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【注目】なぜ本人確認を突破できた?大谷翔平選手の元通訳・水原一平被告による不正送金の衝撃手口 専門家指摘「巨額賠償の支払いには“映画・TVドラマ化”や“暴露本の出版”の可能性も」

2025年2月16日 9:00
【注目】なぜ本人確認を突破できた?大谷翔平選手の元通訳・水原一平被告による不正送金の衝撃手口 専門家指摘「巨額賠償の支払いには“映画・TVドラマ化”や“暴露本の出版”の可能性も」
大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏

 日本時間の2025年2月7日、禁錮4年9か月が言い渡された、大谷翔平選手の元通訳・水原一平被告(40)。同年1月には、水原被告と銀行担当者の実際のやり取りが判明。なぜ本人確認を突破し、約26億円もの不正送金ができたのか?今後、どのように巨額賠償を支払っていくのか?国際弁護士・吉田大氏の解説です。

■「えー…僕の友だちです」水原被告と銀行担当者のやり取りが判明 本人確認を突破した衝撃の手口とは―

 2025年1月、アメリカ司法省は、検察が証拠として提出していた“ある音声”を公開。そこには、大谷選手になりすました水原被告が銀行に電話をかけ、送金しようとするやり取りが記録されていました。

-(銀行の担当者)
-「どちら様でしょうか?」

-(水原一平被告)
-「I'm ショウヘイ・オータニ」

-(銀行の担当者)
-「どのようなご用件でしょうか?」

- (水原被告)
-「オンラインバンキングにログインしようとしたが、『現在利用できない』と表示され、電話しました」

 大谷選手を名乗り、「オンラインバンキングにアクセスできない」と説明した水原被告。

 その後、電話番号を確認されると―。

-(銀行の担当者)
-「こちらから、認証コードを送ります。6桁のコードを取得したら、教えてもらえますか?」

-(水原被告)
-「わかりました」

 2段階認証のパスワードを受け取り、本人確認を突破。水原被告は、大谷選手の口座情報を自分の電話番号とメールアドレスに設定することで、セキュリティーをくぐり抜けたといいます。

 そして―。

-(銀行の担当者)
-「受取人の名前と、取引金額を教えてください」

-(水原被告)
-「20万ドル(約3000万円)です」

-(銀行の担当者)
-「この取引の理由を教えてください」

-(水原被告)
-「車のローンです」

 銀行の担当者から、受取人との関係を聞かれると―。

-(水原被告)
-「えー…僕の友だちです」

-(銀行の担当者)
-「わかりました。その友人と実際に会ったことはありますか?」

-(水原被告)
-「はい、何度もあります」

 水原被告が大谷選手になりすまして銀行にかけた回数は、約24回に及んだということです。

■「検察側の意見を全面的に採用した」司法取引するも量刑ガイドラインの下限超えず

 日本時間の2025年2月7日、水原一平被告に言い渡されたのは、禁錮刑4年9か月・禁錮刑後の監督指導3年・大谷翔平選手への賠償約26億円・IRS(日本でいう国税庁)への納税約1億7000万円となりました。国際弁護士・吉田大氏によると、「水原被告と検察は、司法取引で『禁錮5年11か月以下』なら控訴しないと合意している。今回の判決が確定判決となる」ということです。

Q.量刑について、どう思われましたか?
(国際弁護士・吉田大氏)
「『量刑ガイドライン』の下限が4年9か月なのですが、水原被告は司法取引をしていて、調査にも多く貢献しているという点で、通常であれば量刑が短くなることが期待できるケースでした。しかし、さらなる減刑をゼロとしている点で、非常に厳しい判決だったと思います」

Q.『量刑ガイドライン』とは、司法取引を除いた一般の量刑ということですよね?
(吉田氏)
「基本的には、今回のような犯罪の場合に、様々な状況に応じて、どのぐらいの量刑にすべきかという計算をするものです。その下限を超えて、さらに量刑を短くするのが司法取引であり、調査への協力です」

 今回、検察側が禁錮刑4年9か月を求刑していた一方、弁護側は禁錮刑1年6か月が妥当だと主張していました。吉田氏は、検察側の思惑は「今回のケースを通じて“強い検察”を印象付け、将来の犯罪を防ぎたい」、弁護側の思惑は「司法取引も調査協力もした。検察は当然、刑を軽くする“対価”を支払うべきだ」と分析しています。

Q.今回は、司法取引が作用しなかったのでしょうか?
(吉田氏)
「今回、様々なことが異例です。司法取引して調査に協力したのだから、通常であれば減刑しないと、将来的に何か犯罪が起こったときに、弁護士として『司法取引をして捜査協力すれば減刑が期待できる』と言えなくなってしまう可能性があります。ここに関しては、今後の司法にも影響があると思います」

Q.今回の判断になった理由として、水原被告の手紙の内容で、心証が良くなかった面もありますか?
(吉田氏)
「そうですね。今回、この手紙に関して裁判官は、水原被告にいろいろと質問し、『これは本当だったのか?』と厳しく責め立てる弁もあり、最後には『裁判所に提出するものは真実でなければいけない』とまで言っています。『長期にわたってギャンブル依存症であり、これまで罪を一つも犯したことのない善良な市民が、たまたま犯罪をしてしまったので、更生して再犯のリスクもないです』という“ストーリー”を、検察側は事実を積み上げて、真っ向から否定してきました。今回は、検察側の意見を全面的に採用したとみられるような判決でした」

■「犯罪での負債に関して破産は許されない」水原被告に課せられた巨額賠償、支払方法は―

 水原被告には、IRS(日本でいう国税庁)に対して虚偽の納税申告などによる納税金額・約1億7000万円、大谷選手に対して口座から不正に得た金額・約26億円という巨額賠償が課せられました。吉田氏によると、「基本的に犯罪の返還義務での破産はできない。しかし、水原被告の大谷選手への支払い義務は、判決から20年間で切れる」といいます。

Q.大谷選手への支払い義務は、20年で切れるんですか?
(吉田氏)
「基本的には、判決から20年間となっています。ただし、利息がずっとかかり続けますので、この金額もどんどん増えていきます」

 そして、巨額賠償の支払方法について吉田氏は、

①口座や資産の差し押さえ
②生活費を除いた服役中の労働で得た賃金
③“映画・テレビドラマ化”や“暴露本の出版”などでの契約料?

 との見解を示しています。

Q.自己破産はできないんですね?
(吉田氏)
「今回のような犯罪での負債に関しては、基本的には破産は許されません。それを許してしまうと、例えば窃盗のような犯罪で捕まっても自己破産して犯罪を繰り返す、というインセンティブになりかねません。それをさせないためにも、『犯罪で作った負債での自己破産は許しません』と制度化されています」

 水原被告は、2025年3月24日に収容される見込みです。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年2月6日・7日放送分を編集)

最終更新日:2025年2月16日 9:00
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