×

【ナゼ】「なぜすぐ対応しないのか。ふざけんな」コメ21万トンが“行方不明”、一部の農家や卸売業者がストックか…続く価格高騰受けようやく備蓄米の放出決定も、元官僚が怒りの指摘「典型的な“行政の失敗の結果”」

2025年2月17日 16:00
【ナゼ】「なぜすぐ対応しないのか。ふざけんな」コメ21万トンが“行方不明”、一部の農家や卸売業者がストックか…続く価格高騰受けようやく備蓄米の放出決定も、元官僚が怒りの指摘「典型的な“行政の失敗の結果”」
コメ21万tが“行方不明”

 2024年秋の『令和の米騒動』から半年が経ち、いまだに価格高騰が続く中、21万トンのコメが行方不明に…。なぜこのようなことが起きているのか?そしてコメの価格高騰はいつまで続くのか?コメの生産や物流に詳しい宇都宮大学農学部・小川真如助教の解説です。

■古米不足で業者や個人で確保競争が激化 「十分に供給されているのに市場に出てこない」21万トンのコメはいったいどこへ―?

 東京での1袋当たり5キロのコシヒカリの小売価格ですが、2024年の1年で見てみると、8月から10月あたりで急激に高騰していて、2025年1月には4185円になっています。

 価格が高止まりしている理由について、宇都宮大学農学部・小川真如助教によると「集荷競争の影響で価格が上がっているのではないか」とのことです。

 今の時期の米の流通としては、新米と古米があり、この古米が不足しているといいます。流通業者や外食企業・小売り業者の需要が高く、また消費者が「個人的に欲しい」と農家に直接、依頼をすることもあり、確保競争が激化しています。

Q.古米と新米の違いというのは、どういうものなのでしょうか?
(小川助教)
「新米もいくつか定義があるんですが、基本的に今話している新米というのは2024年産のコメ、古米はそれ以前に取れたものです」

 そんな中で、実はコメの生産量が増えているというデータもあります。農水省のホームページでコメの生産量を見ると、2023年から2024年で18万トンも増えています。ただ、集荷量で見てみると、約21万トンが減っています。

 この21万トンが行方不明になっているということで、江藤拓農水相は「十分に供給されているのに市場に出てこない。どこかに滞っているのでは」とし、農水省が調査に乗り出しているといいます。

Q.米の生産量は上がっているのに、ねじれ現象で集荷量が減っているといいますが、こんなことが起こるんですね?
(小川助教)
「農林水産省の調査は基本的に年間5000トン以上のコメを集める業者を対象にしていますので、大規模の業者に絞っているわけです。また生産者は全て集荷業者に出しているわけではないので、2024年のコメの品薄をきっかけに、集荷する業者や個人・消費者も含めてプレイヤーが増えてきたので、全体像が掴みきれていないというのが実情です」

(元経産官僚・岸博幸氏)
「やっぱり農水省は基本的にこれまで、コメの需給をかなり行政が関与して、コントロールしてきたんです。減反はやめたとは言っても、事実上、まだコントロールはしている。だんだん流通が複雑になる中で、色んなプレーヤーが入ってくると、当然、思惑で『値段が上がるまで抑えておこう』だとか、飲食店系ならば『長期の契約をしちゃおう』とか、色んな事があって、結果的にこういう状況になっている。典型的な“行政の失敗の結果”の値上がりだと思いますね」

 一般的なコメの流通ですが、農家から卸売業者などを通じて消費者の手元に届きます。ただ市場関係者によると、「農家や卸売り業者といった一部業者がコメをストックしているのではないか」とのことで、より高く売れる時期を待っている可能性があるといいます。その影響で、市場の流通量は減少してしまい、高値になっているということです。

(小川助教)
「特に小規模な人たちも増えてしまった。スーパーに出回るコメというのは、ほとんどは元をたどれば、大規模な集荷業者が集めたコメなんです。ですからそれが減ると、スーパーの販売価格も当然高くなるという形になっています」

■政府が備蓄米21万トンを放出決定も「完璧に遅すぎた」

 1993年にコメが大凶作となり、消費者がスーパーに殺到しました。『平成の米騒動』とも呼ばれていますが、その後、1995年に、国がコメの備蓄を制度化し、いつでもコメを供給できるようにしました。

 現在のコメの備蓄量は、100万トンで、これは10年に一度の不作でも供給できる量だということです。これまでも不作などで生産が大きく減った場合や、大規模な災害の直後、東日本大震災や熊本地震のときにも運用されていたといいます。

 そんな中、2025年1月31日に政府が備蓄米を放出する方針を決定。集荷業者(JAなど)に“1年以内に同じ量を買い戻す条件付き”で備蓄米の一部を販売可能にしましたが、小川助教によると「決断が遅かったのではないか」と話しています。

 備蓄米の放出について、江藤農水相は「これまでやったことがないので、できる限り急いで対応する。国有の財産を売り渡すにしても、どの値段・数量が道理にかなうのか考えなければいけない。価格変動で良い効果が出ることを期待している」と話しています。

 そして、2025年2月14日に行われた会見で、21万トンの備蓄米を放出・販売すること発表しました。売り先については5000トン以上の仕入れを行っている大手集荷業者を対象としています。最初は15万トンから放出し、残りの6万トンは、流通調査を踏まえて放出するかを決定するとのことです。販売時期については、同年3月初旬に入札を開始し、3月半ばには引き渡され、3月末から4月には店頭に並ぶとされています。

 この会見を受け、東京・浅草で約100年、コメの販売を行ってきた老舗の米穀店は―。

(越後屋米殻店・佐々木慎吾社長)
「備蓄米の放出だけでは価格は下がらないと思います。大手のところにはコメは行きます。大きなスーパーなどの価格については若干の値下がりがあると思いますが、我々、米穀店・小売店みたいなところまでに届くのは程遠い。届かないことには価格的には下がるなんてことは考えられません。ありがたいけどまだ足りない」

(岸氏)
「僕に言わせれば、政府の対応、遅すぎます。2024年の夏から騒ぎが起きていて、半年経っているんですよ。政府は2024年の夏の段階では、秋になって新米が出回ったら、価格が落ち着くと言っていたんです。落ち着いてないじゃないか。何ですぐ対応しないのか。『これまでやったことがないから、時間がかかって』とか、ふざけんなと」

 一方で小川助教も「備蓄米を出さなくても、6~7月には、価格が下がるとみている」としています。

Q.その前にもっと手は打てたのではとお考えですか?
(小川助教)
「少なくとも“備蓄米を出す可能性がある”という牽制メッセージを送るというカードは、いつでも切れた話ですので、非常に遅かったと思います。少なくとも1年以内に買い戻しを条件にするのであれば、完璧に遅すぎたと思っています」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年2月7日放送)

最終更新日:2025年2月18日 10:45
    一緒に見られているニュース
    読売テレビのニュース