【独自解説】『教育無償化』交渉は“図書館”で⁉合意のウラで動いた影の“主役”たち 煮詰まった交渉を一気に進めた“遠ちゃん”とは?自民・維新“歩み寄り”の背景
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2025年2月25日、『高校教育無償化』などを巡り、3党合意にサインした日本維新の会・吉村洋文代表。その裏には、“遠ちゃん”と呼ばれる影の主役が。そして、その交渉に使われたのは“図書館”だというのです。合意の背景は?読売テレビ・高岡達之特別解説委員の解説です。
■“ほとんど儀式”でも意味がある『トップのサイン』 党首会談までの3ステップとは?
全体の国家予算は、教育無償化だけではなく道路を作ったり、いろいろと経済対策があります。だから常々、与党側は「そのために妥協できるものはしましょう」としているわけですが、恩恵を受ける方の数が違うのは、今後どのような結果になるでしょうか。
ここからは裏事情です。『高校無償化』の話題は、国会の本会議で出たわけではありません。でも、法律にするなら国会を通らなければいけませんので、自民党・公明党・維新3党の党首の署名が、2025年2月25日午後7時少し前にセットされました。
総理大臣は午後7時を過ぎると“ディナーの約束”がありますので、時間はとても短く、10~15分です。そこで3党の党首が集まって署名するのは、ほとんど“儀式”ですが、実はトップのサインにはとても意味があります。
党首会談で署名するには、まず『政策責任者会議』で話し合いを行いますが、全員が納得しているわけではないので、「勝手にやっているではないか」という声も収めて『党の総意』にして、『党首会談』まで持ってきているわけです。
サインしたことを裏切ると、党首の面目は丸潰れになりますので、このサインは大切です。“裏切る”とは、『本会議や委員会で造反すること』です。ただ、サインしても正式な法律になったわけではないので、今回はまだまだ“根回し段階”と思ったほうがいいと思います。
■影のキーパーソン“遠ちゃん”こと遠藤敬氏、顔の広さで煮詰まった交渉を一気に前進
実は、今回の主役は石破首相や維新・吉村代表ではありません。実際に交渉したのは、維新・遠藤敬議員(前国対委員長)、自民党・小野寺五典政調会長、自民党・柴山昌彦議員(元文科相)、そして自民党・森山裕幹事長です。毎日テレビに映っている人たちではありませんが、永田町2km四方では大変な有名人です。
公明党は割と担当の方に表も裏もなく、その方が全面に出てやります。一方、自民党は、小野寺政調会長は幹事長ではないのですが、各党との調整やいろんな法案の修正でも出てきます。今回は文部科学行政に関わることですから、文科大臣経験者や、自民党内には“文教族”という「文部科学行政は俺に聞け」という人がたくさんいて、彼らを収めるために元文科相・柴山氏が汗をかいています。それでも話がつかないようなら、森山幹事長が出てきます。
そして、森山幹事長と話をする相手が、維新・遠藤敬氏です。永田町では、『遠(えん)ちゃん』の愛称で呼ばれるぐらい有名人です。なぜかというと、今は無役ですが、遠藤氏は国会対策委員長をずっと長い間やっていた顔の広い方で、維新・前原代表で煮詰まってきた交渉が、“遠ちゃん”に変わった途端一気に進みました。
■“料亭政治”“密室政治”避けるため、交渉に『図書館』多用か 遠藤氏の姿をキャッチ
ただ、交渉を行う所も難しいです。料亭で会ったら“料亭政治”、ホテルで会ったら“密室政治”と言われますから、今回は図書館を多用しています。国会議事堂の前には国立の図書館『国会図書館』があり、日本で出版される本は全て揃っています。
2025年2月20日、そこから出てくる遠藤氏の姿が捉えられました。誰も、本を読んでいたとは思っていません。格好を見ると、議員バッジはついていますが、スーツではなくニットを着ていて、ラフです。ということは、“非公式の交渉”だということです。記者は普段、国会議事堂と記者会館にいますから、国会図書館にはいません。でも、「どうやらここで会っているらしい」ということがバレて、この映像が撮影されました。
まだまだ根回し段階なので、サインをしたことで各党の不満はギュッと押し込められることになりますが、他の火種から大きな火にならないかという心配は、まだ残っています。(読売テレビ・高岡達之特別解説委員)
(「かんさい情報ネットten.」2025年2月25日放送)