携の強化を発信することで、それを思いとどまらせることができるのではないか」
安全保障の専門家は――
笹川平和財団 上席フェロー・渡部恒雄氏
「隙があれば何かしら自分の領域を広げようとかいうプレーヤーが現れてしまいます。そこに対して、常に備えているというのを見せる、地域と世界に見せることというのは、大きな意義だと思います」
一方で、懸念もあるという。
渡部恒雄氏
「時としてはそれが過剰に受け止められて、不要な対立になるリスクもあります。軍事訓練をする際には必ず相手側に心配をさせすぎない、メッセージを出すというバランスが非常に重要になってくる」
(※3月2日放送『真相報道バンキシャ!』より)
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先月、広島にある海上自衛隊・呉基地に向かった。
バンキシャ!
「護衛艦『かが』に乗艦します」
バンキシャ!が乗り込んだのは日本最大級の護衛艦「かが」。全長は248メートル。戦闘機の搭載に向け改修が進む“事実上の空母”だ。
敵からの攻撃を迎撃する機関砲、艦対空ミサイルも搭載している。この「かが」が今回、アメリカ軍とフランス軍との共同訓練に臨む。
アメリカからは、世界最大級の原子力空母「カール・ビンソン」。そして、フランスは所有する唯一の空母「シャルル・ド・ゴール」を派遣する。“空母化”が進む「かが」がアメリカとフランスの空母と訓練を行うのはこれが初めてだ。
今回、バンキシャ!はテレビメディアで唯一この共同訓練に密着取材。目撃したのは――
◇◇◇
日本最大級の護衛艦「かが」は、最大14機のヘリを搭載可能。同時に複数のヘリを運用することができる。将来的には戦闘機も搭載し“事実上の空母化”が検討されている。乗艦する隊員はおよそ350人。24時間3交代制で、任務にあたっている。今回は14日間の航海だが、長いときは半年帰れないこともあるという。
隊員たちに取材をしていると――
アナウンス
「(乗艦中の)高橋三曹、2月14日第2子誕生。母子共に健康、おめでとう!」
隊員の妻が出産したとのアナウンスが。
バンキシャ!
「こんなアナウンスが流れるんですね」
隊員
「結構流れますね。言ってしまえば出産に立ち会えてないってことなんですけど」
家族との電話もままならない海の上。しかも、隊員たちの多くはこの時点では、まだ具体的な訓練内容を聞かされていなかった。
今回「かが」が向かうのは、日本の南に位置するフィリピン沖だ。近接する南シナ海では、中国が領有権を主張しフィリピンなどの船に妨害を行うなど実効支配を強めている。
南シナ海を含むインド太平洋地域の不安定化は、世界経済や安全保障環境にも影響を及ぼす。そのため、ヨーロッパの国々も近年、関与を強めていて、今回、フランスもおよそ60年ぶり太平洋地域へ空母を派遣した。
日本の指揮をとるのは、夏井隆群司令。
第4護衛隊 夏井群司令
「今まで準備してきたこと、調整してきたことが、現場で十分発揮できればいい」
訓練海域に到着すると、アメリカが有する世界最大級の原子力空母カール・ビンソンが姿を現した。甲板には戦闘機がずらりと並ぶ。70機以上搭載できるという。
さらに…
隊員
「あちらはフランスの空母シャルル・ド・ゴール」
フランスの原子力空母シャルル・ド・ゴールも合流。甲板から戦闘機が飛び立つと思わず声が漏れる。
隊員
「近っ」
「すごいね」
日米仏で総勢10隻を超える艦艇が集結した。すると、隊員がはる遠くにある黒い影に気がついた。
隊員
「中国の情報収集艦」
電波や通信などを傍受する中国軍の船だという。共同訓練を察知してやってきたとみられる。
そんな中、アメリカ軍とフランス軍の指揮官らが「かが」に集まった。天候や中国軍などの動向を踏まえながら、この後行う訓練の内容を決めていく。そして決まったのは、「かが」が敵国のミサイルに狙われた想定で行う迎撃訓練だ。ミサイルを発射する代わりにフランス軍が戦闘機を「かが」にむけて飛ばす。この仮想ミサイルを機関砲で撃ち落とすという訓練だ。
作戦の指揮をとる戦闘指揮所の撮影が許された。
「ADEX(対空戦訓練)開始」
仮想ミサイルの戦闘機が時速およそ700キロで飛行する。
「目標探知」
ミサイルに見立てた戦闘機を機関砲のレーダーが探知した。
「本艦に近接する」
緊張が高まる。
「この目標、本艦が対処する。対空戦闘」
「本艇、衝撃に備え」
「目標まっすぐ突っ込んでくる」
機関砲が目標を追う。
「攻撃はじめ」
訓練のため実際には迎撃しなかったが、無事、ミサイルを撃ち落としたと判断された。
今回の訓練では空母の運用を学ぶ機会も設けられた。アメリカのヘリに乗り込み、向かった先は多くの戦闘機を載せたアメリカの空母、カール・ビンソン。甲板には、戦闘機が20機以上並んでいた。中には最新鋭のステルス戦闘機もあった。「かが」に搭載することが検討されている戦闘機と同系統の機体だ。将来、戦闘機の運用に関わることになる「かが」の隊員たち。空母だからこそできる戦闘機の運用を目の当たりにした。
同じ頃、カメラは再び中国軍の情報収集艦の姿を捉えた。共同訓練を監視し続けていたとみられる。
バンキシャ!
「情報収集をされているのに訓練をすると、情報がわかってしまうのでは」
隊員
「日米仏が訓練をしているということが大事」
3か国による大規模な共同訓練、それをあえて知らせることにも意味があるという。そのため、広報担当の隊員による撮影も重要な任務だ。上空から3か国が連携する様子を撮影する。「かが」と二隻の空母を一枚の写真に収めるという。こうした訓練を発信することが抑止につながるのだ。
夏井群司令
「力による現状変更を試みる国が存在したとしても、(3か国の)連携の強化を発信することで、それを思いとどまらせることができるのではないか」
安全保障の専門家は――
笹川平和財団 上席フェロー・渡部恒雄氏
「隙があれば何かしら自分の領域を広げようとかいうプレーヤーが現れてしまいます。そこに対して、常に備えているというのを見せる、地域と世界に見せることというのは、大きな意義だと思います」
一方で、懸念もあるという。
渡部恒雄氏
「時としてはそれが過剰に受け止められて、不要な対立になるリスクもあります。軍事訓練をする際には必ず相手側に心配をさせすぎない、メッセージを出すというバランスが非常に重要になってくる」
(※3月2日放送『真相報道バンキシャ!』より)
最終更新日:2025年3月3日 9:38