デマ拡散も…根拠なき“トランプ発言”で世界が混乱 人道支援にも影【#みんなのギモン】
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そこで今回の#みんなのギモンでは、「“トランプ発言”でデマ拡散なぜ?」をテーマに解説します。
小林史・日本テレビ解説委員
「トランプ大統領の根拠のない発言が、世界の人道支援にも大きな影を落としています。2月下旬、海外援助を担うUSAID(=アメリカ国際開発庁)の職員たちが荷物をまとめて職場を後にする様子を収めた映像があります」
「退去を求められた職員は『普通のアメリカ人に聞いてみてほしい。支援が打ち切られて、人々が死んでいくのが見たいのか』と話しました」
小林解説委員
「一体何が起きているのか。トランプ政権がUSAIDの職員1600人の解雇に着手すると発表したほか、2月23日からは大半の職員に対して休暇に入るよう指示しました」
「さらに26日には、USAIDの対外援助契約の9割以上を打ち切り、約9兆円の援助を取りやめることを明らかにしました」
鈴江奈々アナウンサー
「かなり大胆な改革ですけれども、これがトランプ大統領が考えるアメリカファーストのもと、『ここはいらない』と判断したということなんですね」
小林解説委員
「そもそもUSAIDとはどのような機関なのでしょうか? 1961年、当時のケネディ大統領が出した大統領令によって設立した政府の独立機関で、職員は約1万人、世界60か国以上に拠点を持っています」
「途上国などへの食料や医療支援など主に人道的な支援を担っていて、ワクチン接種などで世界的なウイルス拡散の防止にも重要な役割を果たしています」
森圭介アナウンサー
「アメリカの一機関ではありますが、世界では存在感があるわけですし、一定の役割を担ってきたわけですからね」
刈川くるみキャスター
「となると、なぜ今回トランプ大統領は、閉鎖に向けて動いているんでしょうか?」
小林解説委員
「その背景には、トランプ氏が掲げるアメリカ第一主義があります。BBCによると、2023年にアメリカは海外援助に約10兆円を支出していますが、USAIDの予算はその半分以上を占める約6兆円にも上っていました」
「トランプ氏は、アメリカ国民の税金は他の国の支援に使うのではなく、物価高に苦しむアメリカ国民のために使うべきだと主張していて、トランプ氏に投票した支持者の多くもこうした考えに賛同しているからです」
忽滑谷こころアナウンサー
「ただ、大国のリーダーがこういった言動をするというのはアメリカ国内だけではなく世界中に影響を及ぼしますよね」
小林解説委員
「実際にいろんな影響が出ています。USAIDをめぐっては騒動も起きています」
「2月6日、トランプ氏はXへ『数十億ドルもの資金がUSAIDや他の機関に盗まれているようだが、その多くは民主党に都合のいい記事を書いた報酬としてフェイクニュースメディアに支払われた』と投稿しました」
「具体的に、政治専門サイトのポリティコやニューヨーク・タイムズといった名前が挙げられています。つまりUSAIDが、リベラルなメディアに資金を提供して報道内容を操作していると主張しています」
「この投稿は、トランプ氏の側近であるイーロン・マスク氏によって世界中に拡散されました。名指しされたメディアは投稿内容を否定するコメントを出しましたが、トランプ氏とマスク氏のXのフォロワーはそれぞれ約1億人と約2億人です」
「瞬く間に世界中に拡散された結果、日本の企業や組織もUSAIDから資金を受け取っているといったような書き込みがSNS上で拡散しました。具体的に日本の大手新聞社やテレビ局を名指しで非難するような投稿もあり、中には日本テレビの名前も挙がっています」
「なお、日本テレビはUSAIDからの資金提供は一切受けていないことを確認しています」
鈴江アナウンサー
「こうして『資金提供は受けていない』と打ち消していますが、果たしてそれが全てにおいて打ち消せるかというと、なかなか難しいですね。こういったSNSでの影響力のあるトランプ氏やマスク氏の発言は本当に深刻ですよね」
小林解説委員
「トランプ氏の根拠のない発信からUSAIDをめぐるデマが拡散したわけですが、トランプ氏はほかにも様々な場面で裏付けのない発言を繰り返しています」
「2月19日にはウクライナのゼレンスキー大統領について『選挙を経ていない独裁者』『勝てない戦争に突入させた』と発言。ただ実際には戦争は、3年前にロシアによる全面的な軍事侵攻で始まりました」
「また、ゼレンスキー氏の任期は確かに去年までですが、戦時中は戒厳令が発令されているので、選挙ができないためというのが実情です。それで独裁者というのはあたらないですよね」
「ゼレンスキー氏を独裁者と呼んだことについて、トランプ氏は日本時間の28日朝行われたイギリスのスターマー首相との会談で『そんなこと言ったか? 私がそんなことを言うなんて信じられない』と述べ、早速軌道修正を図っています」
「ほかにも、22日に行われた保守系の集会では、自分の支持率は歴代の共和党の大統領の中で最高だと述べましたが、実際の支持率は40~50%台を推移。過去にはジョージ・W・ブッシュ大統領が92%、レーガン大統領が68%など、より高い支持率の大統領もいました」
森アナウンサー
「こうして見ると、明らかにトランプ氏が言っていることが事実ではないとわかりますが、このデータを知らなければ、トランプ氏が言ったことを鵜吞みにしてしまう人がいるというのも否めないですよね」
小林解説委員
「そこが困ったところです。さらに、フランスのマクロン大統領との首脳会談の場でもこんな一幕がありました」
◇
トランプ氏
「欧州はウクライナに資金を貸し付けている。返済を受けるのだ」
マクロン氏
「いえ違います。実際には6割は支払っています」
◇
小林解説委員
「ヨーロッパによるウクライナ支援は貸し付けなので全て返済されるとトランプ氏が言ったところ、マクロン氏が即座に腕を伸ばして発言を制止し、訂正しました」
「さらに日本時間28日朝にあった、イギリスのスターマー首相との会談でも全く同じことを言って、スターマー首相から訂正される場面も。全く懲りていないというのが実情です」
忽滑谷アナウンサー
「首脳同士の会見で、メディアもいる中で訂正されるのは珍しいですよね」
小林解説委員
「本当に異例なことだと思います。トランプ氏がいかに裏付けのない、いい加減とも言える発言を繰り返しているかがよくわかります」
鈴江アナウンサー
「そういう意味でも私たちは冷静に見ていかないといけないですね」
小林解説委員
「トランプ氏は、自らの発言をファクトチェックしたり、意向に沿わない報道をするメディアを取材から締め出したりするなど、アメリカで報道の自由が脅かされるような事態にも発展しています」
「一体何が真実なのか、情報を受け取る側の私たち一人ひとりもしっかりと見極める目を養う必要があります」
(2025年2月28日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)